3部 <市松人形 <三本首>死闘編 >始まり
俺達は森の中を抜けて、街に降りた。
夜明けの街はもう起きている人も居て、あちこちでなぜか悲鳴が上がった。
俺達を見て半狂乱になっている人もいた。
天気が震災の後なのに小雨が降る状態で寒さから皆の心が荒んでいるのが分かった。
そんな中で流石に俺が人形の身体でも、衣装も何も着てないのは恥ずかしく思って、そのあたりのボロ切れを巻いて走った。
「まるで焼き出された市松人形って感じですね」
<おやっさん>の野崎君が苦笑した。
「仕方あるまい。丸出しは流石に恥知らずと言うものだし」
俺がそう答えた。
まあ、薄暗いので、それほど目立たないと言えば目立たないはず。
何しろ大地震のせいで、電気も何もかも止まっていた。
小雨もあるので、余計に雰囲気は暗かった。
「で、その非合法な彼はどこにいるのだ? 」
「もう少し先のマンションです。で、一つ聞きたいのですが、その両手は真っ黒に焦げてますが、別に痛く無いのですね? 」
「ああ、痛覚は無いようだ」
「なら、改造出来そうですね」
「何? この身体を改造するのか? 」
「はい。戦うためには仕方ないでしょう」
「おおっ! さらに熱い展開じゃないかっ! 」
「ふふふ、喜んでいただけるとは、嬉しいですね」
その後に<おやっさん>の野崎君とトテトテと古い六階建てくらいのマンションを上がっていく。
その目当ての部屋のドアは空いていた。
「不用心だな」
「いろいろ物があるので片付けてるんだと思いますよ」
確かに奥の方でバタバタしている音がした。
「おうい! 中西っ! 」
<おやっさん>の野崎君が中に入って声をかける。
中に結構太った大柄な眼鏡をかけた男が居た。
「は? 」
<おやっさん>の野崎君が声をかけたら、中西君は固まっていた。
「すいません。初めまして」
俺がそうぺこりと頭を下げた。
「ぎゃあああああああああああああああっ! 」
中西君が俺を見て絶叫した。




