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誤字報告下さり、本当に、本当にありがとうございます。
変換ミス、入力ミスの多い私に、呆れることなく報告を下さる皆様には心から感謝しかございません。
『近づく』は誤表記とも言えないので、そのままにさせて頂こうと思います……多分これからもその表記をしてしまう事が出てきてしまうと思いますので……いえ、私がもっと変換に注意を払えば良いだけなのですが……情けない事ですみません<(_ _)>
馬を2頭借りて、一頭にはエリューシアが単身で乗り、もう一頭の方に手綱を握るクリストファと、その後ろにカーティスが乗ると言う形で落ち着いた。
ただ、カーティスは怖い怖いと呟いて、震えながらクリストファにしがみついている。
馬に乗るのが初めてであれば、思った以上に高く感じるのも別におかしな事ではないから、そのせいだろうか。
あまりに怖がるので駆けて行くことが出来ず、早足程度の速度しか出せない。まぁ、それならそれで、時間はかかってしまうが風景でも楽しみながら行けば良いだけだ。ただ、カーティスには風景を楽しむ余裕もないだろう事は残念と言わざるを得ない。
目的の宿が見えてきた。
借り上げ邸居残り組となってくれた騎士が、丁度馬の世話をしているタイミングに到着したようで、彼に向って馬上から声をかける。
「モンテール!」
声にすぐさま反応した騎士が駆け寄ってくる。
「エリューシアお嬢様!?」
流石に変装した姿も見た事があるので、直ぐに気づき、不審者扱いはされずに済んだ。
「どうなさったのです? まだ学院が終わる時間ではありませんよね? それに……」
モンテールと呼ばれた騎士が、もう一頭の方に顔を向けて近づく。
「貴方様は……失礼しました」
モンテールは素早く周りを警戒するように視線を走らせてから、まずクリストファの後ろで、半分魂を飛ばしたかのように放心しているカーティスを受け取った。が、クリストファにガチガチになってしがみ付いたまま放心しているので、その強張った身体を解いて引き離すのに苦労しているようだ。
当のクリストファも苦笑いを浮かべている。
冷静に考えれば、公爵家令息であるクリストファにしがみつく平民など、斬り捨てられてもおかしくはないのだが、怖がるカーティスを馬に乗せたのはクリストファなので問題なしだ。
ぐったりとするカーティスを騎士のモンテールに預け、クリストファが軽やかに馬から降りる。
子供の体格を考え、その場で叶う限り小柄な馬を貸してもらったのだが、それでもかなり大きいのに、それを物ともしないクリストファはかなりデキルお子様のようだ。
「クリストファ様、ありがとうございました」
クリストファに頭を下げながらそう言えば、彼から返ってきたのは不思議そうな声音だ。
「何が? 僕がここまで来た事だったら、僕がそうしたかったからで、エリューシア嬢には責任も何もないよ」
「ですが…」
「それに彼は途中から半ば意識を飛ばしてしまっていたしね。僕としては君と2人で居られて光栄だったから、気にしないで」
多分間違っていないと思うのだが……クリストファから好意を向けられていると思う。これが間違いだったなら、かなり恥ずかしいし、自意識過剰な痛い子になってしまうが。
ただ入学式典当日からそうだった事が不思議で仕方ない。
何しろエリューシアは入学式典まで、ラステリノーアの家族とネイハルト辺境伯一家くらいしか会った事はないので、好意を向けられる切っ掛けが何もないのだ。
だからまず感じたのは困惑。そして薄気味悪さ。
勿論、面倒だな、厄介だなと彼自身を少々疎ましく感じていたのも事実だが、そう言った不気味さから、何より警戒してしまっていたのだ。
エリューシアに対して持つ感情というのは、表向きは取り繕ったとしても、概ねフラネアのような感情を何処かに持ってしまうのが普通だろうと思う。
いくら入学に年齢は関係ない、家は関係ないと言ったところで、それで感情が制御できるものではない。特に子供であれば尚更だ。
年下の癖に。
女の癖に。
公爵家だから。
精霊の加護持ちだから。
それでいて誰より成績も良いのだから、疎んじられても仕方ないし、そう言った目を向けられる事も予想はしていた。
だがそれを踏まえて尚アイシアと同時入学を果たしたのは、ここまでシナリオに抗い変えてきたとはいえ、どこに強制力があるかわからないからだ。
アイシアに悪意が向けられたとして、近くに居なければエリューシアには何もできなくなってしまう。それだけは何としても避けたかった。
