続き54
「随分と下種な式神をお持ちだ」
そう声が上の方から掛けられた。
上を見たら巨大な巨大な真っ白な蛇の頭の上に真っ黒い装束の男の人がいる。
修験道系の服装だが、それは全て黒く染められていた
「修験道なら、柿渋色の鈴懸を着た白衣でしょうに」
豆野さんがバンから外に出た。
「ふふふふふ、私は異端の修験者であるゆえに。言わば闇の修験者と言ってほしい」
そう、その男は話した。
一斉に俺の身体にサブイボが拡がる。
それは俺だけで無く、運転席の男や豆野さんも同じらしい。
「そ、そう……」
豆野さんが決まりが悪そうに顔を伏せた。
「やはりか。こ、これは厨二の匂いがする。誰もが卒業するのにこじれちゃった人かな? 言ってる本人が酔ってるのも辛い」
「やめてやれ」
「たまにいるんだ。特に独学とかやるとどうしょうも無いのが」
俺の言葉に悲しい顔で運転席の男と助手席の男が話す。
「いや、でも、独学であそこまで行くとか凄くないですか」
「いや、なまじ力を持ってるとああいうのができるんじゃないか? 」
「最近は口伝が無いと無理なんだけど、ネットで口伝まで話す馬鹿がいるからなぁ。本来は師から神仏の系譜というか流れを授かるんだけど、血脈的にそういうのがある家に産まれるとああいうのが出来る。もうめったに無いんだけどな」
俺の言葉に悲しそうに運転席の男と助手席の男が呟いた。
「ちょっと、私は耳は良いんだから、やめてくれないかな! 」
闇の修験者さんがそう叫んだ。
「とりあえず、帰っていいかしら」
豆野さんがそれに容赦のない返事をした。
「いや、まだ登場シーンだろうが! 何でそう短気なんだ! 」
「いや、私もそんな時期あったから、見てて辛い。貴方も早く卒業しなさい」
「何なの? その決めつけ方! まだ破邪顕性暗黒光明真言も使ってないのに言われたのは始めてだ! 」
闇の修験者が叫ぶ。
「破邪顕性暗黒光明真言? 」
「ガンガン来てるな」
「凄いっすね」
俺の言葉に運転手席の男と助手席の男が悲しい言葉を続けた。
「ごめんなさい。見てて辛いんで」
豆野さんが両手で顔を覆った。




