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魔族を泣かせてしまった

ちょっと短めですが……。

引き続き更新してまいりますー

 ※※※


「AI。あの魔族と一緒に消えたドローンの行方を追って」


 ーー了解。衛星から信号を送ります…………。この上空地点から半径1000kmを捜索しましたが見つかりません。衛星の高度を更に上げ、星周辺を高速移動させながら100000kmに拡大し捜索します………………。発見しました。ここから西77869.0932km、南56039.4864km地点。この星の半球の裏側ですので、その場所は現在日中の模様。あの女魔族の近くでドローンは無事ホバリング状態で待機しています…………、近辺に生物反応はありませんーー


 AIの報告に「ええ~! めっちゃ遠くまで移動してんじゃん!」と驚くミーク。


「転移魔法って凄いね。そんな遠くまで一瞬で移動出来るなんて。でも魔法陣に気付いて即ドローン1機付いて行かせる事が出来て良かった。また逃げられるとこだった」


 ミークの言った通り、女魔族の足元に魔法陣が見えたところで、ミークは慌てて羽虫の大きさのドローン1機を女魔族の肌にピタ、とくっつけたのである。するとミークの目論見通り、ドローンも女魔族と共に消え失せた。同様に転移したのである。


 それからドローンの映し出す映像が衛星に転送され、更にそれがミークの脳内に転送され映し出されると、ミークは「ふーむ」と唸る。


「……生き物どころか植物も無さそうなとこだね。周辺に人が住んでる村とかも無さそう。何であの魔族あんなとこに移動したんだろ? とにかくドローン通じて通信してみよっか」


 ミークの言葉にAIが脳内で了解、と答えた。


 ※※※


「!」


 突如空虚から聞こえたあの忌々しい女の声。焦りと同時にドッと汗が溢れる女魔族。警戒しながら慌ててキョロキョロと辺りを見渡す。周辺は荒野というに等しい開けた大地。よって視界は良好なのだが人も動物も何も生き物の姿は見当たらない。


 幻聴か? 女魔族は慎重にゆっくりと、緊張感の面持ちでもたれ掛かっていた枯れた大木を頼りに立ち上がる。


『もしもーし? 聞こえてるー?』


 またも聴こえたあの化け物の声。これは確実に幻聴ではない。


「ど、何処だ!」


 一緒に転移した? いやそれは絶対にあり得ない。この転移の魔法を使ったとき、1人分の転移が可能な魔素しか残っていなかった。よってあの女共々転移出来る筈も無いのだ。


 だが聞こえたのは間違いなくあの女の声だ。これは一体どういう事だ? まさかあの女も転移した? 女魔族は混乱で気が狂いそうになるのを必死に堪え、努めて冷静になろうと試みながら、枯れ大木に身を任せながらもキョロキョロ見渡す。だがやはり、声の主は見当たらない。


 いい加減見えない苛立ちに耐えられなくなった女魔族は、大声で叫ぶ。


「何処だあああああ!!!! 隠れてないで出てこいいいい!!!!」


 遠くの岩山に木霊する雄叫び。しかしその余韻が消えると同時にシーンとなる辺り一帯。だが直ぐ、あの化け物の声が近くで聞こえてくる。


『びっくりしたー。そんな大声出さなくても。でも星の裏側だけどちゃんと通信出来てるみたいで良かった』


「つ、通信? だと? 星の裏側? ……ど、何処だ! 何処に居るのだ!?」


『心配しなくても私はそこに居ないから。まあでも攻撃は出来るんだけどね』


「は?」


 ……ここに居ない、だと? しかも攻撃が出来る?


 女魔族は意味が分からず戸惑いながら、再度晴天の上空にてキラリと何やら星が光ったのに気付くと、次の瞬間、ピカッ、とその星が一段光輝いた数秒後、直ぐ様自身の近くの地面にピカ、とまるで稲光が様な閃光が瞬間見えた後、ドーン、と大音響と共にぽっかり大穴が開いた。


「……へっ? え、ええ……?」


 驚きの余り、女魔族はその場でヘナヘナと力無くへたり込んでしまった。


「も、もう……、許してくれ。いっそ、殺してくれ……」


 ずっと勇猛果敢だった女魔族はとうとう弱弱しく呟いたかと思うと、それから小さく「ウッ……、ウウッ……」と嗚咽し始めた。ミークは『困ったなあ……』と困惑した声で呟く。


『あんたは沢山の人達を苦しめ、しかも大勢を死なせた原因じゃん? でもそんな様子じゃまるで私が悪者みたいじゃん』


「……」


 返事もせず女魔族が地面に座り込んだまま嗚咽し下を向いていると、突如『え?』とミークの疑問の言葉が聞こえた。


『え~マジで? ……そうかあうーむ……。でもしゃーないか。まあでも座標は記憶したし』


 続けざまそんなミークの独り言が聞こえ、女魔族が「?」と顔を上げると、


『そっちにずっとドローン置いとく事出来ないみたい。ここまで帰って来る燃費考えたら充電無くなっちゃうみたいだからね。なので会話はここまで。まあまたいつかそっち行くかも』


 ミークの声がそう聞こえた後、女魔族の近くに居た羽虫程度のドローンは、女魔族に気付かれる事もなく、ヒュン、と一瞬上空に浮いたかと思うと、ビュン、と主の元に向かって飛んで行った。


 そして、青空の遥か上空に光っていた1つ星もいつの間にか見えなくなっていた。


 女魔族は地面に座り込んだままキョトン、と、静寂を取り戻した荒野を不思議そうに見つめる。


「……助かった、のか? ……一体、何だったのだ?」



感想等頂けたら幸いです。

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