続き53
「ちょっと待て! ちょっと待て! 」
運転席の男が山の方へ車を走らせている途中で叫び声をあげた。
高速を走ると警察に先回りされたら捕まるので、山へ山へとバンを走らせている時の出来事だ。
目の前に牛の顔をした巨大なクモが出てきた。
全長はニ十メートルくらいありそうだ。
「牛鬼? 」
豆野さんが驚く。
「そんな感じですね」
「誰か作ったのかしら。自然霊では無いわね」
運転席の男が豆野さんが冷静な声で返してきたので、それで落ち着いたのか落ち着いたようだ。
「作った? 」
俺が驚いて聞いた。
「念を強く固めれば、強い念を持つものは、ああいうのは作れるわ。少なくとも私も三鈴も。自然霊の妖魔ならまた別だけど、あれは作られた感じね」
豆野さんが冷静だ。
「じゃあ、こないだの邪魔した奴と一緒って事ですか? 」
助手席の男がそう聞いた。
「そうね。その様子ね。……しょうがないな。豆柴達行きなさい」
「え? あんな恐ろしい牛鬼に豆柴タン達を! 」
俺がその言葉を聞いて驚いた。
「大丈夫よ」
「大丈夫じゃない。この可愛い豆柴タン達はどうなるんですかっ! 」
俺がつぶらな瞳の豆柴タン達を抱きしめてふるふると震えた。
「大丈夫だから行きなさい」
そう豆野さんが言うと、何度も何度も俺を見てから豆柴タン達が向かった。
「ああああ! 豆柴タン! 」
出ようとしたが、ドアがロックされてて開かない。
「ああああああああああああ」
豆柴タン達はその可愛い顔で牛鬼に近づくとキャンキャンと可愛く吠えた。
「フオオオオ」
牛鬼はそれを蔑み見るように見下ろすと、こちらに向かってきた。
その時、見たくないものを見た。
突然、豆柴タン達の顔が鬼のような巨大なオオカミの頭になると、バツンって感じで相手をかみちぎりだした。
牛鬼が身体を貪り食われて絶叫を上げる。
「外面を可愛くしてるのは相手を油断させるためだから」
豆野さんがにっこり笑うが、俺はあまりの凄まじい光景に気絶した。
そこには地獄絵図が拡がっていたからだ。




