1 思い…出しましたわッ……!
新作投下ァ!
「それでは、新入生代表、アミラン・ヴァイオレット嬢のスピーチです」
頭髪が独り身になり始めた初老の男が、わたくしに対してただ無為に壇上を明け渡す為にお声掛けくださり、努めてエレガントに壇上へと登ります。
予め数日も前から友人にお手伝い頂き、数度の改正を得て漸く及第点として認めたメモ用紙を取り出し、一呼吸の間を置いてから周囲に目を配りわたくしを拝謁する許可を与えます。
あらっ? なんでしょうか、どこか既視感を感じるような……。
とはいえ、今はわたくしの力を使って勝ち取った新入生代表のスピーチの場。
王都にある学園まで、無能な御者の所為で揺れる馬車の苦痛に十日も耐えて、やっと辿り着いたのです。
頭を切り替え、何度も反芻したやるべきことを完遂する為見上げる愚凡人共に意識を向けます。
ですがそこで、一人の平民然とした小娘と目が合いました。
この娘、確か乙女ゲーヒロインの、名前は確か……。
名前を思い出そうとした瞬間、私の意識は反転し、そして暗転した。
壇上から受け身を取る姿勢すら見せずに前向きに取れ伏す。
そのまま硬い地面へと激突し、痛みの所為か意識が朦朧としている。
「あ、アミラン様!? アミラン様!」
どこか遠くで私『わたくし』を呼ぶ声が聞こえる気がするけど、応える事が出来ない、や、今は本当に無理。
襲い来る頭痛と気持ち悪さに耐えきれず、そのまま瞼を閉じて気絶した。
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