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ゴールドランク様の挑戦

また書き溜めに入ります。

頑張ります。

 ※※※


「何だか賑やか? ……ん? ギルド前に馬車が停まってる? てか、後ろの馬車また派手だなあ」


 町に戻って来たミークは、大広場前に並んでいる、特に最後尾の豪華な馬車を見て無駄に豪華だなあ、と呆れ半分感心半分の様子で見ながらギルドの扉に歩いて行く。


 そして馬車の列を横目にミークがギルドに入ろうとすると、その豪華な馬車の扉が開き、中から軽装に身を包んだ金髪の美丈夫が現れた。人が現れてちょっと驚いたミークだが、知らない人なのでそのままギルドに入ろうとする。だが一方の金髪はミークを一目見て「おおお……」と、何やら感嘆の呻き声? を上げる。


「な、何ていい女だ……。王女様にも引けを取らない美貌……。珍しい黒髪。それだけじゃねぇ。何か花の香りの様な良い匂いがする」


 その呟きがミークの耳に入ってしまった。うわぁ聞きたくなかった、と心の中で呟きながらも、ミークは素知らぬ顔でギルドに入ろうとする。


 だが、「お、おい! ちょっと待て!」と金髪に呼び止められてしまった。ミークは、はあ、と小さく溜息吐いた後、「何ですか?」と振り返る。


「お、おおお……。顔立ちも整ってる。スタイルも抜群じゃねーか。こんな田舎で絶世の美女を見つけるなんて」


「……何か用ですか?」


 若干イラッとしながらミークが聞くと、「お、おう! 俺はバルバ! 王都からここにやって来た、そろそろプラチナランクに昇格するだろうゴールドランクのバルバ様だ!」


「はあ」


 無関心な反応に、バルバは片眉を上げる。


「おい聞いてたか? ゴールドランクのバルバ様だぞ?」


「……」


 てかこいつ話聞かない、と呆れるミーク。一方でどうだ! と言わんばかりに鼻息荒く胸を張り自己紹介しているバルバ。ゴールドランクが居ないここファリスだからこそ、自身のランクが余程自慢になると思っている様子。


 ……もう行っていいかな? きっと面倒臭い用事だろうし。


 心の底から鬱陶しいと思いながら、自己紹介しかしないバルバとやらをスルーしさっさとギルドに入ってしまおうとミークは思った。


「そうですね。では」


 そう言ってギルドの扉を開け中に入っていくミーク。そしてポツーン、と1人、豪華な馬車の前に取り残されるバルバ。だが直ぐ「お、おい! 待ちやがれ!」と慌ててギルドの中に飛び込んで来た。


「わ! 何ですか? ……って、無礼な金髪じゃない」


「本当だ。ランクだけが自慢のクソ野郎だ」


 突如飛び込んで来たバルバに気付くなり、揃って悪態を吐く赤毛ショートと水色ロングの受付嬢2人。だが彼女達の悪口に気にもせず、バルバはキョロキョロギルド内を見渡す。まだ夕方にもならない時間帯なので、冒険者は誰も居ない。


 なのでネミルが受付しているカウンターに居たミークを直ぐ発見する事が出来たバルバは、ズカズカとミークに歩み寄り腕をガッと掴む。


「おい! 無視すんじゃねぇ!」


 流石にイラッとしたミークは、腕を掴まれたまま一旦バルバをぐっと押してバランスを崩し、足を引っ掛け空中に一瞬フワっと浮かびそのまま床にバーンと叩きつけた。その勢いで掴まれていた腕が離される。


「うがあ! 何しやがる!」


「何しやがるって言いたいのはこっち。急に腕掴んできて失礼が過ぎる」


「あ……。あなたまた揉め事起こしにギルドに来たの?」


 カウンター越しにキッと睨むネミルに、「痛てて……」と腰を擦り立ち上がりながら反論するバルバ。


「違ぇよ! その黒髪の女が俺を無視しやがるから追いかけて来ただけだ!」


「無視? ちゃんと受け答えした筈だけど?」


「いやだからさあ! ゴールドランク様だぞ? 何とも思わないのかよ?」


「寧ろ何をどう思えば良いの?」


 キョトンとしながらミークにそう言われ、バルバは「い、いやだから、ほら、凄い、とか格好良い、とか、色々あんだろ? 言わせんな恥ずかしい!」と顔を真っ赤にしながら怒鳴る。


