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Hero in the Dark ~悪魔は懐に~

これはハイド本編より過去に起きた物語の記録である…


誰もが内に悪魔を抱えている…


それがたとえ最強の称号を持つ者でも。



かつて殺し屋として生きたヘーロス・ベルモンテ。


彼の過去には一体何が…?


闇に生きた者がストレンジャーを率いる者として生きることを決めた軌跡が明らかとなる。


一日で数件の依頼…


滅多にあることじゃない。



だが、俺は“あの頃”から決心したはずだ。



父に言われた約束を…




家族を守ると。




そのためなら自分のことはどうでもよかった。






24年前



「あなた、今回はいつ帰ってくるの?」


「さぁな、あっちの連中が諦めるか全員死んでくれなきゃ帰るのは遅くなりそうだ。」


「もう!また、そんな言い方して!…あの子たちが真似したらどうするの!」



母は厳しい人だった。


だが、とても優しくて“俺たち”のことを想いやってくれる素敵な人だ。



「問題ねぇさ、なにせもうヘーロスは俺に似てきてる…!…この間も街でイキるガキども三人をまとめてボコしたんだとよ。」


「あなた!!」



父は軍人だった。


短気で粗暴な性格だが、家族を守るためならどんなことでも顧みない…


そんな人だった。



「父さん…」



俺は軍の仕事ため出掛けようとする父に声をかける。



「ヘーロス、俺が帰ってくるまで母さんを、エリックを頼んだぞ。」



そう言って父は笑顔で俺に手を振った。






それが最期の父と交わした会話になると知らずに。






「はい…そうですか……えぇ…はい…ありがとうございます。」



母が玄関口で男と話をしている。


俺はその男の服装が父と同じであることから軍人であること、そしてその軍人がここに来たことで理解した。



父は戦死した。



父の同僚である軍人は父が生前戦闘に用いていたナイフ、軍服の切れ端を母に渡していた。



軍人が帰った後、母は泣いていた。



必死に俺らに声が漏れないよう息を殺して…


父の軍服の切れ端を握りしめながら。


それを俺は部屋の僅かに開いた扉から覗いていた。



「兄さん!遊んでよー!」


「…ん…あぁ…ちょっと待ってなエリック。」



事情を知らないこいつは弟のエリックだ。


俺はエリックが母のもとに行かないよう、そっと僅かに開いた扉を閉め、エリックの相手をした。



その日から、俺は父の約束を果たすべく、自分にできることを考えた。



父と同様にケンカの強かった俺は、この力を…


家族を守れるために使うと決めた。



「エリック。」


「なにー?」


「これからは母さんとお前は俺が守る…約束だ。」




そう…




殺し屋ヘーロス・ベルモンテが誕生した。







「おい、ヘーロス。お前またやりとげたみてぇだな!」


「こっちに近づくな、ディアボロ。」



俺が殺し屋となり、多くの依頼をこなして9年の月日が経つ頃。


すでに俺の名は同業の者だけでなく、誰もが知る人物として知られていた。


同じく殺し屋であるディアボロは俺の実力に惚れ、俺とよく組むことを持ち掛けていた。



「お前がなんと言おうと組むつもりはない、ディアボロ。」


「ったく…んだよ…そんなに殺しの腕がありゃ金も相当貯まってんだろ~?…なぁ、俺と組みゃさらに一儲けできるぜ?」


「興味ねぇ。」



俺は金を受け取り、足早にその場を立ち去る。



「ただいま。」


「ヘーロス!また仕事?もうこれ以上その仕事はやめて!!」



帰宅した俺のブリーフケースを見た母が俺に怒鳴り散らかす。



「うるせぇよ、俺は母さんとエリックを連れてこの国を出んだよ。」



俺には目的があった。



いつまでもこの仕事をすることはできない。


それは俺の身ではなく、家族の身に危険が及ぶ可能性があるからだ。



俺の使命は…


俺の果たすべき約束は…



家族を守ること。



そのために金を集めてとっととこの国から出る。



それが俺の目的だ。



「ヘーロス、よく聞いて。私たちベルモンテの血は特別なの。

これ以上戦いに身を置かないで。あなたまで父さんみたいになってしまうわ。」



母は恐れていた。



父さんのように俺を失うことを。



そして…



俺ら一族の本能に。






母曰く、ベルモンテ家は古くからこの世界に存在していた一族…


ベルモンテ家は生まれながら常人離れした身体能力を保持する者が多く存在していた。


それ故にこれまでにもベルモンテの名を持つ者は戦いに身を投じ、命を散らしてきた。


母はそんな自分の一族の本能から逃げるべく、抗うべく、争いを避けるようになった。




そして、俺が殺し屋となり始めてこの手を血に染めた時、



俺の目を見た母は恐怖した。



父のナイフに映った自分の瞳はこれまでとは異なり、赤く染まっていた。




それは俺の中の本能が目を覚ましたことを意味していた。




それでも俺は父が残した言葉を忘れられない…


家族を守ることができなら俺は何にでもやるつもりだ。



「兄~さんっ!」



母との口論を終えた俺はブリーフケースを部屋の隅に置くと、背後からエリックが俺の肩に手を置く。



「はい~引っかかった~!」



振り向いた俺の頬に指を突き、満足げに笑うエリック。



「何がやりてぇんだ、お前は。」


「疲れてる兄さんを元気づけようとしただけだよ~」


「はぁ…逆に疲れただけだ、あっちに行ってろ。」



俺はいつものエリックの絡みに呆れた反応をする。



12になった弟は俺とは違い、学業に励んでいる。


弟だけには幸せな人生、最低でも俺とは違う平凡な生き方をしてほしいと思った。


幸い、金ならいくらでもある。


エリックを幸せにするためには充分なほどに。



母も常に俺のとる行動には反対だったが、この件だけは俺の意見に賛成だった。



「エリック、明日は大事な行事があるでしょ?母さんも明日は行くから早く支度して今日は寝なさい。」


「オッケ~、んじゃまた明日ねっ、兄~さん…!」


「早く寝ろ、バカ。」



エリックが寝室に入ると、母が俺にそっと話しかけてきた。



「ヘーロス、ちょっといい?」


「なんだよ。」


「エリック、あの子は優しい子だけど…その…」



母は中々次の言葉を言い出せずにいた。


なんとなく、言いたいことは理解できた。


だが、



「…いいから話せよ。」



俺は母に威圧をかけた。



「時々執着心が強い時があるの。

…ヘーロスの仕事にも誇りを持ち始めているし…」



エリックの執着心が強いことは俺も昔からよく理解していた。


だが、母が危惧しているのはエリックの執着心だけのことではなかった。



「んで?」


「お願いヘーロス、エリックだけは戦いに身を置かせないようにしてほしいの。」


「そんなめんどくせぇこと俺に頼むな。」



口ではそう言ったものの、俺の使命は家族を守ること。


エリックを戦いの場、ましてや俺と同じ仕事なんぞに就かせるつもりは当然なかった。



「あなたはお兄ちゃんでしょ?ちゃんとエリックのことも気にかけてあげて。」


「チッ…」



俺はエリックと母が寝るのを確認してから、翌日実行する依頼の支度に取り掛かる。



父が残した遺品でもあるナイフ、これは俺にとっては仕事の遂行するための必需品だ。


ナイフの刃を研ぎながら、俺はエリックの言ったことを思い出す。






兄さん!俺、来週学校でイベントがあるんだ!


母さんには来てもらうことになってるけど、兄さんも来てね!


待ってるから!






「…午後には間に合うか。」



俺は依頼の時間を確認して眠りにつく。




部屋の明かりが消える。




「…んだよ…ヘーロス…お前…」



それをはるか遠方で暗視スコープで見つめる人物がいることを知らずに。






翌日。


まだ二人が寝ている中で俺は家を出る。



今日は一日で依頼がいくつもある。


こんなに多い依頼は珍しい。



だが、弟の気持ちに応えるべく俺はすべきことをするだけ。






「…ふぅ、これで最後か。」



俺は標的の息の根を止めた後、時間を確認する。



「…まだ時間があるな…」



俺は午後まで時間があることを確認する。


その時だった。



「お~い、今日も張り切ってるな…ヘーロス。」



そこに現れたのは俺のよく知る…



「…ディアボロ、なんでお前がここにいる。」


「がっかりだぜ…」



ディアボロはヘーロスに向けて映像ホログラムを見せる。



「…ッ!!…おまえ!」


「お前ほどの実力を持った若造が…まさか家族なんてくだらねぇ重荷を背負ってるなんてよ…!!」



そこに映し出されていたのはエリックの学校の映像だった…!!



