続き15
俺がそこからベランダ伝いで隣りの部屋に乗り込む。
蛇は臭覚で獲物を追う。
舌をペロペロと出すのは匂いの粒子をあれで探っているのだ。
「奴は中西君の匂いを辿って、ここに来るはずだ」
俺がベランダを渡るのを嫌がっている、中西君にそう話した。
「え? 」
「残念ながら俺達の匂いは追えないはず。なら中西君の匂いを追うはず。歩いた場所を追ってくるはずだからな」
俺がそう話した途端に凄まじい生存本能か中西君が凄いスピードで俺達の方に来た。
「これで、どうするんです? 」
「量は少ないが、このガスボンベのガスを全開で部屋に流し込む。そして奴が乗り込んだ時に、これだ」
そう、俺が火炎瓶を作り出した。
アルコールは消毒用の奴を見つけた。
ついでに、燃えそうなものは片っ端から<おやっさん>の野崎君がちょこちょこ窓を少し開けては放り込んだ。
スプレーなんかも火の元厳禁の奴は片っ端から放り込んでいた。
「いやいや、ちょっと待って? まさか、このビルごと? 」
「いや、心配無い、この部屋ごと頭のあたりを吹っ飛ばすだけだ。奴はマンションに巻きつくように入り込んでいる。この部屋を爆発させたら、逃げれまい」
「いやいや、マンションが燃えるし、資産価値がぁぁ! 」
中西君が叫ぶ。
だが、これは正義の為なのだ。
何より三鈴さんの為に俺は戦わなければならない。
「許せ」
「駄目です」
何と中西君が俺の火炎瓶用の瓶を取り上げた。
「なぜだぁ? 」
「まだ、逃げ遅れてる人も居るはず」
「いないけど? 」
中西君の言葉に即座にヤタガラスさんが答えた。
「ふふふ、すでに確認済みですよ」
<おやっさん>の野崎君が笑った。
「部屋にレア物とかプレミアム物があるから駄目です! 」
強い口調で中西君が拒否したが、<三本首>が追っかけてきて、俺達のいるマンションのベランダに乗り込んでこようとしたら、自分で火をつけて投げた。
人間は命が大切だ。
現実の凄さだ。
「ああああああああああああああ! 」
中西君が自分でやっといて泣き叫ぶくらいの爆発と爆煙が上がった。