だから向けられる好意にも警戒してしまったのは仕方ないと、開き直る事は許してほしい。
原作ヒドインことシモーヌは明るく感情豊かで正直で……なんて描かれ方をしていたが、個人的感想も交えて語る事を許されるなら、ぶっちゃけ強かで計算高い。もしあれらを無意識でやっていたというのなら、ガチで関わりたくない危険人物筆頭だ。
そんな要回避人物なのだが、何故か信奉者が多い。
『ゲームもしくは関連作品のファン』と言う意味ではなく、それ等の中でヒロインを信奉するキャラクターが多いと言う意味だ。
攻略対象と自身以外には、笑って不幸を撒き散らすだけのはた迷惑な存在にも拘らず、彼女を擁護するキャラクターはかなり多く、だからこそアイシア含めまともなキャラたちが『悪役』のレッテルを張られる事になった。
ヒロインなのだから当然と言われればその通りで、納得するしかないが……。
だから唐突に向けられた好意に疑念を持ち、警戒してしまった。
――もしかするとクリストファは何処かでシモーヌと繋がっているかもしれない。
――もしかすると彼もシモーヌの信奉者かもしれない。
だがここまで悪意に転ずる事はなかったし、何より既に警戒は緩んできていた。
甘いと言われるだろうが、四六時中警戒し続けるのは、エリューシアには難しく、酷く疲れる事だったのだ。
今も完全に気が緩んでいたのだろう、だからつい口から出てしまった。
「クリストファ様は……何故…?」
「何故? 何故って…何が?」
眉根を寄せ、見ようによっては苦しげにも見えるエリューシアの表情に、クリストファの方が痛そうな顔になって覗き込んできた。
「何故そこまで私…達……ぃぇ、私に…」
いずれアイシアの…家族の安全を確信できれば家を出て行く身なのだから、そんな事を聞いても仕方ないと頭では分かっているし、聞くつもりもなかったのに、やはり本気で気が緩んでいたのだろう。
ずっと地面に視線を落としたままのエリューシアに、クリストファがふっと笑った気配が伝わる。
「そんなの決まってる。僕は「エリューシアお嬢様!!??」…」
クリストファの言葉を遮るように女性の声が割り込んでくる。そしてその声の持ち主、メイドのマニシアが駆け寄ってきた。
すぐにエリューシアの傍に膝をつき、あちこちエリューシアの身体を確認する。
「ここまで馬でなんて……無茶をなさって…お怪我はございませんか? どこか痛むところは?」
「だ、大丈夫…大丈夫よ」
マニシアがクリストファの方へ向き直り頭を深く下げる。
「グラストン公爵御令息様、お許しがないにも拘らず口を開く無礼をお許しください。
ここまでお嬢様をお送り下さり、本当にありがとうございます。
直ぐ主には報告いたします。御礼も後程させて頂きますので」
伝えたい言葉を遮られはしたが、メイドに悪気がないのはわかっているので、クリストファも微笑を浮かべて対応する。
「必要ないよ。無事にエリューシア嬢を送り届けることが出来て、僕はそれで満足だ。
だから礼など不要。
報告は兎も角、礼の方は御容赦願いたい」
「その旨も確かに伝えさせていただきます」
「あぁ、そうしてくれればありがたい。それでは僕はここで失礼するよ」
そこへ半ば気絶していたカーティスを、部屋へ寝かせて戻ってきたモンテールが声をかけてきた。
「馬はこちらで返却しておきます。
グラストン様、馬車でお送りしますので、少しお待ちいただけますか?」
「僕は寮住まいだから不要だ。すぐそこだもの」
「では、そちらまでお送りさせて頂きますので……ぁ、来た来た」
モンテールの言葉に、その視線の先を追えば、借り上げ邸居残り組の騎士の一人であるカルダンに先導されて、馬車がやって来るのが見える。
馬車が止まり、中から出てきたのは目を吊り上げたオルガとサネーラだ。
2人はまずクリストファの方へ足を向けて一礼する。
「グラストン様、失礼致します」
そういって無表情にエリューシアを両脇からガッツリ拘束してきた。
「……ぇ」
そのままエリューシアが宿の方へと連行されて行くのを、目を丸くしたクリストファと、うんうんと頷いている騎士2人で見送った。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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誤字報告も感謝しかありません。
よろしければ短編版等も……もう誤字脱字が酷くて、本当に申し訳ございません。報告本当にありがとうございます。それ以外にも見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




