共通の仲間
「よし、ここなら誰もいねーな!」
長い階段をのぼり、屋上へと着く。暁斗は早々に話を切り出す。
「なぁ、お前新聞部だろ?これ、なにか知らねーか?」
そう言って彼がポケットから取り出したものは、あの"白い封筒"だった。
(もしかして、暁斗にも届いたの…?)
心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
―封筒を開け、取り出した便箋は "花柄" だった。
(やっぱり……)
「ねぇ…暁斗。その手紙の内容当ててみてもいい?」
(確証はない。ただのラブレターかもしれない。でも…)
「あぁ、別にいいけど…」
深呼吸をして気持ちを整える。告白するわけでもないのに何故こんなに緊張しているのだろう。でも、なにか…。
「その手紙、『明日の夕方5時、演劇部部室にて。』って書いてない…?」
明るかった彼の顔が一瞬にして曇る。それが答えだろう。
(いや、間違ってて、気持ち悪いとでも思われたかも…)
長い沈黙が続く。
「…。なんで、なんで、分かったんだよ…。」
やはり合っていた。合ってしまった。しかし、素直に喜べなかった。なぜなら、この手紙は嫌なものだと感じるから。先ほどの緊張がまだ解けない。仲間が見つかり、悩みの種からやっと解放されそうなのに。喜びよりも恐怖の気持ちが勝っている。それはきっと、彼も同じだろう。
「それ、私にも届いたの。だから分かった。白い封筒に花柄の便箋が同じだったから。」
「…そっか。なんかの悪ふざけかなって思ってたんだけどな。…嫌な予感がしたんだ。よりにもよってお前が…」
重い会話の空気を打ち破るように声が聞こえた。
「その手紙、僕にも届いたよ。」
声の主は、あの冬弥先輩だった。手紙をひらひらさせてこちらを見ている。
「僕も夏夜ちゃんに聞こうと思ってたんだよね〜。ずいぶん、探したよ。」
「冬弥先輩にもですか!?」
不気味さが増す。これはなにかの招待状なのだろうか。
「夏夜ちゃんってさ、今日演劇部に行く予定ある?」
「一応、あります。文化祭当日の宣伝を頼まれていて、その取材に…」
「じゃあ、それ僕もついて行っていい?」
まさかの返答に驚きを隠せなかった。
「いいですけど…なんでですか?」
「だって、直接聞いた方がよくない?」
そう言いながら私に笑いかける。一気に緊張が解けた気がした。思わず、私も頬が緩む。
「あ!暁斗もついてくる?」
後ろを振り返ると怪訝な顔をした暁斗がいた。
「…いや、いかねぇ。」
再び、空気が重くなる。
「じゃあ、夏夜ちゃん放課後にね。よろしく」
冬弥先輩は私たちの空気を察して、約束を結び足早に帰っていった。それに続いて帰ろうとする暁斗を止める。
「ご、ごめん。」
「なにが?」
冷たく返される。やはり、先に謝っておけばよかった。
接点がなくなっても、連絡を取ればいい。
接点がなくなっても、私から帰り道にでも話しかけたらいい。
そうだったのに。話す機会がなくなったんじゃない。私が意図的に避けたんだ。
あの噂を聞いて。






