表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/108

とうとう魔族と相対する

いつもお読み頂きありがとうございます。

ちょっと煮詰まっているのでとりあえず2話投稿します。

 ※※※


「……」


 呆気に取られる。もうこれを何度自分で行っただろうか。


「……は? ……はあ? はああああああああああ???」


 そして少し間をおいて、我に返った魔族は突如絶叫してしまう。


「何なのだこれはあああああ!!!! 意味が分からぬ! これは夢なのか!? 誰かが私の脳を操って悪夢を見せているのではないのか!? こ、こんな……! こんな事があってたまるかあああああ!!」


 子蜘蛛に変えたダンジョン内の魔物達を放ち、ファリスの人間共を蹂躙し、そしてあわよくばその隙にあの忌々しい雌を殺すという魔族の魂胆は、突如降ってきた謎の白い雨によって打ち砕かれてしまった。


「圧倒的な数で襲えばきっと、こちらが優位に立てるだろう、冒険者共が居たとしても吐き出したのは全てダンジョンに居た魔物。その強さは迷いの森の魔物には到底及ばぬ。よって為す術も無く魔物達の餌食となる筈だった……。それなのに……!」


 あの雌はきっと、町の連中を守ろうと立ち回る。いくら強いと言えどたった1匹。一方こちらは約3万匹のダンジョンの魔物達。その物量を使えばきっと、町の連中を守るのに限界がきて隙が生じる筈。そこをついてあの雌を殺してやろう、そう考えての一大決心。


 ただ本心を言うならばこの方法は使いたく無かった。子蜘蛛から魔物達を元の姿に戻す際相当な魔素を消費するからだ。魔物を放出すれは、折角ダンジョンに籠もり魔素を回復させていたのが水泡と帰してしまう。だがそれも、あの邪魔な雌を殺し町の人間共を魔物に襲わせ食らわせ、更にそれらを自分が取り込めば、相当魔素も相当回復し相殺される。


 そもそも魔物達を捕らえていたのは別の用途で必要だったからで放出するつもりは無かった。魔族にとっては一大決心のこの作戦。だが、あの雌を殺すには他に方法が思いつかなかった。


 しかしそれも失敗に終わる。澄み渡る晴天の空から突如降り出した白い雨によって。


 しかもその白い光は、どういう理屈か1匹も撃ち漏らす事なく、正確に確実に魔物達を撃ち抜いている。自然現象とは言い難いその正確さ。これだけの数を的確に殺していく不自然。当然、逃げたり躱そうと試みる魔物も居るが、その度白い光は軌道修正し急所を貫いていくのだ。


「一体、一体何なのだ……。この理不尽は……」


 為す術もない。あちこちで魔物達の断末魔が耳に入って来るのを聞き、絶叫していた魔族は今度は力なく肩を落とす。


 白い光を止められはしないのか? そう考えてみたものの、遥か上空雲の上から大量に降り注ぐその光の矢を止める術が全く思い当たらない。


 為す術も無く迷いの森全体に降り続く白い光を呆然と眺めるしかない。その圧倒的な暴力を見て、自身の無力さを思い知る魔族。その光景を眺めながら、ふとある事を思い出した。


「こ、この光景は……、星落とし? 我々魔族が人間共に負けた原因となった、あの星落としではないのか? い、いや、違う! かの星落としは岩の塊が出鱈目に空から落ちて来ただけだった。だがこの白い雨は魔物達を正確に狙っている。…と言う事は、これは何者かの所業という事なのか? ……ま、まさか……。まさかまさかこれも……、もしかしてこれも、あの雌が造り出した現象……、なのか?」


 これはもはや神の御業。もしこの現象をあの雌が引き起こしたなら、到底太刀打ち出来ない。魔族はそう思い戦慄する。


「……約30年前の戦いの後、命からがらあのダンジョンに逃げ込み、時間を掛けて魔素と体力を回復し、そして漸くこれだけの魔物を使役したのだ。だがその全てが無駄になっていく……」


 これまでの努力、労力、時間を振り返ると、途端に怒りがどんどん増していく魔族。恨みたっぷりにギロリとファリスの方角を8つの複眼全てで睨む。


「全てはあの雌のせいだ! あいつさえ居なければ! あいつさえ居なければあああああ!!!!」


「あ、居た」


「え?」


 怒りを充満させ叫んでいた魔族の、その背中越しから声が聞こえた。魔族はまさか、と恐る恐る振り返る。するとそこには、その憎っくき黒髪の超絶美女が、空中にふわふわと浮いていた。


 ※※※


 白い光の雨は徐々にその数を減らしていく。それは魔物達が減って来たという意味でもある。


 それから少しすると、その殺戮を限りを尽くした白い雨は降り終えた。すると今度は、迷いの森全体を濃い死臭と血の香りが充満し始める。当然それらは全て、蹂躙された魔物の死骸によるもの。