 バルバが赤面させながら説明するも、ミークは正直ゴールドランクだからといって凄いとも格好良いとも全く思ってない。なので尚更怪訝な顔をする。


 そこでバルバが「そう言えば」と何かに気付く。


「て、てかお前、何でギルドに来てんだ? 討伐依頼か? それとも仕入れ?」


「何でって。私冒険者だし」


「は? 冒険者? お前みたいな華奢な女が? この町には冒険者の魔法使いは居ないって聞いてるぞ?」


「そうだろうね。私魔法使えないし」


 そこでバルバはハッとする。とある事に気が付いた。


「ま、まさかお前……。お前がミーク、か?」


 ※※※


「どうしてこうなった」


 ミークの表情は明らかに不機嫌。正直途轍も無く面倒臭い。ただただそれだけしか無い。


 ミークが今居るのは、以前冒険者登録の際ラルと戦った闘技場。眼の前には鎧に着替え直し剣を携えた金髪の美丈夫が何やら意気込んでいる。


「お前がオルトロスとオーガキング倒したんだって? ヘッ! どうせ弱ってた所を毒か何か使ってたまたま偶然倒せたんだろ? 実力で倒したなんて到底信じられねぇ。だからゴールドランクの俺様がきちんと確認してやる。感謝しろよ」


 慇懃無礼な言い回し。持っていた剣先をビシっとミークに向け「覚悟しろよ?」とニヤリと笑う。それを見てミークも流石にイラッとした。


「鬱陶しい」


「あ? 何だって?」


「鬱陶しいって言ったの。何でわざわざ証明しないといけないの?」


「お前みたいな細っちい華奢な女が、魔法も使わず倒せる代物じゃねーからだよ。そもそも俺等ゴールドランクが、何でこんな辺鄙な田舎に来たのは、ゴールドランク級の冒険者が現れたって言う証拠を探しに来たのも理由の1つだしな」


 バルバの説明を聞いてそうだったのか、と一応は理解するミーク。それでも別に信じて貰わなくても良いと心底思っているので、ミークは本当面倒としか思っていない。


 だがあの偉そうな男は自分の事がお気に召した様子。ここで実力の差を見せつけとかないと、後々付き纏われたり更に面倒な事になるかも知れない。それはもっと嫌なので、バルバが戦えと言ったのを嫌々ながらも受けたのである。


 ミークははあ~、と大きな溜息を吐いた後、「お腹減ったし、降り掛かった火の粉はさっさと払うとするか」と、諦め顔でファイティングポーズを取り、AIに身体能力3倍、と指示した。


 ミークが構えるのを見たバルバは首を傾げ「お前、武器は?」と聞くも「そんなの要らない」と即答するミーク。その答えを聞いたバルバは、こめかみに血管が浮き出て来る。


「ほう……。俺様とやるのに武器は不要、素手で戦うってか? いい女だからって調子に乗るなよ? てかまあ、お前が筋肉ゴリゴリのゴツい巨人かと思いきや、こんな美人だとは到底思ってなかった。それはある意味幸運だった」


「幸運? どういう事?」


「ヘッ! 分からねぇか? 俺が気に入ったって事だ。お前が負けたら俺の女になれよ。良いな? あ、斬られても気にすんな。ポーションでその綺麗な身体ちゃんと治してやるから」


 うわあ心底気持ち悪い。ミークは寒気を感じ身震いしてしまう。だがそれでもミークはバルバに提案を持ちかける。


「じゃああんたが負けたらごめんなさい、って言う事。それで許してあげる。あ、それと本気でかかってきた方が良いよ」


 ミークがそう云うと同時に、「調子に乗るなあ!」とオーガキングに負けじとも劣らぬ、音速の如き素早い初動で一気にミークの眼の前に移動、そしていつの間にか構えていた上段から、音も無く剣を振り下ろす。


