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オオカミさんのかくれんぼ  作者: 筍とんぼ
第一章 海鈴祭準備
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共通の仲間

「よし、ここなら誰もいねーな!」


 長い階段をのぼり、屋上へと着く。暁斗は早々に話を切り出す。


「なぁ、お前新聞部だろ?これ、なにか知らねーか?」


 そう言って彼がポケットから取り出したものは、あの"白い封筒"だった。


(もしかして、暁斗にも届いたの…?)


 心臓の鼓動が早くなるのを感じる。


 ―封筒を開け、取り出した便箋は "花柄" だった。


(やっぱり……)


「ねぇ…暁斗。その手紙の内容当ててみてもいい?」


(確証はない。ただのラブレターかもしれない。でも…)


「あぁ、別にいいけど…」


 深呼吸をして気持ちを整える。告白するわけでもないのに何故こんなに緊張しているのだろう。でも、なにか…。


「その手紙、『明日の夕方5時、演劇部部室にて。』って書いてない…?」


 明るかった彼の顔が一瞬にして曇る。それが答えだろう。


(いや、間違ってて、気持ち悪いとでも思われたかも…)


 長い沈黙が続く。


「…。なんで、なんで、分かったんだよ…。」


 やはり合っていた。合ってしまった。しかし、素直に喜べなかった。なぜなら、この手紙は嫌なものだと感じるから。先ほどの緊張がまだ解けない。仲間が見つかり、悩みの種からやっと解放されそうなのに。喜びよりも恐怖の気持ちが勝っている。それはきっと、彼も同じだろう。


「それ、私にも届いたの。だから分かった。白い封筒に花柄の便箋が同じだったから。」

「…そっか。なんかの悪ふざけかなって思ってたんだけどな。…嫌な予感がしたんだ。よりにもよってお前が…」


 重い会話の空気を打ち破るように声が聞こえた。


「その手紙、僕にも届いたよ。」


 声の主は、あの冬弥先輩だった。手紙をひらひらさせてこちらを見ている。


「僕も夏夜ちゃんに聞こうと思ってたんだよね〜。ずいぶん、探したよ。」

「冬弥先輩にもですか!?」


 不気味さが増す。これはなにかの招待状なのだろうか。


「夏夜ちゃんってさ、今日演劇部に行く予定ある?」

「一応、あります。文化祭当日の宣伝を頼まれていて、その取材に…」

「じゃあ、それ僕もついて行っていい?」


 まさかの返答に驚きを隠せなかった。


「いいですけど…なんでですか?」

「だって、直接聞いた方がよくない?」


 そう言いながら私に笑いかける。一気に緊張が解けた気がした。思わず、私も頬が緩む。


「あ!暁斗もついてくる?」


 後ろを振り返ると怪訝な顔をした暁斗がいた。


「…いや、いかねぇ。」


 再び、空気が重くなる。


「じゃあ、夏夜ちゃん放課後にね。よろしく」


 冬弥先輩は私たちの空気を察して、約束を結び足早に帰っていった。それに続いて帰ろうとする暁斗を止める。


「ご、ごめん。」

「なにが?」


 冷たく返される。やはり、先に謝っておけばよかった。


 接点がなくなっても、連絡を取ればいい。

 接点がなくなっても、私から帰り道にでも話しかけたらいい。


 そうだったのに。話す機会がなくなったんじゃない。私が意図的に避けたんだ。


 あの噂を聞いて。

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