俺はこれから行うディアボロの行為を理解した。


奴は俺の跡をつけ、家族の存在を知った。


そして家族という殺し屋としての重荷を壊そうと考えていた。



「お前は優秀な殺し屋だ、だがまだお前にゃ理解できてねぇ…殺し屋とはなんたるかをな。」



ディアボロの周囲に次々と殺し屋が集まる。



「せっかく金になる話を誘ったのによ…残念だぜ……れ。」


「くッ…!」



殺し屋たちが襲い掛かる。






「遅いな…兄さん。」


「おーい、エリックーそろそろ準備しろー」


「りょーか~い…(やっぱ来てくれなかったかー…)」







銃弾や近接武器などさまざまな武器を駆使して襲い掛かる殺し屋…


その攻撃をなんとか躱しながら相手の隙を伺っていく…



「たかだが、ここ数年で名乗り上がってきたガキが図に乗るなぁ!!」



相手の振り下ろす攻撃を避け、俺はカウンターを決めていく。



「邪魔だ!どけぇ!!」



カウンターを受けた殺し屋ごと別の男が俺に向かって攻撃を繰り出していく。



「ッ…!!…こいつら…!(仲間ごと…!)」



ディアボロはヘーロスと他の殺し屋たちの戦闘を見ながら呟く。




いいか、ヘーロス…


俺らは同業者、仲間じゃねぇ…


俺らの役目は“殺害”だ…


てめぇと違って、くだれねぇ他者のために奉仕することじゃねぇんだよ…




倒しても倒しても、次々と敵が襲い掛かる。






学校ではエリックや他の生徒の活躍を映像に納めながらほほ笑む母。


その姿を見たエリックもまた微笑み返す。






「おらおら!!どうした!?」



両腕を封じられ一方的に攻撃を受けた…


骨に直接伝わるこの痛み…


鼻から零れる血…


口の中では血の味がする…



「んだよ…!…ディアボロのやつ、かなりの凄腕とかほざいてたが、こんなもんかよ…!!」


「おい、トドメは俺がやる!手出すな!」


「はぁ!?分け前は俺の方が多いんだぞ!もう少し楽しませろ!」



俺は目の前のやつらの耳障りな声を聴きながら、足元に貯まった血だまりを見つめる。




散々人を殺してきた…


自分の死を知らぬまま死んでいった者…


死ぬ間際まで命を乞う者…


激しく怒り俺に罵倒を浴びせながら死んでいった者…


悲しみのあまり泣きながら死んでいった者…



全部、俺が見てきた光景…



いつか来るとわかっていた。


これまでの行いが自分に返ってくるって。



ここが死に時か…?


このまま何もしなければ後は死を待つのみ。


それでこれまで抱えてきた苦しみは終わる…






いや、待て…


俺が死んだあと、家族はどうなる?


母さんやエリックは幸せな人生を歩めるだろうか…?











ヘーロス、忘れないで。


あなたも私たち家族の一員なの。


あなたを失えば、悲しむ人がいるということを忘れないで。











そうだ…


俺も…家族の一人だ。


俺は家族を守らなければならない…


そこに俺がいなくてどうする…


二人の…


家族の…


幸せな人生を見届けるのが俺の使命だ!!




