表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オオカミさんのかくれんぼ  作者: 筍とんぼ
第一章 海鈴祭準備
2/20

校内新聞

 今回書いた記事の内容は、近々行われる「文化祭」と、私が小耳に挟んだ「学校の不思議」についてだった。大々的に書いたのは「文化祭」についてで、「学校の不思議」については詳細な情報を集めることができず、端に小さく載っていた。


 「文化祭」についての記事はなんのかわりもない、面白みがない記事になってしまったと感じている。「海鈴祭」という文化祭の各クラス、部活、委員会の準備状況や、すでに決まっているイベントの告知などといった内容だ。新聞というよりもチラシのような仕上がりになってしまったのだ。


 むしろ、私が皆に注目して欲しかった記事は小さく載っている「学校の不思議」についての方だ。実は以前にも載せたことがあるカテゴリーだ。その記事をきっかけに私の新聞を読んでくれる人が増えたと言っても過言ではないほど人気な記事になったものだ。


 当時、校内にはとある噂が流れていた。


『夕暮れの音楽室からピアノのキレイな音色が聴こえてくる』


と言う噂だ。普通なら誰かが弾いていると思うだろう。私も思った。しかし、吹奏楽部に聞いてみると「私たちが行く前には聴こえるのに、音楽室の前に着くと急に音が止むの。中を覗いてみても誰もいないし。」と言うのだ。皆は幽霊の仕業だと噂した。


 しかし、張り込み調査をしてみたところピアノを弾くものの正体に私は拍子抜けした。なんと正体は、学校1の人気者「柊木冬弥(ヒイラギトウヤ)」先輩だったのだ。


 冬弥先輩が人気な理由はなんと言ってもその容姿だ。いわゆる雰囲気イケメンで、彼の持つ黒髪と少し青みがかった瞳は人々を魅力した。頭も良く、誰にでも優しい性格で男女ともに人気がある。生徒だけにとどまらず先生方からの支持も熱く、彼の人気がとどまることはなかった。


 そんな彼がなぜコソコソしてまでピアノを弾いていたのか不思議に感じた私は、その場の勢いで理由を聞いた。聞いてしまった。今思えば、かなり失礼なことをしたと後悔している。彼も物陰からいきなり出てきた私に驚きを隠せていなかった。


 理由はたいしたものではなかった。「見られたら恥ずかしい」ただそれだけの理由だった。彼自身、校内での人気に気づいていて、自分が弾いていると知られたら、皆が聴きに来てしまうだろうと考えたと言う。3年生で今年本校を去ってしまう彼を惜しむ声は多く、最後だからという皆の押しに負け、ピアノを弾かされている姿が目に浮かぶ。まさに彼の言う通りで、新聞に載せた翌日から放課後の音楽室を訪れる人が増加したのだった。


 しかし、今回の噂は前回と違い、一風変わったものだった。


『満月が現れる日の放課後、5時のチャイムとカラスの声が重なったとき、人形に向かって願うとその願いは必ず叶う』


と言うなんとも嘘くさい噂だった。かなり複雑な条件なこの噂は確かめることができず、記事はかなり短くなってしまった。何度も調査を試みたが、どれも失敗に終わったため、載せるつもりは毛頭なかった。ただ調査の際、一緒に行動してくれた冬弥先輩に「新聞にしたら面白いし、情報も集まるんじゃない?」と勧められたため今回記事にしたのだ。


 知ってしまった以上この噂の真偽を知りたいと感じたと同時に、私も随分新聞部に染まってしまったものだとも感じた。自分の書いた新聞を眺めながら物思いにふけっていると、突然後ろから声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