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とりあえず脅威は無くなった

また書き溜めに入ります。

※※※


 ーー左腕が衛星に到達、格納しました。次に衛生内にて待機中の射出用ロケットの下部に装着……完了。次に超小型ドローン480機、搬出ロケットに収納しました。ハッチ開放……、発射準備完了。射出しますーー


 AIがミークの脳内で状況を説明し続ける。そして晴天の青空でずっと待機している、煌めく星からもう1つ、キラリと新たに光が発生し、それは徐々にこちらに向かって来た。大気圏を越えた辺りでその物体は本来の姿、鉄色のロケットの形を現し、高速でミークの元まで落下してくる。


 そしてミークの頭上近くまで来たかと思うと徐々に減速、最終的にふわりと横倒しになって地面に降りた。途端、そこにあった草が、大気圏の摩擦で高音になっていたロケットの表面の熱で、ブシュウと音を立て焼け焦げた。


 そしてミークは未だ熱を持っているであろう、左腕をロケット下部から切り離し、浮遊させたままロケットの蓋を開けた。そこには羽虫程度の超小型ドローンが、大量だが綺麗に整頓され縦列で詰め込まれていた。


「うわ~、小さいとはいえ480機は流石に一杯だ。じゃあ早速、森全体に展開。作業開始して」


 ーー了解。現在森の上空で待機しているドローン含め、作業開始しますーー


 AIがそう返事するや否や、開いた蓋から超小型ドローンがまるで蜂の大群の如く一斉に空へ飛び出していく。そしてそれぞれは直ぐ様、各々目的へと向かって行った。それを確認したミークは、こもっていた熱が下がっているのを確認した後左腕を装着。そしてロケット下部を取り付け、それをぐい、と左腕を用い上空に掲げる。


「じゃ、ロケット元に戻すよ」


 ーー了解、衛星の座標測定……。完了。ロケット発射しますーー


 AIの声が聞こえて直ぐ、ドン、とロケットは左腕の反重力装置の力を借り衛星に向けどんどん加速していく。ミークはその様子を紅色左目で見続ける。やがて大気圏を越え到着したロケットは衛星内に格納された。そして左腕だけUターンし、またも大気圏を越え、ミークの元に落ちて来て、近くまで来るとふわりと浮いて止まった。


「……体温位熱が下がってから、私の身体にくっつく様にしといてね」


 ミークがふよふよ浮いている左腕を右指でちょんと触れながらAIにそう指示、了解、と回答が来て、ミークはそこで漸くある程度落ち着いた、と、ふう~、と長い息を吐いてその場に大の字、正確には片腕は切り離されたままなので大の字ではないが、とにかく仰向けに寝転がった。


「これで何とかなった。正直ヒヤヒヤしたよ。さて、腕の熱が下がるの待ってる間、各ドローンの作業状況の確認しようか」


 放った大量のドローンがどういう作業をしているか気になったミークがそう伝えると、AIはとある1機のドローンの映像を脳内に映し出した。


 そのドローンは丁度1匹の魔物の死体に超低温窒素を噴出していた。死体はみるみるうちにチルドされ氷の塊となる。更にドローンはその上から透明なビニールシートを噴出し被せ、中の空気を抜き真空にした。


 この度のAIからの提案、それは死体を超低温処理した後、真空パックにして腐敗化を遅らせる、という方法だった。ミークがダンジョンに潜る際、食料を保つ為使用したジップロックを、ここでも活用しようという事である。


 魔物の大きさや種類は多岐に渡る。ジップロックはそれなりに頑丈であるものの、元々食料保存の為なので当然ながら頑丈という訳でもない。よってジップロックの真空化だけでなく、超低温にする事にしたのである。


 更にジップロックに収まりきらない巨大な魔物は、素材が傷まない様ドローンがカットし、幾つかに分けてからチルド、そしてジップロック真空化にしていた。


「これで大体1年は持つみたいだけど……」


 だがそれでも万全ではない。その場所で長らく放置し続ける事になるからだ。もしかしたら森の動物が引っ掻いたりして穴が空く可能性だってある。よって結局は急いで採集をする必要がある。