血だまりに映る瞳が紅く染まる。



「もう虫の息だぞ、誰が殺しても…」



発言し終える前に男の首が飛ぶ。



「…!!」



ディアボロが目を見開く。



「うっ…うわぁぁあ!!…なんだ…!?」


「お、おい…!!」



目の前の男の首が突如飛び、腰を抜かす男と驚愕し唖然とする男。


二人の横を向くと…



そこには先ほどまで虫の息だった男がこちらを見ていた。



「ひぃぃ!!!」



男を見つめる瞳は真紅に染まっていた。


二人の男は恐怖し、逃げ出そうと試みるが…



「ひっぎぇぇあぁぁ!!!」


「くっぐわぁぁぁ!!!」



一人は顔を掴み、地面に押し付けられたことでバキバキと骨や血肉が砕け顔の半分以上を陥没させた。


もう一人も両足をまるで紙切れのように意図も簡単に切断し、床に倒れた者を踏みつけ心臓ごと貫通させた。



今の俺なら造作もないこと。



「てめぇ…!やっぱ化け物か…!!」



俺に向かってディアボロが冷や汗を滲ませながら言い放つ。



「最後の仕事を片付ける。」


「へっ!…俺のことか!?…殺すのは勝手だが、そんなのんびりしてていいのか?」


「…なんだと?」






「ん?雨が降ってきた。」


「エリック、私は先に家に帰ってるわね。…お兄ちゃんのことだけど…」


「大丈夫!今日は忙しかったみたいだし、しょーがない!」


「ごめんね、エリック。」


「なんで母さんが謝るんだよ~、帰ったら兄さんのこと弄り倒すから安心して!」


「もう、そうゆうことするから怒られるのよ…!程々にね。」


「おう!」






「はぁ…!…はぁ…!」



雨が降る…



俺は駆けた。


家に向かって。




大丈夫、帰ればいつもの声が聞こえてくるはず…



また、おかえりなさいって。





















「……。…母…さん…?」



豪雨の中、家の前に横たわる母の身体。



あたりには大量の血だまりがあった。



鼓動が早まる…



「はぁ…はぁ…はぁぁ…!…はぁぁ!!」



俺は急いで母を抱きかかえた。



「しっかりしろ母さん…!…俺だ!ヘーロスだ!…いま病院に」



俺の頬を撫でる母の手。


その手は今にも消えそうなくらい弱い力だった。



肌に触れてわかった。


もう母は助からないと。



訓練を積んだ者ですら重症の怪我だ、一般人の母が耐えられるわけがなかった。



「ヘー…ロス…約束して…エリックを…あの子だけは必ず守るって…お兄ちゃんだから…できる…よね?」



母の瞳から光が消える。



「母…さん…」




気付いた時、[[rb:空 > おれ]]は泣いていた。






「兄さん…母さんは…」


「……。…済まない、エリック…」


「え…?」






あの日、俺は救えなかった。




どんなに力があっても、


どんなに家族を想っていても、


俺は救えなかった。




その事実は俺の胸に重く圧し掛かる。



それでも、自分に言い聞かせてきたはずだ。


死んだ人は還らない。


残されたものを…


父と母に託されたものを守り抜くと。






今でもたまに思い出す。


だんだんと冷めていく、母の温もりが。



それでも変えられなかった。


止められなかった。




あの日の、そして俺のこれまでの選択は変えることはできない。






9年前



母の死から6年後。


俺は殺し屋としてさらに名を挙げていき、今では政府の危険因子の一人として指名手配されるほどの脅威として知られていた。



今日もいつものように与えられた仕事をこなしていく。




標的を最も効率よく仕留める。


身体や衣服、装備に付着した血を洗い流し、換金所で金を受け取る。


すでにこの日常サイクルに何の感情も湧かなくなりつつある。



だが、


そんな俺でもこの瞬間だけは…


俺の疲れた心身を癒した。




「父さん、母さん、おはよう。」



俺の仕事前の日課、


父と母の墓参りだ。



「今日は二人に謝らないといけないことがあるんだ…

……エリックが俺と同じ仕事に就いた。」



母が亡くなった後、俺はディアボロと母を殺害した張本人の二人を探すべく奮闘した。


俺の心にはすでに余裕がなかった。


心に傷を負ったのは俺だけではないのに。




エリックは俺に内密で殺し屋となった。


母の仇をとるために。




「殺し屋なんてすぐに辞めてほしくて…何度も…何度もあいつを否定した…

