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【完結済】悪役令嬢の妹様【連載版】  作者:
5章 不公平の傍らで

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6



 どうやらメルリナが言っていた地方男爵令嬢は、トラブルメーカーの素養があるらしい。


 それはそれとして、エリューシアからすると、微妙な違和感があった。


 『不特定多数の異性から支持される』というのは、ゲーム内のシモーヌであれば、そんなにおかしく感じない。

 何しろゲーム内にあったキャラ説明文でも…


 『明るく、表情がころころ変わる天真爛漫さを持つ愛され天然キャラ』


 とあったくらいで、攻略キャラだけでなくクラス内の男子生徒は、概ねシモーヌの味方として描かれていた。

 その分、女子生徒からは目の仇のように描かれていたが……。

 そこまでは良い…いや、良くはないが、既存設定なのだからどうしようもない。

 しかし、徐々にそうなって行くなら百歩…いや、一足飛びに万歩譲っても良いが、今日初顔合わせで、しかもまだ数時間でそう言った事は可能なのだろうか?




 過日に見た少女の姿を思い返す。

 あの少女がたった数時間で、異性の心を鷲掴みになんて事は可能なのだろうか…勿論あれから随分と年数も経っているし、色々と変わっているだろうとは思うが……。


 見かけた姿はゲーム内とかけ離れていたのに『シモーヌ』にしか見えなかった。多分だが精霊達が騒いでいたし、彼らの力が何らかの形で影響して見る事が出来ただけかもしれない。

 精霊の力の影響となれば尚更信憑性は高まる。だからこそ今もその判断は間違っていなかったと思うのだが、実の所あんな陰鬱な表情をするような少女と、ゲーム内のシモーヌの間に『=』(イコール、等号と読んでもOK!)を書き入れる事には躊躇いがある。

 つまり、あの少女と今聞いた話の地方男爵令嬢の間にも『=』は躊躇いがあるという事だ。




 前世、掲示板等でもアンチヒロイン勢、アンチ攻略対象勢が、散々書き殴っていたから『躊躇う』程度で済んではいるのだ。


 『明るいって言うけど、アレの場合、考えなしのバカって事じゃん』

 『愛されキャラじゃなく、愛され天然キャラって書かれてる所から察しろ』

 『そこ書いたのって、小話コーナーのライターじゃない?』

 『最新小話読んだけど、ウケた』

 『ヒロインはヒロインじゃなかった!』

 『悪役令嬢と書いてヒロインと読むのだよ、覚えとけ。ちなみにヒロインと書いて阿婆擦れと読むのだよ、これも試験に出るからな』

 『つーか、あれ、阿婆擦れどころかサイコパスじゃね?』

 『サイコパスに失礼』


 今思い返しても同意しか出てこない。

 何にせよ『愛され』とは言いつつも『天然』とある様に、突っ込みどころは満載だった。

 と、話はズレたが、詰まる所、話題に上った地方男爵令嬢フィータ・モバロを判断するには早いという事だ。

 今は人目もあるので難しいが、後で『お使い魔具』を、そのフィータとやらにつける事にする。



 10歳になったエリューシアは、新たな技を手に入れる事に成功していた。

 その1つが『お使い魔具』だ。

 学院に通うようになり、日々の勉強及び鍛錬時間は削られたが、その分教師から教えて貰ったり出来るようになった。それは錬金や魔具製作についても同様だ。

 過日に資料室でサキュールから貰った助言に従い、選択授業は魔具製作を選んだエリューシアだったが、これが大正解だった。


 魔具製作を担当する教師陣がなかなかに豪華で、魔力操作他魔法に関する部分は、半ばオタクの様なサキュールが担当。錬金術部分と魔具製作部分については『塔』所属の魔法士が、態々学院に赴いて講義してくれるのだ。


 ちなみに『塔』というのは、この国でトップクラスの魔法士が所属する研究機関で、王城魔法士、別名宮廷魔法士が所属する軍部とは一線を画する独立機関だ。正式名称はあったはずだが、最早誰も覚えておらず『塔』が正式名称のようになっている。

