遠因
本日より連載版『悪役令嬢の妹様』投下開始します。
この冒頭部分は短編の方では削除した部分です。
読まなくても支障はございませんので、もし気分が悪くなりそうな方等は飛ばしてください。
不定期且つ、まったり更新となりますが、皆様に少しでも楽しんでもらえれば、とても嬉しいです。
残酷な表現を含む事もありますので、苦手な方はどうかご注意ください。
すべての音が何処かに吸い取られているのではないかと、そんな錯覚に陥りそうになる程静かな森の奥。
魔物や獣が支配する深夜と言う時間帯にも拘らず、耳に届くのは二人分の足音だけだ。それさえも下草のせいかかなり小さい。
一人が前に立ち、それに案内されるようにもう一人が後ろに続いている。
前に立った者が翳すランタンの灯りは、とても頼りないものだ。
そうして辿り着いたのは、鬱蒼と茂る草木の奥にある崖に、ぽっかりと開いた穴。
ここまで来ると下草もない為、足音が響いて耳につく。
暫く進めば朽ちた鉄格子があった。
そこには魔紋が刻まれていたが、柵そのものの老朽化による崩落で、紋が崩れている。恐らくは隠蔽か何かの魔紋だったのだろう。
だが、それが崩れた事で見つけることが出来た。
最早残骸となった鉄格子をそっと押し開けば、ギィィと重く嫌な音がする。
澱んだ空気は過去からの怨嗟のようにも思えて、どことなく鉄臭く感じてしまうのは怯えのせいだろうか。
いや、実際に格子は鉄製なのだし、その臭気を感じるのもおかしな話ではない。
そのまま先程まで後ろについていた方が先頭に立って進んでいくと、そこそこ大きさのある場所に出た。
洞窟の中とはいえ、鉄格子もあった事から推察できるように、人の手が加わった場所だと言うのに、ぽっかりと開いたそこには何もない。
先頭に立っていた方が、後ろの人物からランタンを乱暴に奪い掲げて周囲を見回す。
かなり広い場所なのか、ランタンの光は狭い範囲を照らすのが精一杯で、奥の方までは届かない。
諦めて歩を進める。
やはり、思った以上に広い場所だ。しかも恐らくは人の手で掘られた場所だ。
通ってきた朽ちた鉄格子がかなり後方になったと言うのに、鉄臭い、だがどこか胸の悪くなるような甘ったるさを含んだその臭気に、ランタンを奪われた側の人物は無意識に震え足を止めてしまい、そこから一歩も動くことが出来なくなった。
ランタンを奪った方は、後ろの人物の様子に気付いた様子はなく、キョロキョロと見回しては、ランタンを上げたり下げたりしている。
「!」
何か見つけたのか、ランタンを持った人物が駆け出すが、足が止まったほうは動き出す事はなかった。
「見つけた、見つけたぞ!」
これ以上ない程の喜びに溢れた男の声が、広い洞窟内に反響する。
その声を聞いた、後ろで止まっていた人物が、脱力したように地面にへたり込んだ。疲労からへたり込んだのではない。
見つけたと叫ぶ男の声に内包されるモノに、怯え、そして後悔しているかのように身を震わせ、じりじりと後退していた。
―――驚喜、狂喜、狂気、狂鬼、凶器……………
アァ、ワタシハ、ナニヲ、ミツケテシマッタノダロウ
アァ、ワタシハ、ダンナサマヲ……………
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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