その度に暴力的になっちまう…けど俺も父さんや母さんと同じさ。

…あいつには平和な人生を送ってほしいと思ってる、大事な弟だしな。」



俺は母のようにはできない。


エリックを仕事から遠ざけるべく俺を嫌悪するようにした。


だが、それでもエリックは止まらなかった。






俺は、あいつに幸せに生きてもらいたいだけなのに。






俺は父の墓に一杯の酒を置いた。




ノースエリアの酒…


生前、父が好んで飲んでいた酒だ。



子供の頃、父が無理矢理俺に飲ませて母が激怒していたっけか。



当時の俺にはわからないこの味。



「俺もこの味がわかる歳になったよ、ホントに…美味いな。」



今じゃ、この味が俺の至福のひと時だ。



「あいつは殺し屋になっちまったけど…それでも二人の約束は守るつもりさ。

…あいつに恨まれるようなことになっても…俺は…お兄ちゃんだから…な。」



父の約束、母の約束…


どちらも俺は守り抜く。



毎日、俺は墓の前で誓う。




たとえ、それであいつが俺を恨むようなことになろうとも。











家に帰ると弟が母の写真の前で自身のブリーフケースにあった金を見せていた。



「母さん、今日もこんなに金が手に入ったよ…!

ほら、母さんが前に行きたいって言ってた“日本”だっけ?

そこに行けるようにさ、俺…」



俺はエリックが置いた札束を蹴り飛ばした。



「何すんだよ!兄さん!これは母さんとの…」


「いいか、エリックよく聞け。母さんは…もういない。

そんでもって母さんは金なんてほしくはない…いまだに死んだ人に縛られてんならとっとその金持って消えろ。」




俺はまたあいつを拒絶した。


あいつなりに母のためにしたことなのだろう。




だが、母さんは望んでいなかった。



人の命を奪った金で生きることに。






「…俺だ。…あぁ、今向かう。」



俺はまた依頼のもとへ向かう。






7年前…



「ほい、お待ちどうさん…ん?…どうしたヘーロス。」


「気にすんな、ただの寝不足だ。」



俺はいつも通り換金所へ向かい金を受け取る。


母を、弟を養うために貯めてきたこの金も今となっては行き場を見失っている。



一体、何のために俺は人を殺めるのか?


何のために金を受け取る?




もはや、自分ですらわからない。



「てか、聞いたか?…お前の弟、最近かなり名を挙げてきてるじゃねぇか。」


「あぁ。」


「ここん来たときはえらく驚いたぜ…なにせお前の弟なんだって言うからよー」


「あぁ。」


「最初は兄貴に感化された恐れ知らずのガキかと思ったが、まさかお前と同じであんな天性の“殺しの才能”持ちとはな、ハッハッ…うおぉ!?」


「それ以上…お前の耳障りな話を聞かなきゃいけないか?」


「あ…っ…いやっ…わ、悪ぃな…留めちまって…」




あれから2年。


エリックはすでに俺と並ぶ殺し屋となっていた。



巷ではベルモンテ兄弟の名で知られているらしいが…



「くそっ…」



なぜ、こうなった…


なぜ、離れてくれない…





あいつは俺の示した道の反対側を行きやがる。






「ヘーロス。」


「!?」



その男は以前、俺と一戦交えた政府に仕えた人物…



「これで二度目だ、お前に背後を取られたのは…アドルフ。」



彼の名はアドルフ。


政府直属の暗殺部隊|E.R.A.S.E.Rイレイザーにいる男だ。


エリック以外に俺とここまで戦えた男を俺は知らない。



そして何よりもこいつは…



「君に頼まれた要件、やっと見つけたかもしれません。」


「やっぱ…お前は頼りになるな。」


「勘違いしないでください、あくまで“やつら”は私たちの標的…先にこちらが見つければ容赦なく排除します。」


「わかってるさ。」



俺はアドルフから情報の記されたデータチップを入手する。


そのデータチップを握りしめながら俺はとある住宅を尋ねる。



「はーい、どちらさま?」


「俺だ、ヘーロスだ。」



扉が自動で開く。



「今日来るって言ってたっけ?」


「急用だ、これを解析してほしい。」


「えーじゃ、私が前に言った”提案”を受け入れてくれる??」


「それとこれは話が別だソフィア。」



彼女の名はソフィア。


こいつは俺が知る中でおそらく最強のプログラマーだ。



そして…



「ん~!…なにこれ~!!…め~っちゃ暗号多くて気持ち悪いんだけどぉ!!

