続き11
ここで逃げるのは簡単かもしれない。
でも、そうしたら、俺は三鈴さんに会わせる顔が無い。
やっと、彼女を守れるような身体になったのに、それが以前と同じようにただ三鈴さんが戦っているのを見てるだけの人生とかには戻りたくない。
「戦おう」
俺がそう心に決めた。
背中の包丁を手に持つと、それで<三本首>に突撃した。
恐らく、あの蛇の身体は堅いはず。
だが、こちらも出刃包丁だ。
魚の頭を骨ごと切り落とせるのだ。
何らかのダメージは与えれるはず。
「行くぞぉぉぉぉ! 」
俺が絶叫して突撃した。
出刃包丁を突き立てる。
ヤクザは相手にをちゃんと殺せるように、刃物は身体に腕で腰に押し付ける固定して身体ごと体当たりする。
俺もそれをするしかない。
非力な人形の身体でも出刃包丁をしっかりと身体に固定すれば大丈夫だ。
それを信じて突き進んだ。
「三鈴さんっ! 俺は戦うぞっ! 」
身体に固定した出刃包丁ごと<三本首>に俺は体当たりした。
俺も三鈴さんと一緒に戦うんだっ!
だが、俺の渾身の体当たりの出刃包丁攻撃は俺の市松人形の手が外れて終わった。
「この身体っ! ボロっ! 」
しかも、微妙に当たり方が悪かったのか手にヒビが入っていた。
「な、何をしとるんじゃ? 」
<三本首>が呆れた顔で俺を見ていた。
「出刃包丁が刺さらないなんてっ! 」
「いや、市松人形の手で出刃包丁を持ってたって、市松人形の身体が持たないに決まっているだろう? 」
「ええええええ? 悪の組織の幹部に冷静に解説されたぁぁぁぁ! 」
俺が衝撃のあまり叫んだ。
「いや、当り前じゃろ? 」
「なっ! そうかっ! 頭が三つあるんだ。さては貴様、悪の組織の参謀だったのかっ! 」
「いや、馬鹿でも分かるじゃろうが……」
「何てこった。道理で頭が三つあるはずだ」
俺がそう唸った。
<三本首>はため息をついていたが……。




