続き7
「それは包丁と言うにはあまりにも大きすぎた。大きくぶ厚く重くそして大雑把すぎた。それは正に鉄塊だった」
「まあ、出刃包丁ですからね」
俺が出刃包丁を市松人形の背中に背負いながら気分を出して呟いたら、冷静に<おやっさん>に突っ込まれた。
「いやいや、ここはやはり、こう言う雰囲気はいるだろうに」
「あの終わってしまった話が好きだったんですね。でも、刺身包丁の方が良かったのでは? 」
「まあ、どこぞの国では殺傷能力が高いんでやくざ者が使ってるらしいからな。でも、相手は人形師だ。人形を相手にするなら刺身包丁では難しかろう」
「それは言えてますからね」
俺達はトテトテと騒ぎになった家を出て、外を歩いていた。
大地震の後のせいか外は真っ暗だった。
「奴等の追手が来ると思っていたのだが。何故、人形師達は固まっていたのだろうか? 」
「恐らく、我々を改造したものの、まさか、敵に回ると思わなかったのでは? 」
「馬鹿な。日本のアニメや漫画の定番じゃないか」
「人形師って千年生きているって話もありますし」
「千年? なるほど御伽草子とかの時代か……」
「ええ」
「あの時代は人間でも普通だった略奪とかやってた異種族の鬼達を全然関係ないおじいさんとおばあさんに育てられた男が現れて、正義の名のもとに全部殺して略奪して去っていく話とかはすでにあるのにな」
「でも、あれは桃から生れてますから、考えようによったら食べられ続けた桃の種族を超えた報復と見えない事は無いですよね」
「鬼が桃を食べていたと言う事か? 人間も食べてるよな」
「そこはそれ、人間のお爺さんとおばあさんに拾われた事で洗脳された訳ですよ」
「洗脳と考えれば古くないなぁ。現代でも通じるじゃないか」
そうひそひそと話し合っていたら、懐中電灯で照らされた。
「むう、やはり追って来たな」
俺が背中の出刃包丁を取り出して前に構えた。
「いぃぃぃいいぃぃぃぃ市松人形がぁぁぁぁぁぁぁ! 」
懐中電灯を照らしたおっさんは悲鳴を上げて、その場に跪いた。
やはり、あの人形師が作ったと言う市松人形は魔物としての力が強いと言うから恐ろしいのだろうか?