暗号解読プログラム使っても…はいダメー、んじゃこっちのアルゴリズムをこっちの方に移行してってと…

はぁ!?これもダメとかこんなデータチップ作製したバカ、死刑!死刑死刑~!!」



最高の変人だ。



「っふぅ~…ヘーロス終わったよー」



それでも数時間待てば必ずやり遂げてくれる。



「悪いな、助かる。」


「にしても誰このディアボロ…とかいう人」


「お前には関係ない。」


「それが解析してあげた人にとる態度ですか~?」


「…ありがとう…ソフィア。」


「ふんっ…よろしい!…んじゃまたね~

…あーってかホントに前に言った”提案”考え―」



あいつの話はいちいち長い。


俺はソフィアの話を聞き終える前に部屋を早々に出た。






今の俺は7年前とは違う。


一人で全てを為してきた俺には仲間の意義が理解できなかった。



だが…



人間誰しも一人では生きていけはしない。



俺は他者に頼ることを学んだ。



今回もそうだ。


ディアボロ…


あいつは母の死からすぐに姿を消した。


ディアボロに頼まれ母を殺害したクズも。



何年も経っても俺には見つけることができなかった。


だが、今は情報提供者、そして情報を解読する者までいる。



以前の俺には到底たどり着けなかった…



あいつらのおかげで今の俺の道がある。



「兄さん?」


「お前いつから…」


「いつからだと思う?」



エリックは強くなった。



俺の想定よりもはるかに成長していった。



あいつは俺とは違い、銃の扱いに長けている。




それだけじゃない。



「おい、人前では“それ”はやめておけ。」


「あ、出てた?無意識に出ちゃうんだよね~…この瞳。」



ベルモンテ一族に許された驚異的な身体能力…


エリックも俺と同様に発現していた。



そしてあいつの場合は平常時でも瞳が真紅に染まるときがある。



それが意味すること…



「…気を付けろ。」



常時、殺意を放っているということ。



エリックを無視し、その場を去った俺は早速、ソフィアが解読してくれた情報へ向かう準備を始めた。






ソフィアの解読した情報には、ディアボロそしてその仲間たちのアジトが記されていた。



確実な情報とはいいがたいが、俺はそれでもやつらを見つけ出す。




E.R.A.S.E.Rよりも…



エリックよりも早く。






「ここか。」



人気のない場所に佇む民家。


以前は企業のお偉いさんが住んでいたようだ。




中に入ると、人がいた痕跡をすぐに見つけた。



「この様子だと数日前か。」



俺は痕跡からすでにここに居座っていた人物は数日前にこの場を離れたことを理解する。


散乱したテーブルにある資料に目を通していると、俺はとある資料を見て動きを止めた。




それは8年前、


母とエリックの写真が記載されているものだった。



「間違いない…」



ディアボロだ。




周辺をさらに調べると閉じたパソコンを見つける。


中を開くと突如、カウントが開始された。



「…!!」



大きな爆音が民家に響く。






「ふっ…どこのバカだか知らんが…あんなわかりやすい情報に」


「引っかかると?」


「なっ!?…その声、ヘーロスか!!」



爆破が作動する前に民家から脱出した俺は爆弾を遠隔起動した位置を逆探知し、ディアボロと連絡をとることに成功した。



「おいおい…いつからそんな機械に詳しくなったんだ…?」


「俺じゃない…少しばかしこの手に詳しいプロの力を借りただけだ。」


「はっ、散々俺の誘いは断ってるお前が仲間を率いてるとはなぁ!?」


「…仲間じゃない、仕事のために必要なことをしたまでだ…お前がそうしてきたようにな。」


「んで?…俺と連絡を取れたはいいが、それで捕まると思ってんのか?」


「そうは思っちゃいない…取引がしたい、ディアボロ。お前も気に入るはずだ。」











俺は廃墟のビルに入り、ブリーフケースをその場に置いた。


俺は確信していた。



ディアボロは必ず来ると。











取引だぁ?この状況で俺に持ち掛けられるとでも思ってんのか?


俺が殺したいのはお前じゃない、お前の仲間…母を殺した奴に用があるだけだ。


お前がそいつを連れてくれば、俺の所持している金、全てをやる。


はっ…それを信用する根拠は?