 漸く終わった一方的なジェノサイド。ミークの脳内に、完了しました。死傷者は0です、というAIの言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろすミーク。とりあえずファリスの町は守る事が出来た事に安堵する。それから空に輝く1つ星を見上げ「お疲れ様」と呟いた後、宙を浮きながら怯えた様子で8つの目でミークを睨んでいる魔族に目を向ける。


「また急に消えたら探すの面倒だから、ドローン1機だけこっち飛ばして監視してたんだよね。ま、さっきからやたら叫んでたし難なく見つけられたけどね」


「……」


 8つの複眼がキラリと日に反射して光る。魔族は呑気な様子で宙に浮いているその人族の雌、ミークに恐怖を感じながら見つめ返す。


 ……いつの間にここに? 全く気付く事が出来なかった。そうだ。確かこやつは魔素を持っておらぬのだった。だから気付く事が出来なかったのか。にしても、この雌は本当に生身の生き物なのか? こうして相対してみると、まるで人工物の、無機質な物体の様に思えるが。


 警戒しながら身構える魔族に対し、ミークは気さくに話し続ける。


「会話するのは初めてだよね。一応奴隷になってた時の記憶あるから、普通に喋れるのは知ってるよ」


 ミークにそう言われ、魔族は警戒を解かないまま返事をする。


「一体どうやって奴隷紋を解除した? いやそれより、……お前は何故、私の居場所を探し当てる事が出来るのだ?」


「解除方法を知ってる魔法使いさんがたまたまファリスに居たからだね。本当助かった。居場所分かったのは普通に魔素辿ったんだけど?」


「奴隷紋はそういう事か。……しかし魔素を辿ったって、お前は魔素を持っておらぬではないか」


「あーまあね。でも分かるんだから仕方なくない?」


「それだとこの世界の理に反する。理屈が通らぬ。本来魔素を持たぬ者が魔素を辿れるなど、あり得ないのだ」


「そんな事言われてもなー」


 まあ私はそもそもこの世界の人間じゃないし? と心の中で思ったりするが、説明が面倒なので口には出さず心の中に留めておいたミーク。


「……ところで先程の白い雨、あれお前がやったのか?」


「そうだけど?」


「……」


 飄々と淡々と答えるミーク。その様子に、魔族はこれまで経験した事の無い、言い様の無い恐怖を感じる。


「お前は……、お前はもしかして……、神なのか?」


「は? んな訳ないでしょ。人だよ人」


 ミークが何言ってんの? って感じで答えると、魔族はそこで、ずっと抑えていたであろう苛立ちを顕にした。


「ただの人が、あんな非常識な事出来るかああああああ!!!」


 叫ぶと同時に魔族は、口からピュッっと緑色の液体をミークに向けて吹きかけた。「うわっ、ばっちぃ!」ミークは慌ててそれを避ける。すると、避けたその先の木の幹に、その緑色の液体が当たりシュワ~と溶けた。


「うわぁあれ酸性の毒か何かっぽいな、 ……ん? また魔素が消えた」


 ミークが避けて振り返ると、魔族の姿が消えていた。だがミークはすかさず紅色の左目で周辺をサーチ。すると、明らかに不自然に、ミークのいる場所から一目散に逃げている1匹の子蜘蛛を発見した。


「あーそういうカラクリか」


 そう言いながらミークは、左人差し指の先から細いビームをピシュン、とその子蜘蛛近くに向けて放つ。びっくりしてひっくり返る子蜘蛛。仰向けになりワシャワシャと8つの足を動かし悶えている。


「蜘蛛に化けて隠れてたんだ。どうやらその姿になると魔素無くなるみたいだね。でも正体分かってたらこうやって発見出来るし、次からは逃げようとしても無駄だと思うよ」


「……」


 観念したのか、子蜘蛛はポン、と魔族の姿に戻った。


「ていうか魔物を蜘蛛に出来るんでしょ? じゃあ人間を蜘蛛にしようとすれば早かったんじゃないの?」


「……魔素を持たぬ生き物は子蜘蛛に出来ぬ。人間はお前の様に魔素を持たぬ者の方が多い。魔素を持つ者を選別するにも手間と時間がかかる。故にダンジョン内の魔物のみ使役したのだ」


「あーそういう縛りがあったのか。てか魔族って強いんでしょ? 何で逃げるの? 私と戦おうとは思わないの?」


「……」


 ミークに挑発しようなどというつもりは毛頭ない。だが、「なんで逃げるの?」と言われた魔族は、自尊心に触わった様で明らかに雰囲気が変わった。


感想等頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