ヴァルドーの本気
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「どういう訳か、魔族に詳しいね?」
「……」
ミークの問いに答えず、ヴァルドーはまたも辺りの瓦礫を風魔法で集め始める。更にゴゴゴゴと地響きが響き始め、ボコン、ボコンとあちこちの地面が隆起し始めた。そしてヴァルドーの目がギラリと光った途端、ミークが立っている地面が突如ドン、と突き上がった。
「うおっとぉ!」
驚きながらもバランスを取り空中で浮遊し宙で留まる。だが今度は瓦礫を含んだ風魔法で生成された、直径1m程度の小さな沢山の竜巻が一斉にミークに襲いかかる。
「おお?」
ちょっと驚くミークだが、それもひょいひょいと躱し続ける。だが更に今度は、先程ミークを突き上げた地面が槍の様に形状を変え、串刺しにせんと下からビュン、と一気にミーク目掛けて伸び上がった。
「よっと!」
だがそれもまた難なく躱すミーク。それでも攻撃は終わらない。その地面からの槍攻撃は更にミークをどんどん襲う。その上小さな瓦礫を含んだ竜巻までも襲いかかる。
「インフェルノ」
それだけに収まらず、更にヴァルドーは先程よりやや小さめ、縦横5mはある炎の壁を複数生成、その壁をそのままミーク目掛けて飛ばした。
「これは避けきれないか」
ミークはそう呟きながら、急いで左手の各指の先端から光の球を生成、それを空中で浮遊したままのミークは宙に放つ。そしてAIにその光の球を操作し次々襲いかかってくる小さな風の竜巻を潰す様指示。了解、とAIから回答があり即、各々計5つの光の球は次々と小竜巻を壊し始めた。
そこへ飛んでくる炎の壁。次にミークは左手を目一杯開き、縦1m横30cmの長方形型の白いビームの盾を生成、それで向かってくる炎の壁を、下から突き上げてくる土の槍を躱しながら破壊し始めた。そして炎の壁と小竜巻を破壊し終わると、今度は下からいくつもせり上がって来る土の槍を破壊した。
「ふう……。面白い連続攻撃だった、ってあれ?」
全て破壊し終えたミークがヴァルドーを見るも、元居た場所に居ない。そこで「きゃあ!」と声が聞こえ、ミークがそちらを見るとヴァルドーがラミーを背中越しに抑えていた。
「それだけの攻撃を全て処理しきるとは正に化け物だな。だがお前が必死になって僕の攻撃を処理している間にラミーを捕えたぞ! しかもギルドの内部には人がいるだろう? 多分お前の仲間、報告に上がっている他の女だろうね。逆らったらラミーもその女達もどうなるか分からないぞ?」
「……そういう姑息な事するんだ? まあ元々王都から逃げ出した臆病者の卑怯者だもんね。それくらいはやっちゃうか」
「おいおい。そうやって余裕かまして僕を煽って良いのか? ラミーがどうなっても良いのか? 僕なら中にいる連中ごとギルドの建屋も一気に壊す事も可能だ。そうすれば中の人間達もただでは済まないよねえ?」
勝ち誇った顔で空中にいるミークに向かって叫ぶヴァルドー。だがミークはそれでも余裕の表情でラミーに声をかける。
「ラミーどうするー? そのまま捕まえちゃう?」
しっかり後ろから羽交い絞めにされたラミー。当初恐怖を感じたものの、相変わらず余裕のあるミークの様子に、少し気持ちが落ち着いた様子でミークの問いかけに応える。
「……正直後ろからこうやってくっ付かれているのはとても気持ちが悪いわ。さっさとやってしまって」
「了解ー」
「な、何を話している? 意味不明な事を言うな!」
ヴァルドーがそう大声を出した瞬間、ピシュン、と白い光が走ったかと思うと、またもヴァルドーの手を貫いた。
「ぎゃあああ?」
驚きラミーの拘束を解いてしまうヴァルドー。更にピシュン、ピシュン、とその白い光はヴァルドーの腕、足、肩、そして醜く出張った腹を貫いていく。一体何処から攻撃がやってくるのか分からないヴァルドーは、焦りつつも慌てて「ストーンウォール」と唱え、土の壁を作る。だが白い光はそれごとヴァルドーを貫いて行く。
「な、何だこれは! ウゲッ! ぎゃあ! ぐわっ!」
ピシュン、ピシュン、と小さな音を立てどんどんヴァルドーを貫く白い光。遠慮のないその光の筋はヴァルドーを蜂の巣にしくそれはラミーの周辺に配置していたドローンによる仕業だった。
ふう、と息を吐きジト目になるミーク。そして脳内のAIに「おいこら」と声を掛ける。
「何でラミーが捕まる前に攻撃しなかった? もしラミーに万が一があったらどうするの?」
ーーあの肥満デブ……、もといヴァルドーなる人間程度、例えラミーが拘束されたとて大した脅威では無いので捕まったのは些事です。更にヴァルドーは治癒が出来る模様。致死寸前まで攻撃するが良しと判断し只今ビームで攻撃しているのですーー
「……本当かなあ?」
ーーAIに失敗はありませんーー
「……」
やけに自信たっぷり答えるAIを訝しむミークだが、確かにヴァルドーはビーム光線で貫かれては治癒を繰り返すも、それがどんどん追いつかなくなっている。
「ふぎゅ! ぎゃあ! ぐああ! 痛ッ! 痛い! いくら治してもきりが無い!」
それでも傷が塞がってはまた別の場所が貫かれる、の繰り返し。エネルギーの貯蔵には問題ないので、何ならこのまま10日位は攻撃し続ける事も可能ではあるが。
ーーもう回復されるのも面倒なので両腕両足切り落としますーー
「え? あ、はい」
AIが若干イラッとした言い方でそう伝えミークが呆気に取られ答えた後、ドローン2機が互いのビーム光線を重ね合わせ大きめの刃の様な形状となり、そしてヴァルドーの両腕両脚をビシィ、と切断した。
「ぎゃああああ!!!」
強烈な痛みに叫ぶヴァルドー。止める術も無く達磨状態になってしまった。しかもその両腕両脚は胴体から離れてしまっており接合も不可能な様である。
「う、うぐぐ……、くそっ」
腕と脚が無い状態でジタバタするヴァルドー。そしてミークは穴だらけにした、ストーンウォールを全て薙ぎ払い、達磨状態のヴァルドーを晒した。
仰向けのままミークを睨みつけるヴァルドー。それを見下ろしながら「まだ抵抗する?」と声を掛ける。そこへラミーもミークの傍に駆け寄り、ヴァルドーの悲惨な姿と目の当たりにしギョッとする。
「いくらヴァルドーとは言え、その姿は同情してしまうわ」
「グッ! くそっ! 魔法はまだ使えるぞ! まだ終わっていない! ……え?」
仰向けで手足無い状態でジタバタ暴れながら大声を上げていたヴァルドーだったが、急に呆気に取られた顔になる。不思議に思ったミーク達だが、即その理由が判明した。ミークとラミーは揃って空に目を向ける。
「……な、なんて魔素、なのかしら」
「……」
町全体を覆っていた薄紫の結界はいつの間には無くなっている。そしてミーク達の視線の先には、大きな蝙蝠の羽を羽ばたかせながら浮かんでいる、1体の女の魔族が見下ろしているのが見て取れた。
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