一人で来いとは言わん、武装もしたままで構わない、なんなら先に場所の座標を送ってやる…


罠でも何でもするばいい…ただし、母の仇はもらうぞ。


いいだろう、人の命一人分でてめぇの所持する大金が手に入りゃ安いもんだ。











「随分と仲間が多いな。」


「当たり前だ、こっちはお前の実力はよく理解できてるんだぞ?」


「金はそのケースだ。俺の所持する金の半分がデータとして内蔵してある…残りは目的のやつを殺した後に渡す。」


「さすがだな、裏切られるための保険も掛けたか。武器をそいつに渡せ。」


「…いいだろう。」



俺はディアボロの仲間に装備を預けた。


これで俺は裸も同然。


周囲には完全武装したディアボロに雇われた殺し屋たちで囲まれている。



「目当てのものを出してもらおうか。」


「あの事件から8年か、お前にゃ実は感謝してるんだ、ヘーロス。」



ディアボロはそう言うと周囲の殺し屋たちに合図をする。


すると周囲の殺し屋たちが俺に武器を向け始める。



「悪く思うなヘーロス、てめぇの大金なんて半分もありゃここにいる全員が満足できんだよ。」


「それが…お前の答えか?」


「おい、まさかこの人数を一人で相手しようだなんて思ってないよな?さすがのお前でもその状態じゃ限界だろ。」


「少し、長居しすぎたな…ディアボロ。」


「なんだと…?」



廃墟ビルに突如衝撃が起こる。



「おい!?なんだこれは!!」


「ディアボロ、下の階からE.R.A.S.E.Rが侵入した!」


「っ!!…ヘーロスてめぇ!!」


「ディアボロ、俺に殺されるか…それとも政府の暗殺者に殺されるか…どちらがお前の性に合う?」



俺はすぐに背後にいる殺し屋の首をへし折る。



「くそっ!撃て!」



周囲の鉄柱を足場にして次々と飛び乗り高速に移動し、やつらを翻弄する。


足場となった鉄柱は俺が蹴った後にはまるで装甲車が激突したかのような歪みを見せる。



「速すぎっ…があぁ!!」


「おい!?相手は武器すら持ってないんだぞ!?」


「いいから!電磁砲を持ってこい!」



的確に相手の急所を手刀のみで抉り取る。



「腕力だけで人を貫きやがった…」


「ディアボロはどこだ!!」


「知らねぇよ、どうせもう逃げたに決まってる!!」


「お前ら邪魔だ!どけ!」


「!!」



一人の男が俺に向けて電磁砲を放つ。


なんとか回避するが、さすがに手ぶらの俺には破壊する術がない。



だが、それは手ぶらの俺では…の話。



「う、うわ…!」


「武器は返してもらうぞ。」



俺の武器を持っていた敵の首をはね、武器を奪還する。



俺は首の消えた男の身体を抱えながら電磁砲に向かう。



「ビビるな!撃て!…なっ!?」



抱えた遺体の身体をばらし、飛び散る血を目くらましとして周囲の敵にばら撒き、肉体の一部は敵に投げる。



「ぐへぇっやぁ…!」


「ひっぎえぇあ…」



とてつもない速さと質量のある肉片がぶつかった敵は自身の身体もろとも粉砕される。



断末魔の悲鳴すら出せない…



それを見た敵は怯え、震える。



「な、なんだよ…こいつ…!」


「どうした、お前らの仕事は“俺の殺害”だろ?…標的は目の前にいるぞ。」


「う、うわあぁぁ!!!!」






「周囲をくまなく探してください。」


「隊長!後衛についた隊員が全滅しました…!」


「なに?」



するとビルの入り口から姿を現わしたのは…



「(この戦い方…)君がヘーロスの弟ですか?」


「そーゆーあなたはアドルフさんだよね?たしか兄さんがすごく強いって言ってたっけな~」



多くのE.R.A.S.E.Rの隊員に囲まれたエリックは目の前のアドルフに笑みをこぼしながら話しかける。



「あなたを殺せば…兄さん褒めてくれるかな…」


「!?」



エリックの瞳が真紅に染まる。


すると瞬く間にE.R.A.S.E.Rの隊員が惨殺されていく。



「隊長…我々では…!」


「くっ…!」



アドルフ含め残り数名まで減らされたE.R.A.S.E.Rだったが、そこにエリックを止めるかのように天井が崩壊する。



天井の落下による土煙から姿を現したのは…



「兄さん!」


「ヘーロス。」



ヘーロスはアドルフたちE.R.A.S.E.Rの方を向きながら話し出す。



「予定より少し遅かったな。」



それを聞いたアドルフが戦闘態勢を解く。



「ヘーロス、ディアボロはどこですか?」


「その前に面倒なことになってな…」



俺が殺害した敵の姿を見るとアドルフは察した表情を浮かべた。



「なるほど…全員、ただちに目標を粛清。」


「了解。」



すぐに残りの殺し屋どもが俺らのもとにやってくる。


アドルフ率いるE.R.A.S.E.Rたちはすぐに殺し屋の粛清に取り掛かる。



「悪いな、アドルフ。」



そうアドルフに言い残しヘーロスは上の階へと走り出す。



