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幼い子ども達?

いつもお読み頂きありがとうございます。

また書き溜めに入ります。暫くお待ち頂けたら幸いです。

 ※※※


 鬱蒼と茂る木々。そのせいで日中でもやや薄暗い迷いの森。時折光る眩しい木漏れ日が、その日差しの強さを知らしめている。どうやらこの地域は春夏秋冬が規則正しく訪れる様で、今は初夏のやや蒸し暑い空気を感じる季節。


 そんな森の中、素早く移動する4つの影。


 1人はまるで猿の様に木々の枝から枝へ器用に飛び移り、1人は木の幹を蹴ったりしながら地面を高速で駆ける。もう1人は足に纏わりついた風魔法で地面から少し浮いており、もう1人は重力に逆らい浮遊し空中を移動している。


 4人はあちこちで冒険者達が魔物の死体を回収する作業をしている横を颯爽と通り過ぎて行く。影に気付いた1人が呆気に取られながら、近くで作業している仲間に声を掛けた。


「おい。あれってもしかしてあの4人か? あいつ等マジで冒険者やってんのか?」


「そうみたいだな。確かあっちの方向って、コボルトが出没したってとこだろ? 討伐依頼でも受けたんだろ」


 因みにコボルトとは、尖った耳と鋭い牙が生えている顔は犬の様な頭の人型の魔物である。普段は余り森から出てくる事は無いのだが、時折街道の人を襲う事もある上、最近数が増えてきた、とギルドに報告があったので、討伐依頼が出ていたのである。


 既に過ぎ去って行った4人を見送る様に見ていた1人が、面白くなさそうにケッと舌打ちをしながら、「ったく女の癖に……」と呟くと「何言ってやがる」と、先程の男から反論が飛んできた。


「闘技場でのあいつ等お前も見てただろ? あの3人組を2人でのしちまったの。ありゃまぐれじゃねーぞ」


「……だからって、魔法も使えない女が冒険者になるって、許せんのかよ?」


 納得がいかない複雑な表情でそう返すと、同じく魔物の死体回収をしていたであろう、冒険者3人組が荷車を曳きながら現れ「俺は気にならねぇよ」と会話に入ってきた。


「気にならねぇ? お前本気で言ってんのか?」


「ああ。強けりゃ女でも男でもどっちで良いじゃねーか。実際ニャリルとエイリーはそれを大勢の前で証明してみせた。お前みたいにまだ未練たらしく気に入らないって言ってる奴より、立派だと思うが?」


「つーか、そもそもミークやラミーっていう、明らかに俺等より強い女が居るってのに、ニャリルとエイリーは許さねえって、そりゃあ筋が通ってねぇぜ」


「そんなに気に入らないなら、お前もあの2人に挑戦してみれば良いんじゃないのか?」


「……」


 明らかに苛ついた顔をする男。だがそれ以上言い返せず黙ったまま作業に戻った。それを見て3人は顔を見合わせ揃って小さくため息を吐いた。因みにこの3人は、以前ミークが盗賊から助けた冒険者達。当時はウッドランクだったが、今は階級が上がりアイアンランクになっている。


 そんなやり取りが自分達の後ろで起こっている事を露程も知らない4人は、疾風の如く森の中を駆け続け、そしてコボルトの集団を発見。少し離れたところで一旦立ち止まって息を殺し、近くの茂みに身を潜めた。


「じゃあ早速やってみるわよ。エイリー、精霊魔法を付与して」


「はい」


 ラミーにそう言われ、エイリーは自身の武器にヒュウウ、と風を纏わせた。


「ニャリルはエイリーの狙撃が決まって、コボルト達が混乱し始めてから突入ね」


「にゃ」


 ミークにそう指示をされ、ニャリルも自身の武器を、腰の小さなポシェットから取り出し両手に付けた。


 因みにエイリーの武器は拳銃。今手にしているのは1丁のみだが、両腰にガンホルダーがぶら下がっており2丁持っている。更にエイリーの背中には長さ1.2mのスナイパーライフル。どちらの武器も全てチタンとタングステンの合金で出来ており、相当な硬度でまず破壊は無理である。


 その拳銃とスナイパーライフルはビームを発射するタイプだが、その弾丸の元となるビームエネルギーは、ミークの左腕と違い魔素をエネルギーに変換出来ない。だがグリップの底にとても極小さな太陽光パネルが添付されており、そこで太陽光を集めエネルギーに変換、充填して使用出来る仕様になっている。