「おお?」


 思ったより速い体捌きと攻撃。ミークは少し驚きながらもそれを左半身を下げ躱す。「これを躱すか。だがまだまだ!」バルバがそう言うと直ぐに、またも無音で剣が横薙ぎに来る。それをしゃがんで躱すミーク。剣の残像が見える程の途轍も無いスピード。もう一度上から音無しで剣が振り下ろされるが、ミークはそれを地面を転がって躱した。


「凄い凄い。結構速いじゃん。ちょっと驚いたよ。所作に無駄が無いから音がしないんだね」


 素直に褒めるミーク。舐めた態度の様にも見えるが、バルバはそれよりもミークの変化に驚いた顔をしている。


「……お前、その左目なんだ? さっきまで普通の色だったじゃねーか」


「ああ。ちょっと強いかもって思ったから、本物の目の方に変えた」


 転がって躱した後左目を紅色に変えていたミーク。一方怒りに身を任せ、普段より若干荒い攻撃だったものの、それでも力を入れて斬り掛かったにも関わらず、全ての攻撃が躱され、バルバもミークの身の熟しに驚いていた。


 ……神速と呼ばれた俺の剣がかすりもしなかった。実力は本物みたいだな。女なのに珍しい。獣人でもこの速さは居ないんじゃないか? そして確かにこいつからは魔素を一切感じねぇ。魔法使ってないのにこの動きか。これ程動ける冒険者、男でも中々居ない。


 バルバはミークの実力の一端を知り、怒りの感情が完全に収まり冷静になる。するとつい「フッ」と笑みが溢れる。ミークはその様子に首を傾げる。


「今の攻防で何か面白いとこあった?」


「いやそうじゃねぇ。お前女の癖に相当強いな」


 そりゃどうも、とミークが答えた後、バルバの顔つきが変わる。これまでの人を小馬鹿にした様な雰囲気は鳴りを潜め、目つきが鋭くなりブワっと何かがバルバの背中から溢れ出る。そしてチャキリ、とバルバは剣を両手に持ち右肩上段、切っ先をミークに向け右足をスッと下げ構えた。


 ……何? 今のブワって?


 バルバの面構えが変わり、何か得体の知れない圧? を感じたミークは、警戒しながらグッと拳を強く握る。


 ーーどうやらその圧迫は()()と言われる、相手を殺しにかかる際に感じられ、強者であればある程放つ事が出来る、科学では未だ解明されていない不可思議な現象の様ですーー


 ……成る程殺気か。道理で知らない筈だ。


 AIの説明に納得するミーク。地球に居た頃、ミークが主に戦っていたのはドローンやミサイル等の兵器で、対人間は殆ど無かった。この世界に来てから何度か人とも対戦していたが、この様に自身に感じる程の殺気を受けた事は無い。それはバルバがそれだけの強者だと言う証拠。


 生まれて初めて感じた殺気と言う良く分からない現象。ミークは身震いすると同時に高揚を感じ、ミークも面構えが変わる。


 ミークの雰囲気が変わったのを感じたバルバ。構えた剣を強く握り直す。


「本気で行くぞ」


 バルバがそう呟いたと同時に、先程よりもっと速い、当に光の如き段違いのスピードでバルバの剣がミークを袈裟斬りに斬りつける。だがミークもそれを上手く半身にして躱す。その後も上下左右、縦横無尽に斬りつけられる。その速さと威力のせいで2人の周りだけ地面の砂が舞い上がる。途轍も無い剣戟。しかもずっと無音で初動が分からない。当に達人の域とも言えるバルバの剣。


 だが、本気で斬りかかっているにも関わらず、ミークには一切当たらない。かすりもしない。


「クッ」


 一旦バックステップでミークから距離を取るバルバ。連続攻撃を仕掛けた事でやや息が上がっている。こめかみから顎に伝う汗。ポタリポタリと地面に落ちる。一方のミークは汗1つかかず涼しい顔。


