続き2
「まずいですね」
「まずいな」
野崎君の呟きに祖母が続いた。
どうも、俺達の気配を感じているらしくて三本頭の巨大な蛇神はこちらに山を降りてくる。
「お前の存在が奴等に知られるとまずい」
祖母が苦々しく呟いた。
「ふぅ。仕方ありませんね」
野崎君が悲しさと何かが入り混じったような顔で立ち上がった。
幽霊って足が無いとか言うけどあるのだ。
かすれて見えにくいだけで。
「私が囮になりますよ」
野崎君が笑った。
「お、お前……」
祖母が真剣な顔で野崎君を見た。
彼の決意を汲み取ったつもりなんだろうけど……。
「ばあちゃん。そいつ逃げるだけだよ」
俺が冷やかに指摘した。
「え? 」
祖母が凄い顔をした。
「ちょ! 何を言うんですかっ! 」
野崎君が図星をつかれた様にドギマギした顔をしている。
「いや、あれだけ付き合えば大体性格は分かるし」
俺が苦笑した。
「お前……」
祖母が野崎君に突っ込んだ。
「何てことを言うんですか! 私はそんなつもりは無いですよ! 」
必死になって野崎君が囁いて否定した。
「じゃあ、囮としてあそこをまっすぐ走れる? 」
三本頭の蛇が居る場所から見える場所を横切って行くルートを俺が提案した。
「そ、そんな事は出来ませんよっ! すぐ死んじゃうじゃないですかっ! 」
野崎君が必死に声を抑えて叫んだ。
「いや、すでに死んでるし」
俺が続けて突っ込んだ。
「俺の魂は生きてるんです! そんな風に疑われるなんてぇぇぇぇ! 心外だぁぁぁぁ! 」
野崎君が三本頭の蛇の視野に入らないコースで山を滑るように降りて行ってしまった。
「何と言う逃げのスキル」
「どうしょうも無いのぅ」
俺の呟きに祖母が頭を抱えた。