 トリガーを引くと丸いビームエネルギーの弾丸が発射される仕組みで、それだけでも充分威力は高いのだが、エイリーが精霊魔法を使うと、更に射程距離が伸び正確さが増す。本来エルフは弓矢を得意とする為、こういった射撃系の武器はエイリーに向いているだろう、そう考えたミークは、この拳銃とスナイパーライフルをプレゼントしたのである。


 そしてニャリルには近接の肉弾戦が向いている、と判断し、カイザーナックルと更に普段は両腕の篭手の中に収納されている長さ30cmの鉤爪をプレゼントした。エイリーの武器同様、チタンとタングステンの合金である事は同じで、ナックルと鉤爪の硬度も相当高い。


 そして更に、胸、膝、脛、腰全てに、同じ合金製の防具を身に付けている。それらはミーク、更にラミーまでも装着していた。この合金製の防具は、かなりの硬度を誇るにも関わらずとても軽い。女性の装備としてはうってつけなのであった。


 先日ミークがプレゼントしたのはそれらの武器と防具。特に武器に関してはミーク自身は必要としない為、衛星内で無用の長物となるよりかは、2人に使って貰った方が良い、とミークは思ったのである。


 そしてそれらの武器の練習を充分に行った後、今日はそれらを使っての実践訓練なのである。本来ウッドランクは討伐依頼を受けられないのだが、シルバーランクのミークにゴールドランクのラミーが同行している為、魔物の討伐を許されたのである。


 エイリーは静かに茂みの影から拳銃を構える。レーザビーム銃の為撃鉄は無い。引き金を引くだけでビーム弾は発射される。何度も練習したエイリーだが、今日は初めて魔物に対して使用する。なので引き金を指にかけるその表情は緊張している。


 静かにスゥっと息を吸い、意を決してエイリーが静かに引き金を引く。パシュンパシュン、と小さな音2つを立て、白い光の弾が発射されると、直ぐ様その弾の周りに微かな風が纏わり付いた。そして弾はどんどんスピードを上げ、ターゲットに向かって行く。


 途端、


「グギャ!?」「ギヤッ?!」


 と、突然眉間に強烈な痛みを感じたコボルト2匹は、そのまま何が起こったのか、何故自分達がこうなったのか分からないまま、仰向けに倒れ絶命した。


「ウガガ?」「ギギャガ?」「ギッ、ギヤギヤ!」


 周りにいたコボルト達は突然の異変に驚き慌てふためく。次に「うにゃ!」と声を上げながら、ニャリルがスタ、と混乱しているコボルト達の中心に着地。即シュバ、と鉤爪を横薙ぎに一閃すると、


「ウギャギャ?」「ギャアア!」「グギャアア!」


 それぞれが瞬く間に叫び声を上げ鋭い鉤爪で首を切られ血を迸りながら次々息絶えていく。更に何処からともなくパシュンパシュン、とまたもコボルト達の命を次々に奪っていく小さな弾。その上えげつない程の切れ味、そして強烈なナックルパンチで、次々コボルト達を屠っていく猫の獣人。


 程無くして、20数匹居たコボルト達は、呆気なく全滅した。


「ふう……。上手くいって良かった」


 エイリーがそう呟き大きく息を吐く。そしてニャリルの居るところまで駆けて行った。それを見つけたニャリルが「余裕だったにゃ!」と嬉しそうにエイリーに向かって手をブンブンと振っている。


 だがそこで、ヒュンと、何処からともなくニャリルに向かって矢が飛んで来た。エイリーが気付き咄嗟に「危ない!」と叫ぶと同時に、ピシュン、と何処からとも無く水の球が飛んできて、その矢をパキン、とへし折った。


 その正体はラミーの水魔法。そして次にミークがふわりと宙に浮かび、紅色の左目で矢が放たれたであろう箇所をサーチすると、やや高台になっている大きな岩の上に、コボルト達がまだ数匹居たのを見つけた。そしてフッと今いる場所から消えたかと思うと、コボルト達が居る場所へ移動し、全て殴打で倒した。


 その後ラミーが風魔法でふわりと宙に浮かび、そして気不味そうにしているニャリルがいる、コボルト達の屍だらけの場所へ降り立つ。そしてラミーはニャリルをひと睨み。その視線にニャリルはビクっと反応する。