「待つんだ、ヘーロス!…くそっ。」


「隊長、やつらは?」


「彼らは後です、まずは目の前のこいつらを片付けましょう。」






「兄さん!」



上の階に向かう道中、俺の後ろについてくるのはエリックだった。


おそらく、先日ソフィアの家から出たのを目撃されたのだろう。


そこから俺の痕跡を辿ることなんぞ今のこいつにとっては造作もない。



「ここにいるんだろ?…母さんを殺したやつが。」


「……。」



俺はあいつの質問に答えず進み続けた。


そのときだった。



「これは…」


「どうした兄さ…」


「離れろ!!」



不覚だった。



あいつのことで気が逸れた俺は足元の僅かな仕掛けに気が付かなかった。




ワイヤーに足をかけたことで、壁が大爆発した。


衝撃で俺は吹き飛ばされた。


あいつも爆破の衝撃で床が崩落し、その瓦礫によって身体の半身が下敷きになる。



「チッ!」


「やっぱ、家族のことになるとてめぇは鈍るなぁ…ヘーロス。」


「ディアボロ!!」


「今のでお前が死ぬとは思っちゃいない、下に落ちたお前の弟もな。」


「どうしてお前は…奪う…人の築き上げてきたものを…」



それを聞いたディアボロは俺を笑い飛ばした。



「最強の殺し屋ヘーロス・ベルモンテとあろうものが家族を失った程度で落ち込んでのか!?

…こりゃ笑いもんだぜ!!」



俺は…


家族を守りたかった。


それだけのはずが、母はおろか弟ですら先ほどのように守れなかった。


なぜ、こうも俺の反対側に転びやがる…


なぜ、本当に守りたいものは俺の手から零れ落ちる…




なぜ、俺は愛する者たちを守れないんだ。






「いいかヘーロス、殺し屋である以上、俺らは他者を頼っちゃならねぇ…

…俺らは“奪う側”の人間であって“奪われる側”であってはならねぇんだよ。」


「…。」


「おいおい~、勘弁してくれよ~まさかこれで戦意喪失しちまったかぁ?…悪いなぁ~

……そーいや俺がガキの頃にも戦地で家族がどーのとかぼやいてる死にぞこないの軍人がいたなぁ…」


「…!!」



俺はすぐに理解できた。


ディアボロこいつの言っている人物が…!!



「そもそも、軍人ならそんなもの戦場に抱え込むなって話だわ、あまりにも嘆くもんだから俺が楽にしてやっ―」



久しぶりだ。


怒りに身を任せた拳を振るったのは。



俺の身体はやつに感情の全てを乗せた拳を振るった。



「ぐはっ…!…でめぇ…鼻がぁ…!!」


「言いたいことはそれだけか?」


「今思えば…てめぇがガキの頃に殺しておくのが正解だったかもなぁ…!!」


「過ぎたことは変えられん…そのまま悔いて死ね。」



俺らは互いにナイフを取り出す。



「守る者を抱えるなんざ…弱いやつの生き方だ…!!」


「あぁ、そうだ。」



俺らは同時に動き出した。


互いに歴戦の殺し屋だ。


ナイフを用いた白兵戦に挑む。



すでにこちらは先ほどの殺し屋たちとの戦闘で体力は消耗している。



体力面ではあちらが有利…



「クッ…!!」



だが、戦闘面ではこちら有利…!



「なめるなぁ!!!」



ディアボロは得意のタックルで俺の動きを封じる。


壁に打ち付けられた俺は壁を蹴り脱出を図る。



「おらぁ!!」



回り込んだ俺に肘打ちを行い、一瞬怯んだ俺に追撃を続けるディアボロ。



「背負うものを捨てない限り…強者として生きられはしないんだ…!!」



ディアボロの拳を受け止め、やつの腹に渾身の蹴りを繰り出す。



「クッ…ハァッ!」


「強くなきゃいけないのか…?俺らは。」



床に落ちたナイフを拾い再び俺に向かうディアボロ。



「元から強い“お前ら“にはわからねぇ…!!」






弱者が強者に奪われない方法…


それはただ一つ…!


奪われる前に他から奪うしかねぇんだ!


俺は奪う者として全てを捨ててきた…!!


二度と奪われる者として生きないために!!


俺にはそれしか道がなかった…!!






俺もやつに応戦すべくナイフを拾い交える。



「道は自分で切り開くものだ、お前の失敗は…」



ディアボロのナイフが折れ、バランスを崩した隙に俺は足払いし、ディアボロにのしかかる。



「強者に執着しすぎたこと、俺に目を付けたこと、そして…」




俺のナイフがディアボロの胸に押し込まれていく。



「クッ…!…ソォ!!!」



「俺の家族を手にかけようとしたことだ。」



胸に押し込まれたナイフを抜き取りながらディアボロを見下ろす。



「父さんからのプレゼントだ、ディアボロ。」






母さんを…


父さんを…



そしてエリックまで奪おうとした者は…



自分の命をもってその行為を償った。



「あとは…」



俺はひとつ下の階に落ちたエリックのもとに向かおうとする。


だが、このビル内で僅かに響く衝撃…



「これは…」



E.R.A.S.E.Rの兵器か?



