友達
「演劇部の宣伝…?」
驚いた。宇佐美さんに演劇部の友達がいたなんて。
彼女を嫌っている人もいるが、好いている人もいる。特に彼女の友達はキラキラした人、いわゆる「陽キャ」が多い。髪色が明るかったり、しゃがむと見えちゃいそうなぐらいスカートが短かったりした人たちばかりだ。しかし、演劇部にはそのように目立つ人は見たことも聞いたこともなかった。
「演劇部に知り合いがいるんですか?」
「あ〜…知り合いっていうか、友達?アタシの同中の子でさ、いつも三つ編みおさげの子知らない?」
同じ中学校の子。なるほど。確かに高校生からできた友達とは限らない。宇佐美さんも「かわいい」と人から噂されるようになったのも、中学生時代にはなく、「頑張って高校デビューをしたからだ」と言っていた。
ふむ。しかし、『三つ編みおさげ』の子か。今どき、そのような髪型をしていれば目立つはずなのだけれど。
「まぁ、知らなくてもしょうがないか。あの子、隣のクラスだし」
顎に手を当て眉をひそめる私をみて、彼女は言った。
「隣のクラスだったんですか!てっきり、同じクラスだと…」
「ごめん、ごめん。分かりにくかったね。隣のクラスのさ、小田まいって子なんだけど」
(あ…!あの子か!)
なんだか謎解きをしているみたいだ。
小田まい。彼女は入学式中、ずっと下を向いていた。彼女の席は私よりも前で、背中が見えていた。まるで、なにかに怯えているように下を向いていた。
しかし、今では皆と同じように前を向いている。そのため、初めは目にとまっていた彼女も今ではまったく気にならなくなった。忘れてた。だから、すぐに分からなかったのだ。
一人で納得する私をみて、宇佐美さんは話を進めた。
「まいがね、先輩のためにって。どう?引き受けてくれる?」
そう言う彼女はどこか寂しそうな、暗い表情をしていた。
「もちろん!大丈夫ですよ」
「ありがと!きっとまいも喜ぶよ!じゃあ、まいに伝えてくるね。日程とかはアタシがあとでメールするから!」
さっきの表情とは反対に笑顔を浮かべながら足早に去って言った。なぜか、私も嬉しくなり暖かい気持ちのまま、帰路についた。