 ミークはドローンの作業状況を確認した後、漸く冷たくなった左腕を装着し、そしてふわりと空に浮かんでファリスの方向、ラミー達が居る場所に飛んで行った。


 ※※※


 ラミー達は遠目で森の奥から何かが空に飛んで行き、また、今度は空から何かが落ちて来たのを固唾を飲んで見ていた。当然それが何かは全く分からない。だがミークが起こした事象だという確信は、4人全員が持っていた。


「ミークは何をやっているのかしら?」


「さあ? ダンジョンの中でもそうだったけど、カガクというミークの能力は、僕達の想像を遥かに超えてるからね」


「まあ後でミークに聞くしかねぇな。説明されても理解する自信はねぇが」


「違いないね。とにかく明るいうちに魔物の処理をしないと……、あれ?」


 サーシェクが空からミークがこちらにやって来るのを見つけると、他の3人も同じ方向を見る。確かにその空にはミークが向かって来るのが見えた。


 ミークはふわりと4人の傍に着地すると直ぐ様、


「ごめーん。魔族逃しちゃった」


 と謝罪する。だが4人はそのミークに直ぐ言葉を返す事が出来なかった。黙ってミークを見つめる4人。その様子にミークは当然不思議に思う。


「ん? どうしたの?」


「「「「……」」」」


 首を傾げながら質問するも、4人は誰も答えない。いや、なんと声を掛ければ良いのか分からない。そういう雰囲気である。だがラルがゴホン、とその空気を破るかの様に咳払いをした。


「色々聞きたい事がある。だがその前に、森中に散らばってる魔物の死体の処理を急がないといけねぇ」


「あ、それならもうやってるよ」


「は?」


 もうやってる? ラルは意味が分からず眉を上げる。丁度その時、1機のドローンがラル達の近くにあった魔物の死体までやって来た。そして超低温窒素を全体に吹きかけ凍らせてから、ジップロックをかけ真空にした。


「ああやって全部の魔物の死体、凍らせて真空にしてる。大体1年は腐らないよ」


「あ、ああ……、あ、そう……」


 それで何で1年も保つんだ? 当然疑問に思うも呆気にとられ過ぎて口から出て来ないラル。それは傍で話を聞いていた他の3人も同様だった。


「……、で、でも、魔物は移動しないといけないんじゃないか?」


 何とか声が出たサーシェクの疑問に、ミークは「そうなんだよね」と困った顔で返事をする。


「とりあえず腐敗するのを止めてるだけだからね。その状態で森の中に置きっぱなしにするだけだから。だから人海戦術で魔物を町に持って来て解体するって作業が必要になる。穴空いちゃったら腐敗進んじゃうしね」


「一体どれだけの魔物の死体があるんだ?」


「約3万匹」


「……は? 3万? 3百じゃなくて?」


「そうだよ」


「「「「……」」」」


 ミークの回答に4人はまたも呆気にとられてしまう。


「……それだけの数の魔物を、全て一気に倒したっていうのかしら?」


 ラミーがどうにか言葉を絞り出すと、ミークは苦笑しながら「凄いよね」と他人事の様に答える。


「あの攻撃、私も初めて使ったんだけど、まさかあれだけの数を全て一瞬で倒せるなんてね」


「そ、そうなのね……。そう……。と、とりあえず、魔物が腐敗するのは防げた、って事で、良いのかしら?」


「そういう事。半日もしたら全ての魔物の腐敗化抑止の作業は終わるよ。でもその後は皆でやってほしいなって」


 傍らで聞いていたノライが「ちょ、ちょっと待って」と間に入る。


「そ、それだけの数を、たった半日で処理出来るの?」


 ノライの疑問に「そうみたい」とこれもまた他人事の様に返すミーク。


「ダンジョンで飛ばしてた虫みたいな、ほら、ドローン、あれをもっと沢山使ったからね。だから可能なんだって」


 ノライはミークの返事を聞いて、「ああ、あの不思議なアレか。なら出来るの、かな?」と無理矢理納得した模様。


 そこでサーシェクが怪訝な顔でミークに質問する。


「さっきから気になっているんだけど、何でミークがやってる事なのに、そんな他人事みたいな言い方をするんだ?」


 サーシェクの疑問に皆も確かに、という視線でミークを見る。どうやら皆疑問に思っていた模様。ミークはその質問に、「ん~、説明が難しいんだよなあ」と困り顔。だがそこで、同じく傍でやり取りを聞いていたラルが、はあ~、と大きな溜息を吐いて会話に入る。