「何だお前……。どうして俺の本気の剣が当たらねぇ?」


「いや思ってたより凄いよ。結構ギリギリ躱してる」


 まあそれでも身体能力3倍だけどね、と心の中で呟くも、確かにギルド長のラルよりは圧倒的に強いと思っているミーク。もしかしたら単体ならオーガキングといい勝負かも? とも思っていたりする。一方のバルバは滴る汗もそのままに再度剣を構える。


「成る程。オルトロスやオーガキングを倒したってのはどうやら本当らしい」


「そりゃ嘘吐いても仕方無いし」


 未だ余裕の態度のミークにバルバはギリっと奥歯を噛む。だが直ぐその表情は真顔となり、静かに深呼吸をする。そしてスッ、と静かに両手に持った剣を上段に構える。


「……闘技場ぶっ壊すかも知れねぇが、弁償はしてやる」


「ふむ」


 何やら大技が来る様だ。ミークはやや緊張した面持ちで構える。


「これは俺がいつかドラゴンを倒そうと思って鍛えていた、一撃必殺の技だ」


 バルバがそう言うと、上段に構えていた剣全体が白く発光し始めた。彼自慢のミスリルの、白銀に輝く剣に魔素を行き渡らせたのだ。バルバは剣を扱う冒険者でありながら、魔法使い程では無いものの魔素を保有している。それを攻撃に転じる事が出来る事もあって、バルバはゴールドランクになり得たのである。


「おおー、何か格好良い」


「……その呑気な様子もこの一撃見たら変わるだろうよ」


 バルバはスゥー、と大きく息を吸い。カッと目を見開いたかと思うと、「はあ!」と渾身の一撃をミーク目掛けて振るった。


 ミークと10m程度距離があるのに、その振るった剣一閃、ソニックブームが白い光と共にミークに襲いかかる。それはこれまで以上に速いスピード。当に光の如き閃光。


 刹那、ドドーン、と大きな音が響き渡り、ミークに激突。振るった衝撃の跡そのままに、地表は地割れが起こった。ミークが居た辺りに土煙が舞う。


「チッ。殺しちまかったか……。ついムキになっちまった」


 見惚れる程の美貌。珍しく美しい黒髪。片方の目が紅色ってのも何処か色っぽさを秘め妖艶に見える。これまで出会った事ない絶世の美女。


 絶対モノにしてやる、と意気込んだのが悪かった。そして、ゴールドランクの自分を歯牙にも掛けないその不遜な態度。プライドの高いバルバにはそれが許せなかった。だからつい本気で大技を放ってしまった。


「弱いのが悪いんだ」


 つい殺してしまった、そう後悔をしながら、溜息混じりにミークの亡骸を確認しようと土煙が晴れるのを待つ。


 だが、


「……は?」


 晴れたその先には、その黒髪の超絶美女が、左腕を翳したまま佇んでいる。その強烈な一撃を難なく防いでいたのだ。


「まあまあ凄い攻撃だったね。成る程これ位の威力ならドラゴン倒せるんだ」


 ポカーンと顎が外れるのではないかと言う位、口を大きくあんぐり開け、呆気に取られるバルバ。


「い、いやいやいやいやちょっと待てええええ!! お、お前……、さっきの攻撃、まさか止めたの?」


 質問するバルバにミークは「うん、まあ」と頷く。


「は、はあああああ??? あり得ねぇ! そんな馬鹿なあああ!!!」


「声デカい煩い。でもこうやって実際止めたでしょ」


 ミークが煩そうに耳を塞ぎながらそう言うと、バルバは「クッ!」と再度上段に剣を構える。


「もう一度だ! もう一度やってやる!」


 ムキになったバルバが先程の大技を出そうとする。だが、すかさずミークがバルバの直ぐ側に移動し、左腕だけで剣をガシっと掴む。


「それ以上やると剣が持たないんじゃない?」


「な! ク、クソ! は、離れねぇ!」


 バルバは両腕。一方のミークは左片手だけで剣を掴んでいるのに、全く動かせない。そこでミークがぱっと離すと「うおわっ!」と声を上げながら、バルバは後ろにバランスを崩し転けそうになった。


 その一瞬、首の後ろに強烈な痛みを感じたバルバは、そのまま意識を失った。


感想等頂けたら幸いです。

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