続き51
そして、俺は土御門家の母屋の離れで住むことになった。
冥婚も終われば、そこの屋敷で婿養子として暮らすことになる。
残念なことに三鈴さんは恥ずかしがって奥の間から出てこないそうな。
土御門家では奥の院と呼ばれて、いろいろあってお義父さんにも手が出せない場所だとか。
そこは残念だが、俺ははしゃいでいた。
理由は簡単で逃げ遅れた豆柴達がこの屋敷で一緒にいるからだ。
何というつぶらな瞳。
可愛さ爆発である。
「いや、これ豆野さんの眷属ですよ。危ないとは思いませんか? 」
「お義父さんは豆柴タンは悪いことはしないって断言してくださっただろ」
「いや、ほら、言葉がわかるせいか目を伏せてますよ」
野崎君がそう言うが、俺が見るとキラキラの黒い目を向けてくれる。
「ああ、豆柴万歳」
俺が豆柴達をなでながら呟く。
アパート暮らしで飼えなかったのだ。
「何で、そんな怪しい豆柴達は信じるのに私は信じてくれないのですか? 」
悔しそうに野崎君が俺に突っ込んできた。
「いやいや、目の輝きが違うだろ? 邪心に濁った眼をしていない」
「私の方が余程邪心とか無いでしょうよ」
「そうかぁ? あっさり逃げようとしたし、ホテルでも逃げたし。そもそも、ここに何でいるの? 」
「大神さんに守るように言われてますから」
「何も出来ないじゃん」
「何を言いますやら。刺客を準備したじゃないですか」
「君は何もしないじゃん」
「なんて酷いことを」
野崎君が悔しそうだ。
「この豆柴達は可愛いだけでなく、ウンコもしないしシッコもしないし餌代もかからない。本当に素晴らしい豆柴タン達だ。もっとも、食事をするのが可愛いので食べさせてあげたい気はあるんだがなぁ」
俺が少し悲しそうに呟いた。
「やばいと思うんですがね。ほら、私がこういうと目を反らす癖に、貴方が見るとつぶらな瞳で精いっぱい誤魔化しているし」
野崎君がどうも疑り深い。
豆柴タン達がそんな事するはずがないじゃないか。
困ったもんだ。