「とりあえずその辺も含め、ミークには聞きたい事が山程ある。魔物については分かった。とりあえず脅威は去ったみてぇだし、一旦ギルドに戻るか」


 ラルの言葉にミークも了解、と答え、他の3人もそれぞれ顔を見合わせた後頷き合い、5人は町へと戻って行った。


 ※※※


 町の入り口ではここの町長、マルガンがそわそわしながら、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、落ち着かない様子でうろうろしていた。


 眼の前では屍と化したワイバーン達の処理を、戻って来た冒険者と警備隊員達が、何とか夜になるまでに終わらせようと頑張っている。ドローンはどうやら「森の中の魔物」と指示を受けていたので、ファリスの入り口前の魔物までは対処していない様である。


 そしてもう1人、その前で「ひょっほ~ぅ!」と何やら嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ね踊っている中年男性。


「アラクネだけでなくワイバーンですかぁ~! しかもこぉ~んなに! ほっほ~ぅ! 素晴らしい素晴らしい! ワイバーンも相当貴重な魔物! 私が今回、ここに来たのは本当に幸運でしたな~ぁ!」


 そんな風に能天気に、喜びながら相変わらずベレー帽を扇子の様に手に持って踊っている中年男性、商人のイドリスを、ギロリと睨むマルガン町長。


「こちらとしてはファリス始まって以来の、未曾有の危機がやって来た、と身構え恐怖していたのだが? 空気を読んでくれないかな?」


「そう言われまして~もぉ! 商人として~はぁ! こんなに嬉しい事はな~ぃのですよ~ぉ!」


「……もうひっ捕らえてやろうか」


 イライラしているマルガン町長を気にせず、奇妙なダンスを続ける商人イドリス。そこへミーク達が戻って来た。


「あー……、あの人また踊ってる」


「私が護衛として一緒に来た時は、あんな雰囲気じゃ無かったのだけれど……」


 ラミーが踊り狂う中年を見て眉を顰める。とりあえず絡まれたら面倒臭そうなので、4人はそそくさとその横を通り過ぎようとすると、その知覚に居たマルガン町長がノライを見つけ、足を縺れさせながら駆け寄ってきた。


「ノ、ノライ! ど、どうなんだ? どうなった! 町は、町への脅威は?」


 ノライの両腕を掴み必死の表情で聞くマルガンに、ノライは平静を保ちながら返事する。


「町長。ご安心下さい。脅威は去りました。こちらへ向かって来た魔物は全て倒されました。更にミークによってると、魔族も居なくなったそうです」


 ノライの言葉を聞いて、マルガン町長は、


「そ、そうか! そうかそうか! そうかあーー! ああーー! 良かったああーー!!」


 ホッと胸を撫で下ろし大きな声で叫んだ後、途端に力が抜けその場でヘナヘナと膝から崩れ落ちそうになるも、それをすんでのところでノライが支えた。


「大丈夫ですか?」


 声を掛けるノライの両腕を再びガシっと掴みながら、マルガン町長は目に涙を溜めノライを見つめ歓喜の声を上げる。


「ノライ……、良くやってくれた! 本当に良くやった! そちらにいるミーク! そしてラミーも! 町を守ってくれてありがとう! ……ん? そう言えばバルバというゴールドランクの彼は? 確か一緒にダンジョンに行ったと聞いていたが……」


 その疑問を聞いたラルは「それも含めとりあえず全て報告したいので、一旦ギルドまで来て貰えますか?」と告げ、更に「イドリスだっけ? あんたも来てくれ」と、ベレー帽を片手に踊る中年男性にも声を掛けた。


「ヒョ? 私もですか?」


 踊っている最中に声を掛けられちょっと驚いた顔をする商人イドリスだったが、即踊りを止めシュッと背筋を伸ばし「かしこまりました」と丁寧に返事した。


「……これは絶対変わり者だ」


「シッ! ミーク、聞こえるわよ」


 ラミーに窘められたミークは慌てて口を手で抑えた。

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