07 コレクター
「ここは……」
「起きたでゅふか?」
「バゲイラ殿」
窓のない湿った空気が漂う部屋、ランタンの灯りでレイシアはかろうじて少し離れたところにいるバゲイラを確認できた。
「私を拘束してどうするつもり!?」
「おや? 清楚なお嬢さんごっこはやめたでゅふヵ?」
「うるさいわね、カエル男。はやく私の縄を解きなさい」
両手、両足に鋼鉄でできた枷が嵌められていて、両手の方は上の方で繋がれているため、万歳した状態になっている。
「でゅふッ、すぐに済むでゅふよ」
「こぉ、んのぉぉぉぉ、スケベじじぃ~~ッ」
「でゅふ? なにか勘違いしているのではないでゅふヵ?」
バゲイラが手元にある蝋燭に着火器で火を灯すと彼の手元にあるものがはっきり見えた。
「い、いやぁぁぁぁぁぁ!」
「レイシアちゃんの〝肉〟なんて最初から興味ないでゅふ」
バゲイラが座っている前にあるテーブルには人間の〝皮〟が並べられていた。
「これが最初の妻でゅふ」
顔の皮を一枚両手で大事そうに持ち上げて自分の顔に並べてみせる。
「みんな大事な妻でゅふよ」
これからその末席に加えてあげるとバゲイラはレイシアに語る。
「バゲイラ様」
「なんでゅふヵ?」
バゲイラとレイシアの中間あたり、隅の壁に黒い影が滲んだかと思えば人のカタチに変わる。
「契約の延長はされますか?」
「ふざけるなでゅふ」
「……どういう意味ですか?」
肩を震わせるバゲイラは大声で黒いフードを被った男を叱責する。
「レイシアちゃんの皮に傷をつけてよくもそんなことが言えるでゅふね?」
「顔のかすり傷、たいしたことではないでしょう」
「この愚か者が、商品に傷をつけておいて何を抜かすでゅふ。契約は打ち切り、報酬も最初の額しか払わないでゅふ」
バゲイラは暗殺者ギルドの長に話して、抹殺してもよいのでゅふよ? と黒いフードを被った男を脅した。
「わかりました。ひとつご忠告いたしましょう」
「早く言えでゅふ」
「契約額を吊り上げるためにあえて護衛の男を生かしたまま放置しました」
「ふん、なにかと思えば」
鼻で笑い、もう用は済んだからさっさと立ち去るがいいでゅふ、と黒いフードの男へもう一度吐き捨てるように言うと黒いフードの男は闇の中へ溶け込みながら、あることを口にした。
「アレを怒らせたら我々でも勝てるかどうか……」