子ども達だけで遠方からやって来れた理由が判った
更新遅くなり申し訳ありません。
また少しだけ連投します。
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話し終わった姉弟は、疲れてしまったらしくスー、スー、と寝息を立ている。その傍らでミークとラルは共に真剣な顔をしていた。
「子どもだから全容は分からねぇだろうが、端的に話聞いて、明らかに異常な事がデムバックで起きてるってのは分かった」
そうですね、とミークが返事したところで、コン、コン、とギルド長室の部屋の扉をノックする音が聞こえ、「誰だ?」とラルが答えると「ラミーよ、ニャリルとエイリーも居るわ」と扉の外から声が聞こえてきた。
入ってくれ、とラルが返事し、3人は扉を開け入って来た。ミークは咄嗟に人差し指を口に当て、シー、と静かにする様ゼスチャーする。皆ミークの仕草を見た後姉弟が寝ている事に気付き揃って無言で頷いた。
そしてラミーが小声で「気になってたから来たのだけれど」とミークの耳に囁くと、「もう少し声出しても大丈夫だと思うよ」と、クスッと笑いながらミークが返事する。
それからラルは、後から入って来た3人に姉弟から聞いた話について説明した。
「要約すると、デムバックにどっかのお偉いさんが突然やって来て町を無茶苦茶にしたんだと。で、そのせいであいつ等の母親が町から逃げてどっかに隠れているらしい。どういう訳かその母親はその隠れたとこから離れられないから、この子達に助けを呼ぶ為ファリスに行かせた、と。そういう事みたいだ」
「あんな小さい子達に託さないといけない位、追い詰められてたのにゃ」
「ていうか、お偉いさんって誰?」
エイリーの疑問に皆揃って首を傾げる。更にエイリーが言葉を続ける。
「それにあんな小さな子達がデムバックから迷いの森まで来るって相当大変だと思うんだけど。どうやって来たんだろう?」
その疑問に対してラミーは、姉アニタの腰の小袋をチラリと見て、「魔導具のおかげだと思うわ」と答えた。そしてスヤスヤと寝ているアニタの腰の小袋を「ちょっとごめんなさいね」と一応断りを入れ、それからそっと開いて中を覗いて見るラミー。
「やっぱりこの袋、異空間収納ね。中に食料とか必要な物が入っているのでしょう。そして靴も多分魔導具を使っているのではないかしら? いくら歩いても疲れない様な仕様になっている、と思うわ。じゃないと、こんな小さい子達が馬でも遠いあの距離を歩ける筈無いもの」
それからラミーは少し考えてから「この子達の母親、ミラリスねきっと」と呟いた。
ミークは「ラミー知ってるの?」と聞くと「ええ、勿論」と即答が返って来た。
「だって有名だもの。確かデムバックで魔石屋を営んでいた筈。要する彼女は魔法使いなのだけれど、冒険者稼業は余り好きじゃなくて、シルバーランクになったところで結婚して引退したのよ。そのまま冒険者を続けていれば、私同様ゴールドランクになるのは間違いない、と言われている程に冒険者としての素質はあったのだけれど。私も会った事は無いけれど噂は王都まで伝わっていたわ。女性で冒険者は珍しいもの」
「て事は、ラミーは王都から帰ってきたけども、デムバックには寄らなかったって事にゃ?」
「ええ。道中盗賊にも魔物にも襲われなかったから、魔物の素材が手に入らなかったから売り捌く事も無かったし、食材も予定より減らなくて調達が不要だったから。というか、デムバックどころかファリスまでは何処も立ち寄らなかったわ」
ニャリルの質問にも答えるラミーの話を聞いていたミークは、「とにかく私、2人の母親を探す為にデムバックに行こうかと思ってる」と皆に告げると、ラルは「確かにミークに任せた方が良さそうだ」と反応する。
「どうやらその子達、男に対して恐怖心を抱いてるみたいだからな。女のミークに任せた方がこの子達も安心だろう。それとこの話とは別なんだが、実はギルドからデムバックに送った精霊魔法の返事がねぇんだ。それは商人のイドリスが送ったのも同じでな。だからその調査も頼みたい。正式にギルドとして依頼を出す。構わないよな?」
勿論、とミークが返事するのを横で聞いていたラミーが手を挙げる。
「私も行って良いかしら? 魔法使いがトラブルに巻き込まれているのなら気になるし」
「じゃあ、あたしも行くにゃ」
「それなら私も!」
ラミーに続いてニャリルとエイリーまでもが、ミークに同行したいと言い出した。それを聞いたラルは腕を組みうーむ、と唸る。
