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迷いの森は宝物が結構あった

もう少しだけ更新できそうです。

※※※


「「……」」


 ラルの話を一通り聞いたラミーとバルバは、共に神妙な顔のまま無言でギルドの外に出た。そして次の目的地、町長宅へ向かって歩いている。因みに馬車は荷物を載せている事もあり警備隊員にそのまま預かって貰い、そして商人イグリスは中で詳細な査定と商談があるとの事でギルドに残った。


 歩きながらバルバは神妙な顔つきでラミーに話しかける。


「確か俺達、一度だけオーガキングと戦った事があったよな?」


「ええ。その時は私達以外に2人ゴールドランクが居たわよね。そしてその時はオーガキング1体だけだった」


「で、結果どうなったか、勿論覚えているよな?」


「ええ。……ポーションが切れてしまい、しかも魔法を連発した私は魔素も切れてしまった。私という後方支援が無くなりパーティは万事休す。でも私達、オーガキングを瀕死の状態にまで追い込めていたのよね。でもそれ以上、お互い戦える状態じゃなかったから、命からがら逃げ帰ってきた。オーガキングを倒し切る事が出来ずにね」


「その通りだ。で、その後プラチナランクが1人で倒しに行ったんだよな。だがそいつが当時言ってたのは、俺等の報告を受けた後直ぐに討伐に行ったので、オーガキングも満身創痍だったから簡単に倒せた、と。その時魔石を持って帰って来たから、俺はオーガキングの魔石を見た事があった」


「そうだったわね」


「そんなオーガキングを、そのミークって奴はたった1人で、しかもオーガ2体引き連れてた状態で全部倒した、と」


「しかもそのミークって……」


「魔法も使えない、女、だと? ……そんな与太話信じれられるかよ!」


 急に町中で大声を上げるバルバに、ラミーは一瞬驚くもそのまま話を続ける。


「それと魔族の話だけど、それもそのミークって女が見つけたそうじゃない?」


「見た目と魔素量からして間違いないって言ってたらしいがな。てか魔素持ってないのにどうやって魔素量判ったんだ? 色々おかしな話だらけだ」


「じゃあラルも受付嬢も、皆嘘を吐いているって言うのかしら?」


 ラミーの反論に、バルバは何とも言えない表情になる。


「しかもその女、オルトロスまで倒したって言うじゃねぇか。たった1人で」


「何なの? そのミークって女。こんな辺境の地ファリスにたった1人でやって来たって言うじゃない。ここで生まれ育ったんじゃないのなら、私が知らないのも無理はないわよ。……ああ、もしかして、何らかの事情でずっと森の中で1人で暮らしてて男みたいになったとか? で、女なのに筋肉もりもりな巨人、とかじゃない?」


「そうかもな。当にオーガみたいなゴリゴリのごっつい体してんだろ。そうじゃなきゃ色々説明がつかねぇ」


「町長がわざわざ与太話を王都に報告する訳ないし……。約30年前の魔族との大戦争以来、王都は魔族出没について凄く警戒しているから、今回の件も連絡を受けて調査するって事になって私達が派遣されたけれど。もしこれが嘘なら町長が王の命令で処刑させられるわよ?」


「とりあえず、そのミークって女を調べないとな」


 バルバの言葉に同意の意味を込め、ラミーは大きく頷いた。


 ※※※


 ーー解体が終了しましたーー


 頭の中に響く声に、ミークは「ん、分かったー」と間延びした返事をしながら寝起きの虚ろな表情で上体を起こす。そしてんー、と既に身体に戻っている左腕と共に、両腕を大きく伸ばして立ち上がった。


「ふわあ~。今何時位?」


 ーー地球時間で表現すると14時8分頃ですーー


 AIの返答に了解、と返事した後、眼の前の、2mはある高く積まれた塊を見上げる。それは一角猪の肉塊。更にその横には、高さ1m程の、綺麗に畳んで積んである毛皮。そして直ぐ横に立派な一本角と魔石が地面に並べられている。


 ミークはそれを見て「結構な量だなー」と呟いた後、腰につけたポシェットを少し大きく開く。すると、その小さなポシェットに、巨大な素材達がポンポン中に吸い込まれていった。


「これ本当便利だよね。異空間収納って言うらしいけど。ジャミーさんおっかないけどこれ作ってくれた事は心底感謝だ」


 約1ヶ月程前、オルトロスの魔石を魔石屋にて、ニヤリとしながら()()が作れると呟いたジャミー。そして出来上がったのがこの、異空間収納と言う、内容量を大幅に拡張する魔道具だった。普段ミークが使っているポシェットにその機能を付け加えた方が良いだろうと、先日異空間収納の魔法をこのポシェットにジャミーが組み込んだのである。そのお陰で横15cm縦8cm、と、とても小さなポシェットなのに、その内容量は体育館並となったのである。


 本来、オルトロス級の強力な魔物の魔石は、町全体を囲む程の巨大な結界や、山を消し飛ばす程の超強力攻撃魔法等、その魔石が保有する膨大な魔素を用い巨大な魔道具に変えるのが通例なのだが、その所有権はオルトロスを1人で倒したミークにある上、今回危機的状況だったファリスを防衛した事もあり、ミークの為だけに魔石を加工する事を許された、という訳である。


 とにかくミークは、この世界の魔法技術のお陰で、冒険者家業がかなり楽になった。それに感謝しながら一角猪の素材全てを小さなポシェットに仕舞った後、ミークはニコニコ顔でそのポシエットをポンポンと叩いた。