 そんな一線級の教師達による講義はとても濃密で、ただでさえ桁外れだったエリューシアの知識も技術他諸々も更に向上した。


 おかげで現在は、小型通信魔具の試作機開発にも成功したのだが、まだ克服出来ない欠点が多く実用化には至っていない。

 克服できない欠点……それは発生してしまうタイムラグとノイズ。

 他にも細々とした問題はあるが、大きな問題はその2点だ。

 この欠点のうち、ノイズ対策の為の一案として生み出されたのが『使い魔のように連絡というお使いが出来る魔具』こと『お使い魔具』だ。

 声を鮮明に届けると言う部分のみを考えて作った物でしかなく、しかも一案なので玩具程度の物だったのだが、声を届けるだけではなく拾って来る事も可能な事に気付いたのだ。

 そんな機能を目指して作った物ではなかっただけに、最初は困惑してしまったが、これを使えば所謂盗聴が可能だ。

 だが魔具である以上実体があるので、破壊されれば戻って来る事はないし、魔石の魔力が切れれば当然動作しない。

 そんな数々の短所はあるが、便利であるのは確かだ。


 前世の記憶を持つ身としては罪悪感がない訳ではない。盗聴なんて犯罪だし、人の秘密を暴いて悦に入るような趣味も当然ない。

 だが、調査にはうってつけなので、間違っても悪用はしないと誓って使う事にする。



 そんな事を考えているとオルガの声で、エリューシアの意識が現実に引き戻された。


「それで、何故そんなに疲れ切っているのです?」

「よくぞ聞いてくれましたッ! いやぁ、ほんと、涙なしには語れないんだよ。

 俺らもさ、入ってすぐそれだったから、こりゃ無理だねって出ようとしたんだよ。そうしたら件の女子生徒なんだろうな…そいつが俺らに気付いてさ、寄ってきたんだよ」

「多人数が言い合っている場で、その方は皆様に近寄る事が出来たのですか?」


 アイシアが不思議そうに訊ねれば、バナン達に視線がアイシアに向かう。


「そう!! 不思議だよな!? 俺らも見てなかったら『え~?』って信じられなかったと思うぜ、な?」


 バナンがソキリスとポクルに同意を得ようと振り返れば、2人が揃って頷いき、補足するかのようにポクルが話し出した。


「その女子生徒の行動を邪魔しないようにか、ごちゃっと集まってた男子生徒達がこう、ザザァっと割れるみたいに通路を確保したんです」


 ―――モーゼの海割りかな?


「そうそう、もう一糸乱れぬって感じでさ、怖いのなんのって……で、そいつってばソキリス目当てだったみたいでさ、男子生徒らの作った通路を…なんかぎこちない歩き方だったな…いや、そんな事はどうでも良くて、真っすぐ俺ら…じゃねーな、ソキリスの前に来てさぁ『ソキリス様ですね、良かったらお友達になってくれませんか?』って…唐突すぎて怖くね?」


 流石に自分の名が出たので、今度はソキリスが話し出す。


「名を名乗った覚えもないし、恐怖しか感じなかったよ」


 メルリナからの話では、そんなにおかしな令嬢でもないのかもと思い直したのだが、これは『=』を書き込める可能性が出てきただろうか…。

 勿論まだ決めつけたりはしないし、お使い魔具を飛ばしたりして、情報収集はするつもりだが……。



 ゲームヒロイン シモーヌ。

 過日に見かけた、明るいオレンジ色の瞳を持つ陰鬱な表情の少女。

 新たに現れた地方男爵令嬢 フィータ・モバロ。


 彼女たちがどう言った線で繋がるのか、それとも繋がらないのか…まだエリューシアにはわからない。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期且つ、まったり投稿になりますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、感想等々、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価、いいねや感想等、頂けましたら幸いです。とっても励みになります!

誤字報告も感謝しかありません。


よろしければ短編版等も……もう誤字脱字が酷くて、本当に申し訳ございません。報告本当にありがとうございます。それ以外にも見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>


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