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【完結済】悪役令嬢の妹様【連載版】  作者:
1章 終わって始まる異世界転生
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3



 早いものであの衝撃の日から既に半年が経過していた。


 赤子としての世話を、悶絶しながら受ける日々を現在進行形で耐えているが、今日にいたるまで真珠深ことエリューシアも何もしなかったわけではない。


 一瞬【お帰り】と聞いた気がする『天の声』は再び聴く事は叶わず、サポートを何も受けられずにいる(異世界転生には神様のサポートが付き物だという認識があったのだ…というか、真珠深が読んだり見たりした作品は概ねそうだったのだ。偶々かもしれないが…)が、ベビーベッドに横たえられた状態でも出来ることはあった。


 記憶と情報の整理。

 そして、自分磨きだ。


 記憶と情報の整理は言うに及ばず、現在の自身と家族の状況把握だ。


 まずエリューシアと家族の状況だが、あの寒い日アーネストと呼ばれた父親らしき人物と、その妻、つまり母親の声音が震えていたのは、どうやらエリューシアの瞳が普通ではなかったからのようだ。

 そうは言ってもまだベッドから起き上がる事も出来ない身では、鏡を見るなど不可能で、どう普通じゃないのか自分では確認できていない。

 ぼんやりしていた視界は、今ではすっきりくっきりしているが、ほぼ天井と周囲が見回せるだけで、ミルクの時や沐浴の時に抱き上げられれば、見える範囲が広がるだけだ。


 それでもわかる事はある。

 部屋はこんな赤子1人に与えて良いのかと首を捻りたくなるほど広い。そして豪奢だ。悪趣味ではなく室内全体が上品に整えられているのだが、ベビーベッド周りだけ妙に可愛らしく、部屋全体としてはどこかちぐはぐで微妙な違和感は感じる。

 まぁ家族に愛されている証拠と受け取っているので、エリューシアとして嫌な訳ではない。

 そして使用人が結構いる。

 それほど父母に会える訳ではないのだが、使用人は入れ代わり立ち代わりやって来る。

 おかげで言葉浴は存分にすることが出来た。


 そして特筆すべきは姉にあたる『アイシア嬢』!

 光の加減によっては深海を思わせるほど深い深青の髪と、髪と同じく深青色だが、吸い込まれそうな程澄んだ瞳が見惚れるほどで、当然顔のパーツも完璧と言う美少女ならぬ美幼女である。

 その美幼女アイシア姉様は、頻繁にエリューシアの元を訪れてくれる。

 以前は舌足らずな話し方だったが、今ではそれもなりを潜め、かなりしっかりしている。

 ついでに言うなら、ついでと言うのも申し訳ないのだが、両親も揃って美形で、日々眼福を味わっている。


 最初の頃は、そんな眼福を堪能しつつ楽しんでいたのだが、それはある一つの事実によって、一旦打ち砕かれた。まぁあくまで『一旦』というだけだったが。


 異世界転生をなした星守 真珠深の今世の名は『エリューシア』。

 暫く慣れなかったが、それもそのうち馴染んだ。しかし、ある時衝撃の事実に遭遇してしまう。

 エリューシアのフルネームが『エリューシア・フォン・ラステリノーア』と知ってしまったのだ。

 つまりアイシアお姉様の名は――


 『アイシア・フォン・ラステリノーア』


 そう、あろうことか『マジカルナイト・ミラクルドリーム』の悪役令嬢、その人そのものの名前である。

 しかも名だけではない。先だって言ったかもしれないが、アイシアお姉様の髪色は深海を思わせる深い青、瞳も同色だ。

 母親はゲーム内では既に故人となっており出てこないが、父親は『アーネスト・フォン・ラステリノーア』で、リッテルセン王国の公爵家の一つだ。


(フ……フハハ……フハハハハハッ!!

 何てこったい! 最推しアイシア様の妹に生まれただと!?

 こんな幸運あっていいのか!? いや待て、アイシア様の家は最終的に没落の悲劇エンドじゃなかったっけ……ふむ…)


 エリューシアはベッドに転がって天井を睨んだまま腕組み……は出来なかったので、黙って天井を睨みつけたまま、再び思考の海に潜行した。


 良かったのか悪かったのかわからないが、『マジカルナイト・ミラクルドリーム』の世界に転生したと考えて良いだろう。

 万が一違ったとしても、そうだと想定し、最低最悪の事態を回避するようにしていれば、きっと問題ないはずだ。

 そしてゲーム内では、母親は既に故人。父親は幼少の頃から仕事漬けで、ほぼ不在だったはず。

 不在なだけならまだしも、娘であるアイシアの事を愛することなく、道具のように使い捨てた毒父だった。


 現時点でどうかと言うと、同一人物とはどうしても思えないと言うのが、正直な感想だ。

 母親の名はセシリアと言い、アイシアと同じ深青の髪と瞳を持っていて、父親であるアーネストは、そのセシリア夫人を溺愛と言って良い程愛している。

 顔の作りも可愛い系の美人で、後のアイシアを彷彿とさせる程そっくりだ。


(ふむ……もしかすると、母親の死が切っ掛けだったりする?)


 良く思い出せ自分……。

 こうなるとゲーム本編の情報だけでは、全く足りないのではないかと思える。

 ファンブックや公式設定資料本、果てはゲームイベントの開発者トークまでも必死に思い出し、そういえばと思い出したことがあった。


 実の所、今の自分の立場『アイシア公爵令嬢の妹』というキャラに心当たりがなかった。

 神様の気まぐれか、はたまた真珠深の境遇に同情してくれた存在からのご褒美か、くらいに考えていたのだが、スピンオフ作品の小説内にあった、アイシアのセリフを思い出したのだ。



『お父様は変わってしまわれたわ。もしお母様が生きていらっしゃったら違ったのかしら……いいえ、あの子が…妹が生きていてくれれば…』



 確かそんなセリフだった。

 そう、作品内のアイシアにも『妹』はいたのだ。だが、そうなると…エリューシアは、そう遠くなく死ぬ運命にあるのではないか?

 母親の死と妹の死に関連があるのかはわからないが、少なくとも父親の豹変劇には関係しているだろう。

 なら、それを回避できればあんな冷たい家族にならずに……アイシアも家族から愛されたままでいられるのではないか?


 さぁ思い出せ! 真珠深…いや、エリューシアの本日の任務だ。






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期かつ、まったり投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!

他作もございますので、お暇つぶしにでも!!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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