続き10
「パソコンがぁぁぁぁぁぁぁ! 」
「大丈夫。データは残ってますよ。ノートパソコンで無かったのが良かったですね」
「今時、ディスクトップパソコンとかどうかと思ったけど良かったな」
俺と<おやっさん>の野崎君がそう微笑んだ。
「ふざけんなやぁぁぁ! 」
「いやいや、ふざけてませんよ。やはり、大事なエッチなホルダーは残っているわけですし」
「そんな使い方の話はしてなぃぃ! 」
俺の言葉に中西君が絶叫した。
「長い間収集してたんだろ。分かるよ。だから、そこの部分は死守したと言ってるじゃないか」
「そんな話はしてないって言うのっ! 」
<おやっさん>の野崎君の話でさらに中西君が激昂した。
「いやいや隠さなくても、最近知った話なんだが、あの宮沢賢治のエピソード<ある朝、旅装をした賢治に会った。顔が紅潮して溌剌としていた。聞くと牧場に行ってきたという。昨日の夕方出かけて、一晩中歩いて今朝帰ってきたそうだ。その時に賢治は「性欲の苦しみは並大抵ではありません」と言って立ち去ったという>……これですよ! 」
「それがどうしたぁぁぁ! 」
中西君がさらにさらに激昂した。
「あ、あの雨にも負けずの聖人の宮沢賢治さんがっ! 」
<おやっさん>の野崎君が衝撃を受けた。
「その通りです。あれほどの人でも性欲の苦しみは並大抵では無いんですよ」
「いやいや、そんな話して無いでしょうがっ! パソコンのモニターはどうすんのよっ! 」
「まあ、それは安心してください。私、これでもかなり貯金がありますから。お支払いしましょう」
俺がそう言って中西君を宥めた。
「最新型を土御門家に買ってもらえばいいじゃないですか」
そう<おやっさん>の野崎君が話す。
「え? 土御門家? 」
地元の大金持ちの名前を出されて中西君がぱっと明るくなる。
「加茂さんは土御門家へ婿入りする訳ですから」
その<おやっさん>の野崎君の話で中西君の顔が満面の笑顔に変わった。
困ったもんである。




