どうやらまたも新たな脅威
もう一話投稿します。
……書き溜めが中々進まない。
※※※
「……ま、望仁は私より弱かったけどね」
カイトとリケルの会話が聞こえていたかどうか定かでは無いが、これから言い寄って来る異性に対して’自分より強い人しか興味ない’と言うワードについて、ふと誰にともなく言い訳するミーク。
今はスイー、と滑る様に仰向けで迷いの森の上を飛んでいる。今日も晴天。左目によると気温は20℃との事。そして青空の中に時折流れていく白い雲。ピュロロー、と聞いた事の無い鳥の鳴き声。どれも心地良さを感じるには最高の状況。
別に恋愛対象に強さは求めていない。ただこの世界に来て、思った以上に異性からお誘いされたり容姿を褒められたりして、正直凄く面倒なので仕方無く、自分より強い人しか興味ない、と言っているだけである。
「そこで望仁出てくるなんてね。やっぱり私……」
いくら求めても彼は既にこの世に居ない。それは勿論判っている。でもまだ地球にて2人ドローンの一斉掃射で殺されてからまだ3日程度。この世界に来てから色々あり過ぎて忘れそうにもなるが、それでも2人過ごした日々は、直ぐ昨日の事の様に思い出せる。
「神様の馬鹿。私もそのまま一緒に死なせてくれれば良かったのに」
……望仁のいない世界なんて楽しいって思えるのかな? 地球はあんなだったけど、それでも2人でいる時はそれなりに楽しかった。きっとお互い気が合ったんだね。地下施設には大した娯楽も無かったけど、それでも、望仁と過ごした日々は私にとって凄く大事な思い出で、そして……
「楽しかった、なあ……。会いたいなあ……」
ーーエマージェンシー。岩肌に接近していますーー
「え?」
突如AIが緊急事態を伝える。慌てて正面を見るともう直ぐそこに岩肌が立ちはだかっていた。「しまった」そう思った時にはもう遅い。ズガーン、と大きな音を立てて岩肌に激突してしまった。但し咄嗟に左腕が前に出だして身体を守ってぶつかったので、ミーク自体全くの無傷だったが。
「あっぶな~。あーやらかしたー」
パラパラと小石と砂埃がミークの頭上に落ちてくる。ケホケホと咳をしそれらを払いながら「はあ」と1つ溜息を吐いて、自分の作った岩肌の窪みから一旦スイーと離れその場でホバリング。
「つか、ぶつかる前に回避出来たでしょ?」
ーー出来ましたが大したダメージは無いと判断しましたので、そのまま衝突する方を選択しました。どうやら物思いに耽っていた様子だったのでーー
「……あっそ」
AIに気遣いされた。その判断に少し恥ずかしさを感じてしまう。しかし衝突の際砂埃を被ったお陰で服とか汚れてしまった。それに少し期限が悪くなり、「むー、もう全く!」とほっぺを膨らますミーク。そして「ふう」と一息吐いて落ち着きを取り戻してから辺りを見回すと、ミークは「あ」と、気付いた。
「ここってもしかして盗賊達の塒かな?」
丁度ミークがホバリングしている真下に、目的地である盗賊達の塒らしき洞穴があった。
ま、その方向に飛んでたから当然か、と思いつつ、空中移動で塒の入り口に向かって入り着地する。
「迷いの森の調査もしたかったけど、とりあえず先に依頼片付けるか」
ネミルから承った依頼の内容は、盗賊達の塒内を調査している筈の3人の安否確認。他にも盗賊達が溜め込んでいるであろう財宝の窃盗をしていないか、調べて欲しいという内容。
念の為身体能力3倍をAIに指示した後、既に紅色にしている左目で洞窟内をサーチする。
「サーモグラフィ……、反応なし、か」
確か3人がここを捜索していたのは昨日の夕方近く。既に半日以上経っているので一晩何処かで明かしている筈。町に戻っているならギルドに寄って報告しているだろうが、それなら捜索依頼等出る筈が無い。そしてここは森から20mは高い場所。わざわざ森に降りるより、ここで一晩明かす方が安全だろう。
「じゃあここで寝泊まりして早朝どっかに移動したのかな?」