「ミークとラミーはともかく、ニャリルとエイリーはまだウッドランクだし戦闘経験も乏しい。だから何が起こっているのか分からねぇデムバックに行くってのはちょっとなあ……。最悪戦闘になる可能性だってある。お前等2人は止めといた方が良い」
ラルの正論に、ニャリルは猫耳をペタンと折り曲げ、エイリーは尖った耳がへにゃんとさせ気落ちする。それでも2人は諦めきれない様で、次は揃ってミークを上目遣いでじーっと見つめる。「え? 何?」突然見つめられキョドるミーク。
「にゃあにゃあ。ミークからもお願いしてほしいにゃあん」
猫撫で声で尻尾をすりすりしながらミークの腕に縋るニャリル。
「ねえミーク、私達と一緒に行きたいよね? よね? よねぇ!? ねええ!?」
ニャリルと反対側の腕をしっかとつかみ、必死感たっぷり食い気味にミークに言い寄り顔を近づけるエイリー。両側から猫撫で声と暑苦しい感じで寄ってくる2人に、ミークは「あー、分かった分かった!」と、叫びながら2人をグイー、とと引き剥がす。そしてふう、1つ息を吐いてからラルに進言する。
「今森を監視してる私のドローンをいくつか持っていきます。それで常に2人を見てますんで、付いてきても何とかなります。それに2人にとって丁度良い訓練にもなるんじゃないかと」
「まあ私も居るし、調査だけなら問題ないのではないかしら?」
ラミーからもそう言われ、ラルは腕を組んだままの上体で再度、うーん、と唸る。今度はラルに対し上目遣いでじーっと見つめるニャリルとエイリー。諦めきれない様子の2人に、はあ、と溜息を吐くラル。
「……危なくなったら即撤退する事。それが条件な」
頭をガシガシ掻きながらそう言うと、ニャリルとエイリーは「やったあ!」にゃー!」と飛び上がって喜んだ。その声のせいだろう、スヤスヤ眠っていた姉弟が目を擦りながらむにゃむにゃと目を覚ました。
「……ん? 何?」
「もうご飯……、なの?」
「はっ! しまった!」にゃ!」
大声を出してしまったニャリルとエイリーは共にやってしまった、という顔をするが、ラルがそこで「ずっとここで寝られても困るから、丁度良かったぞ」と言葉をかけると、「そ、そうだにゃ」「2人共ご飯行こ?」と誤魔化すニャリルとエイリー。
「ご飯? でも私達、もう木の実持ってないの」
「袋の中とっくに食べ物無い。マントだけしか入ってない」
リンクの言葉を聞いたラミーが「マントって何かしら?」と反応すると、リンクは徐ろに小袋からファサ、と縦横1.5m程の麻製のマントを取り出し「これの事だよ」とラミーに手渡した。
「……これ、隠蔽のマントじゃない」
驚きながらラミーはそれを拡げて自身に被せてみせる。するとその場からラミーの姿が消え失せてしまった。
「おお? 何それ凄い」
「き、消えたにゃ?」
「えー不思議」
「凄ぇな」
ミークが感嘆の声を上げ、更にニャリルとエイリー、ラルまでも呆気にとられる。そしてミークは虹色の左目を用い、ラミーが居たであろう場所をサーモグラフィで探ってみると、そこには明らかにラミーがそこに居る事を確認出来たが、目視では消えている。
「姿だけ消えるんだ。どういう理屈なんだろ」
興味津々な様子でミークがそう言うと、ラミーは被っていたマントを脱いで姿を現し「インビジブルスライムの素材を使って作るのよ」と答えた。
「インビジブルスライムは水の中に棲息するスライムで、しかもこのマントみたいに姿が見えないのよ。魔石までも無色透明だから見つける事自体相当困難な魔物。だから隠蔽のマント自体、相当珍しい魔導具なのよ」
ラミーの説明にニャリルとエイリーはへぇ~、と感心している。一方ミークはデータベースにアクセスし、隠蔽のマントについて調べ、確かにラミーの説明通りだったのを確認しながら成る程~、と同じく感心していた。
「でも、異空間収納いい、隠蔽のマントといい、こんな貴重な魔導具をこんな幼い子ども達に持たせるなんて……」
「余程切羽詰まってたって事だにゃ」
「これは急いでデムバックに行った方が良いんじゃない?」
「そうだね。でもこの子達今日は疲れてるだろうから、一旦宿に泊まって貰って、明日の朝発とうか」
ニャリルとエイリーの言葉にミークがそう返すと、揃って了解と皆が同意した。
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