2部 <市松人形覚醒編> 始まり
俺が気が付くと辺りは真っ暗だった。
川の音がするので、山崩れでそのまま谷の方に流されたようだ。
普通なら、その山崩れに飲まれて死んでいただろう。
だが、相変わらずの運の良さで俺は気絶しただけで助かったようだ。
辺りを見回すが誰もいない。
運転席の男も豆野さんも闇の修験者さんとかもいないようだ。
「だ、誰かいませんか? 」
俺がそう声を出して聞いた。
「はーい」
すぐ真後ろの木にちょうど首の縄がかかっているかのように野崎君が居た。
「ああ、良かった」
俺がほっと息をついた。
「何だか、悲鳴も上げないんですね」
「だって、野崎君は死んでるから、別にそれ以上死ぬ事も無いし」
「いや、ビビりませんか? 」
「ずっと話してたじゃない」
俺が笑って答えた。
「なんて言うか、本当に腹が座っているんですね」
「いや、別に俺はそんなつもりは無いんだけどな」
俺が野崎君の言葉に苦笑した。
「いやいや、三鈴様の旦那様としたら、私の主の大神さんには悪いけど、貴方くらい腹が座っている方がいいかもしれませんね」
野崎君も苦笑した。
「で、ここは? 」
「あの大地震のせいで巨大な山崩れが起きて、地崩れみたいな形でここまで落とされたんですよ。あまり動かない方が良いですよ」
「何で? 」
「山の太陽の当たるあたりに面であった大量の太陽光パネルのせいで山が崩れやすくなってたみたいで、あちこちにパネルのガラスの破片が飛び散ってます」
野崎君がそう教えてくれた。
「懐中電灯とか持ってないですよね」
「いや、実はある」
ポケットから鉛筆くらいのマグライトを出した。
「準備が良いですね」
「こないだみたいなビル崩壊とか巻き込まれたら困るから、用心に買っておいたんだ」
そう俺が笑ってマグライトをつけた。
なるほど、野崎君の言うとおりにあちこちにキラキラ光るガラスの破片が突き立ったりしてた。
何も怪我をしてないのは運がよかったと言う事か。