いや、あいつらは暗殺が仕事、大掛かりな兵器は扱わない。


なら、この音の正体は…?



「まさか…」



俺は気が付いた。


この衝撃の正体を。




ビル全体に響き渡らせるほどの衝撃…


そんなことを兵器を用いないで出せるのは常人離れした俺らくらいしかいない…



「エリック…!」










いつか…


こうなるとわかっていたはずだ。




あいつを俺と同じ道に行かせてしまったその時点で。



なぜ、あいつは俺と同じ道を歩んだ…



母を守れなかったから?


俺が父との約束を果たせなかったから?




原因は俺そのものだろう。






俺らの中には怪物が潜んでいる。






それは俺たちの殺意に呼応し、この身体を飲み込もうとする。






俺が下の階で見たものは、弟の内に隠された怪物だ。







この日…



俺が守ろうとしていた、皆に愛想を振りまき、俺なんかにも笑顔を振りまいてくれる…



あの弟は死んだ。



弟は自身の本能に呑まれ、それを解き放った。




すでに死亡はおろか肉片すら残っていない者を殴り続けている。


おそらく相手は母を直接殺害した人物だろう。






「もう終わりだ、エリック…」



俺はエリックに声をかける。


弟が振り向く。



「あぁ…兄…さん…」



振り向いた弟の瞳には悪魔が映っていた。



それは憎悪や邪悪などとは異なる。


本能に身をまかせた者が放つ狂気と純粋な殺意。




俺は理解した。


もう以前の弟は帰ってこない…


今いるのは殺し屋エリック・ベルモンテなのだと。






気を失うエリック。


瓦礫から這い出るために自身の左腕を犠牲にしたことで、大量の出血をしている。



俺はあいつの腕を止血した後、その場を去った。






俺の守るべく者は全て消えた。


あるのは…


父が残した武器、母が残した意思、そして弟との儚い記憶だ。




なぜ、もっとうまくできなかった…


なぜ、誰も救えなかった…


みんな、俺の愛すべき者だったのに。






「ヘーロス…!」


「アドルフか……ディアボロは俺が始末した。

…やつの遺体はお前らに任せる。」


「……。…エリックは…?」


「……。」



俺は独りだ。



それが正しい道だった。


ディアボロが言ったように。


奪う者は奪われてはいけない、それが殺し屋。



「あいつは…死んだ。」


「…!!」


「隊長…!

…こいつは…!!…ヘーロス・ベルモンテ!!

…どうしますか、隊長?」


「全員、最終目標の遺体を回収後、速やかに撤退。」


「ですが!目の前には!」


「命令です。」


「!!…承知。」



アドルフは部下をディアボロの遺体回収に向かわせ、俺を見逃した。


去り際、あいつからこう言われた。



「ヘーロス、これから…どうする?」


「……さぁな。」



家族を守るために殺し屋になった。


家族を幸せにするために他者の命を奪った。


正直、自分の家族以外に興味などなかった。


相手がどこの誰であろうと母さんが、エリックが幸せを享受できるなら何でもいいと。



だが、いざ自分が奪われる身に立たされて気が付いた。






こんなにも辛いものなのか。






強者として生まれたために弱者の気持ちを理解しようとも思わなかった。




それが俺の罪だ。




「強くても…意味がなかった…俺は守るためではなく、殺すために自分の力を利用した…………けど…そうか…」











ねぇ、ヘーロス!世界を解き明かし、救ってみる気はない??






いつしかソフィアに言われたこの一言…


それが突如、脳裏に浮かび上がる…



「ヘーロス…?」


「…アドルフ、この腐った世界を救ってみる気はないか…?」


「救う…だと?」



そのあと、俺はソフィアに言われたこの世界の闇を打ち明けた。



「仮にそれが事実だとしても…私たちだけで…」


「できるさ、お前も俺と同じ奪う側の人間だ…

今度は奪うんじゃなく…救ってみないか、その力で。」



それを聞いたアドルフは目を丸くした。


今でもその表情を覚えている。



あいつが初めて俺の前で笑った瞬間だ。



「フッ、他者ストレンジャーのため、ですか。

…どこまでこの手で救えるか…楽しみですね。」


「…決まりだな。」



俺は以前、ソフィアから強引に渡された番号宛に連絡した。



「俺だ、ヘーロスだ。

…お前の言っていた提案なんだが…」






「ヘーロス?」


「…悪い、少し夢を見ていたみたいだ。」


「そんなに深く眠るなんて珍しいですね。」


「寝ちゃ悪いか?…それよりアドルフ、後どのくらいだ?」


「もうすぐです、今回の対象は少年二人…とはいえ街ではかなり腕っぷしに定評があるみたいですね。」


「アンドリューとダニー…だったか…殺すなよ?今回は殺害じゃなくスカウトだ。」


「君に言われたくないですよ。」



俺らはストレンジャー。


世界を支配している政府、企業から人々を救うために俺たちはこの力を以て抗い続ける。



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