「しかもこの中って時間が止ってるらしいから、料理とか入れてもずっと傷まないんだよね。本当魔法って凄い」


 科学でも数十年鮮度を一定に保ったまま食材を保管する技術はある。チルドと無空気状態の両方の技術を使うのだ。しかしその為には当然機械と設備が必要となる。だがこんな風に事前準備も何もせず、適当にポイポイ放り込むだけで保存するのは流石に科学技術を持ってしても不可能。しかもこんな小さな入れ物に大きな物を入れる事が出来、更に中の時間が止まっている、という科学技術は存在しない。


 地球では、人類がずっと追い求めていた時間を止めると言う技術は、結局ミークの生きていた時代まででも確立出来なかった。なのにこの世界にはそれがある。もしかしたら時間を逆行出来る魔法も存在するかも知れない。


 そして今後冒険者家業を続けるにあたり、このポシェットはずっと重宝するだろう。ミークは改めて魔法の凄さを実感したのだった。


「でもこれって物凄く貴重な物だから、余り人に知られない様に、とも釘刺されたんだよね」


 だから実はギルド長であるラルにも伝えていない。もしかしたらジャミーから報告がいっているかも知れないが。だが友達であるネミルには打ち明けていたりする。


「解析してみたけど、魔法陣が複雑に組み込まれてるって事と、やっぱり魔素を持った人でないと魔道具を造る事は不可能だって事が分かったんだよね。そうそう、ポーションも結局私じゃ作れないんだよな」


 ポーションやこのポシェットをAIに徹底的に解析して貰った結果そう結論が出た。要する魔素を一切持たないミークには、魔道具を造る事は不可能だという事。もしかしたら膨大な魔素を持っている魔法使いを解析すれば、何かしらヒントが得られるかも知れないが。


「でも私、ジャミーさん苦手なんだよな……。あ、そうだ。シャンプーと石鹸の素材も持って帰ろう。それとスパイスだ。ネミルのお父さんに頼まれてたんだよね」


 オーガキング達を倒した当時、迷いの森をサーチしながら空を飛んで帰っている最中、なんと地球に過去存在していた、オレガノやハーブ、そして胡椒等スパイスにとても近い植物が群生しているのを発見したのだ。その上パームヤシや椿に似た品種まで。


 それらを見つけミークは心躍った。より一層ここでの生活が潤うと思ったからだ。


 ミークはAIのお陰で新陳代謝を意識的に活性化出来る。その為身体表面に付いた汚れや垢を、上皮のみ代謝し綺麗にする事が可能で、何日も身体を洗わなくても体臭や汚れは都度取り切る事が出来る。なので地球での最後の日までも、ミークの身体は綺麗に保たれていた。だからこの世界に来て今も行っている湯浴みは必要無いのだが、お湯で身体を拭く行為は心が癒やされるので止める気は無いミーク。


 そしてそれは髪も同じなのだが、新陳代謝を操作し髪の汚れを取ろうとすると、頭皮だけならまだしも髪全体となると、一度全ての髪の毛を抜け落とさないといけない。直ぐ生やせるのだが気持ち的によろしく無い。だからシャンプーの素材となる植物の発見した時、ミークは心の底から喜んだ。


 また、ここの食事は確かにミークが地球で生活していた頃より美味しいのだが、味付けがとても淡白だった。良く言えば素材を活かした料理とも言えるが物足りないとも感じていたミーク。だからスパイスの発見も、より一層美味しい食事にありつけると、ネミルの父親にそれを使用して貰っていた。


 当然ながら味のインパクトが格段に向上しネミルの両親から大絶賛され、今ではミークが森に来る度必ず持ち帰る様になった。そして現在ではネミルの宿屋の食事はファリスで一番の美味さだと、時には行列が出来る程の人気になっている。


 因みにこれらの素材は、これまで何度もミーク以外の冒険者からギルドに持ち込まれていたりする。だがそれは薬草の採集依頼時、ギルド職員もスパイスという概念が皆無な為、単に間違えられて持ち込まれたただの野草として処分されてきたのだ。なのでミークはギルドに持ち込む事をせず、ネミルの宿屋に無償で直接渡していた。


 ミークが既に紅色に戻している左目で森の中をサーチし始めると、直ぐ様それぞれの素材を発見した。


「AIのお陰でシャンプーの調合上手くいったんだよね。ネミルが私の髪の香りを嗅いで目を丸くして、めっちゃ質問されたんだよね」


 流石に匂いは誤魔化せない。ミークの美しい黒髪からフワリと漂う花の香りに、ネミルが気付かない訳は無かった。当然根掘り葉掘り聞かれたので教えたら、絶対欲しいと懇願されたので、今回はネミルや母親、ギルドの受付嬢達の分まで造るつもりだ。


 左腕を切り離し採取に向かわせる。数分もすると左腕がサーチした野草を腕一杯抱えて戻って来た。しめしめ、とミークはそれらを異空間収納ポシェットに直した。


「さて。戻って一角猪の肉早速調理して貰おうっと」


 行儀悪くジュルリと口から音を立て踵を返し戻ろうとすると、AIから脳内で声をかけられる。


 ーーところで報告があります。一角猪を解体中の休息の間、町の中に膨大な魔素を持った人間が入って行きましたーー


「え?」


 ミークは驚いて声を上げ、歩き出そうとした足が止まる。緊張しながら確認をする。


「それって……、もしかして魔族?」


 ーーいえ、骨格や細胞、体型等から判断するに人族の可能性99.999%。魔石屋のジャミーと同様、魔法使いと思われます。但しジャミーよりも保有する魔素量は多いですーー


「……そうなんだ」


 ……魔法使いがやって来たのか。こんな辺鄙な町に何の用だろ? ジャミーさんも魔法使いらしいけど、思ってたのと違った。どんな人なのか気になるな。


 とりあえず町に何かしら被害が起こる様で無い事に安堵しながら、お腹も減っているので急ぎ戻る事した。

感想等頂けたら幸いです。

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