入れ違いになったのかも? とりあえず奥に進んでみよう、とミークは灯りの無い薄暗い塒の入り口から少し中に入り、左手を上に向け、野球のボール大の白く光るエネルギー球を生成する。瞬時にパア、とミーク中心に明るくなった。
途端、地面に散らかっている何かの食残しや残飯、適当に捨てられたゴミ等が目に入る。そしてムワッと蒸した様な、汗臭い酸えた臭いと生ゴミの臭いの混ざった悪臭がミークの鼻を襲う。つい「うげっ!」と叫びながらミークは鼻を右腕で覆う。
「臭いなあもう! 男だけで生活してたから? でも多少は片付けようよ」
ていうか、いくら安全でもこの臭いの中一晩過ごすのは躊躇ったのかも知れない、と、3人についてそう考えつつ、ミークはAIに鼻の嗅覚機能を抑える様脳内で指示した。
ーー了解。鼻腔内嗅覚機能のみ抑制しましたーー
AIの返答に安堵し臭いを感じなくなった事を確認したミークは中へ歩みを進める。思ったより広く所々扉がついている。その先はきっと各々部屋になっているのであろう。
「へえ~。塒をこんな風に改良して棲家にしてたんだ」
感心しながらあちこちキョロキョロ観察しつつ最奥に辿り着く。ギイィ、と音を軋ませ扉を開けると、中はそこそこ広く天井も高い部屋で、奥に木製の簡易ベッドと椅子があった。
「どうやらリーダーの部屋っぽい? ん? これ財宝かな? 手付かずっぽいな」
椅子の右横、そこには無造作に金銀財宝が積まれてあった。中には武器や防具まで置いてある。ミークは左目をカメラモードに変更、それらをカシャカシャ、と撮影した。
「これ見せれば証拠になるしね」
それから再度洞窟内をサーチしてみる。やはりサーモグラフィによる感知は一切無い。一応各部屋の扉を開き調べてみるも、特段3人の行方について目ぼしい物は見つからなかった。
「ふむ。仕方ない。出るか」
洞窟内には居ないのは明らか。なら今は森の中に居るのだろう。そう思ってミークは嗅覚機能を元に戻す様AIに指示し、入り口からフワリと浮き空中に出た。
そこで突如、AIがミークに声掛ける。
ーー地表より攻撃。矢の様ですーー
「え?」
ミークが反応すると同時に地表からヒュンヒュンと矢が2本飛んできた。驚きながらもそれを左右に難なく回避。早速紅色の左目で約20m先の攻撃があった地点を見てみる。
「え? 魔物が弓持ってる?」
下には2匹の人形の魔物が、こちら上空を睨み付ける様に見上げている。そういやここに来た当日も弓持ってたゴブリンなる魔物がいたっけ? と思い出していると、次はピピ、とミークの脳内に、別の何かしらの反応が示された。
ーー次は上空より襲来ーー
「上?」
見上げる間も無く、急にミークが浮遊している辺りが何かの影で暗くなり、「ウラアアア!!!」と言う雄叫びと共に何かが剣で斬りつけてきた。
「おっと」
それをスッと移動し避けると、剣で襲ってきた何かはそのまま地表にドスン、と着地、今度は「アイスニードル」と聞こえたかと思うと、数十本の氷の矢が地表に落ちた何かから、ミークに目掛けて飛んできた。
「おお? 魔法の攻撃?」
驚きと感心が入り混じりながらミークはそれを空中で難なく避ける。それと同時に先に下に居た魔物がまたも弓矢で攻撃を仕掛けてきた。
「当たりはしないけど鬱陶しいな。あれ、何か判る?」
ーーオーガ2匹とオーガキング1匹の様ですーー
ほほう、とミークはAIの回答を聞きながら、魔石屋でスキャンした魔物の情報をデータベースから引っ張り出す。
……ふむふむ? オーガはブロンズランクでも討伐可能な鬼みたいな見た目で、知能は低く力が強いだけの魔物。でもオーガキングはゴールドランクレベルが討伐可能な魔物で、知能が高く魔法が使える、と。更にオーガを従える事が出来て、仕えたオーガは知能と能力が上昇するのか。で、どちらも武器を扱える、と。
「成る程。だから弓矢が使えるし、ここ約20mの真上に矢を放っても届くんだ。そういやギルドで注意喚起してた魔物ってコイツかな? 何にせよ強い部類の魔物だよね? じゃあ倒した方が良いね」
最後のアイスニードルをスッと避けたミークは、その3匹の眼の前にスッと降り立った。
感想等頂ければ幸いです。