「……ニャリル、油断したら駄目って言ったわよね?」


 茶色い猫耳がペタンと前にへたり折れ、シュンとして謝るニャリル。


「ごめんなさいにゃ……」


「全く。すぐ調子に乗るのはニャリルの悪い癖よ。私達が居なかったら危なかったわよ」


「はいにゃ……」


 ふさふさの尻尾までへなへなになっているニャリルの元へ、今度はミークが空から降りて来た。


「ま、でも一瞬でコボルト達を倒したのは凄かったよ。エイリーもちゃんとニャリルの動きを意識して狙ってたし。2人共初めてにしては上出来だと思うよ」


 ミークがフォローする様に褒めると、へたった猫耳は立ち上がり、尻尾もピン、と伸び上がる。


「そ、そうにゃ! あたし良くやったにゃ!」


「だから調子に乗らない」


 嬉しそうにしているにゃリルの頭をエイリーがポカ、と拳銃の底で軽く小突く。「はいにゃ~」と直ぐにしょぼくれるニャリル。それを見てミークとラミーは呆れた様に苦笑するのだった。


 魔物は倒した後素材と魔石の回収まで行わなければならない。ニャリルとエイリーにもその経験をして貰おうと、ラミーがやり方をレクチャーしようとしたところで、突如AIが脳内でミークに語りかけた。


 ーー報告があります。迷いの森の端の方、ここから12.876km離れた場所にて、子ども2人が魔物、ゴブリン数匹に襲われていました。ドローンでゴブリン達は倒しましたが、如何しましょう?ーー


「え? 子ども? ……映像転送して」


 AIから何やら気になる報告があったので、ミークはドローンが発見したという子ども達の映像を送る様伝える。直ぐ様ミークの脳内に映像が映し出されると、そこにはボロ着を纏った幼い子ども2人が、既に死に絶えているゴブリン数匹の前で震えているのが見えた。


「ごめんちょっと緊急事態。行ってくる」


「え?」「何?」「どうしたのかにゃ?」


 3人の疑問を他所に、ミークはふわりと空中に浮かび、一気に子ども達が居る場所に高速で飛んで向かって行った。数分で到着すると、そこには未だ震えながらお互い抱き合い、その場にしゃがみ込んでいる子ども2人が居た。


「あんな小さな子達が、何でこんな所に?」


 ミークは疑問に思いながらも驚かせてはいけないと、一旦子ども達から離れた場所で静かに着陸し、そして走って2人の元に向かった。


「君達大丈夫?」


「……あ」


「女の……、人?」


「そうだよ人間だよ」


 ミークは出来るだけ警戒させまいと、優しい笑みを浮かべそう答えると、子ども達は途端にわああああ、と大声で泣き出し、揃ってミークの足にひっしとしがみついた。


「うわああーーん! 怖かったよぉーーーー!」


「うわああーーん! お母さあーーーーん!」


 2人に突然抱きつかれ、びっくりしたミークだったが、とにかく2人を安心させようと、ミークは目線を子ども達に合わせる為しゃがんで2人を抱きしめた。そしてドローンの通信機能を利用し、3人が居る場所の近くを監視していたドローンを移動させ、音声機能を用い3人に話しかける。


『迷子っぽい子ども2人が魔物に襲われてた。森の端に居たんだ。とりあえずそっち連れて行くね』 


 突然何も無い(本当は羽虫程度のドローンが居るのだが)空からミークの声が聞こえた3人はギョッとするも、またミークの不思議な能力だろう、と半ば強引に理解し、とりあえず各々返事する。


「え、ええ……」


「わ、分かった……、にゃ」


「あ。あれ……。ミークの不思議な力で浮いてる虫みたいなのから聞こえてきた。あれって遠くの声を届ける事が出来るんだ」


 ラミーはエイリーの言葉に成る程、と返すも「ミークに出来ない事って何なのかしら?」と呟く。だが直ぐにニャリルが、


「でもああ見えてミークって結構抜けてるにゃ」


「あー分かる」


 エイリーもそう言いながら揃って相槌を打つ。ラミーは2人の息のあった行動にクス、と笑うも、ミークからの言葉が気になり顎に手をやった。


 ……森の端に子どもが2人? 町とは逆の方向よね? 一体どういう事なのかしら?


感想等頂けたらありがたいです。

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