続き57
「くきぃぃぃぃぃぃぃいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! 」
馬鹿にされたと取ったのか(まあ、そうなんだが……)闇の修験者さんが袖を噛んで興奮していなさる。
「ちょっと、あんまり刺激しないでほしいんだけど。この人は考え方が変なだけで、血筋としてそういう力をかなり持ってる上に、思い込みが強いせいか結構やばいんだけど」
豆野さんが運転手さん達に突っ込んできた。
「お前達は何で分からないんだ。皆、騙されているんだ! 」
闇の修験者さんが叫んだ。
「でも、騙されている方が良い時もありますよね」
「現実見てもどうにもならない時とかあるからな」
野崎君の呟きに思わず、俺が頷いてしまった。
「いやいや、どうして足掻かない! 君の存在価値はそこだろうに! 単に恋愛だけで皆がお前を追いかけていると思っているのか? 」
闇の修験者さんがそう叫んだ。
「そ、存在価値い? 」
いや、俺は三鈴さんと冥婚して、静かに暮らすだけが目的だ。
長い間モテキが来なかったが、やっと来た途端に、こんなとんでもない状況になるとは。
薄々、自分に何かあるのかは分かっていた。
それが三鈴さんも目的なのかと考えると、自分でも怖かった。
「いやいや、やっと恋愛の話が来たんだ! ずっと誰にも相手にされずに来た。そんな男の魂の喜びを君は否定する気か? 」
俺が初めて絶叫した。
「「おおお」」
運転席の男と助手席の男が感嘆の声をあげる。
「いや、わかりますけど」
「いや、野崎君は同棲してたんだろ? 自殺の真似事で相手の気持ちが戻るかもと言うくらいにはイチャイチャしていたわけだ。だが、俺はどうだ。男子校ばかり通って、大学に入ったけど浮いた話もなく学費の為にバイトだけ。そして、就職しても皆から空気みたいに見られてたのにやっと来た恋愛話を否定するような事は言うなっ! 」
野崎君の突っ込みに、俺は地響きが起きるかもしれないような強大な叫びで答えた。
つーか、本当に地響きが起こった。
地震が起こったのだ。
震度6強の。
「「「「「ええええええ? 」」」」」」
揺れる大地に皆がしがみついていた。
目の前の山は崩れ酷いものになった。
何が起こったんだか、訳がわからないけど。




