続き56
「いや、良くあるパターンなんで聞いてもしょうがないかなって」
「そうそう」
運転席の男と助手席の男が頷いた。
霊能力とかいろいろと怪しげな事をやってる割には至って普通の人らしい。
「まあ、藤原氏がどうのと言っても、京都に天皇がいらっしゃって貴族社会だった時ならともかく、今更言われてもですね。日本に一杯ある伊藤さんとか藤がついてる姓は大体藤原氏ですし、もう混ざっちゃってどうにもならんでしょうに」
野崎君が非常に正論を呟いた。
「いや、まあ、確かにそうなんだけどな」
「大体あれですよ。こんだけ混ぜ混ぜされてると何かしら誰もが藤原家の血は引いてるでしょうよ。だって、別に階層階級で貴族としか結婚できない時代じゃないですし」
「まあ、今更、藤原氏の陰謀とか言われても困っちゃうよな」
俺と野崎君の話に運転席の男が乗ってきて、皆で爆笑した。
「そもそも、昔は日本は母系社会だし、今は男系だけど、その辺も難しいよね」
日本は通い婚が貴族社会では主流だったせいで、子供は母方の方で育てられる影響のせいか母系社会だった。
だから、よく言われる百済系の血筋と言われる桓武天皇の母親の高野新笠さんも、当時は高野新笠さんの母方の土師氏になってしまうと言う。
「ふふふふふ、愚かな。そんな偽の神話を信じているとは。君達こそ間違っているのだ。私はこの国の真の神話に戻したいと思っているのだよ」
「でも、誰もそんなの望んでませんよね」
「確かに」
「それは言えてるわ」
「こういう独善的な人って映画とか漫画のキャラで良く出てくるけど、何がしたいんだろうね」
野崎君の言葉に運転席の男と助手席の男と俺が同意した。
「ふははははは、諸君らは騙されているのだ」
「でも、別に困ってませんよね」
「「「いや、本当に」」」
野崎君が次々と論破して行くので、闇の修験者さんがちょっと機嫌が悪くなってきた。




