続き44
「ふふふふふふふ、私の眷属の豆柴軍団の恐ろしさを知ったの? 」
豆野さんがドヤ顔だ。
「こ、こんな、こんな可愛い豆柴を戦いに巻き込むなんてっ! 」
三鈴さんが叫んだ。
「ねぇ知ってる? 柴犬ってもっとも狼に近い犬種なのよ? 」
豆野さんのドヤ顔が止まらない。
くくくっ、それで豆柴の軍団を作るとは。
「そ、そんなはずは……」
三鈴さんが呻く。
「確かにそうかもしれません。実験で北米の巨大な狼の中から人に懐きやすいものを選んで三代くらい飼って育てると、もうベロベロに人に懐く可愛い狼さんが出来るそうです」
俺がそう答えた。
なんと、顔つきまで人間にベロベロの狼さんになってしまうのだ。
恐ろしい。
「可愛すぎる」
俺が目の前の豆柴タンたちのフルフルの尻尾とキラキラの目を見て呟く。
「いや、あんた。そんなの今回の件に関係なく無いか? 」
祖母が俺に突っ込んできた。
「いや、柴犬は皆で愛でるべき犬です。これを叩くのは難しい」
お義父さんがそう俺に同意した。
「本当に我が土御門家にお似合いのお孫さんで」
水尾さんがほっこりしてた。
「いや、孫を連れ去られては困るんだけど」
祖母がそう水尾さんをたしなめた。
俺がハフハフ言ってる豆柴達に引き摺られているからだろう。
「でも、ここで俺が立ったら。立ってしまったら。この豆柴さん達は転がってしまう」
俺が悲痛な叫びをあげた。
「いや、それ豆柴の霊なんだけどね」
祖母が呆れて突っ込んできた。
「レイちゃん」
「名前と違うわぁぁぁ! 」
俺の言葉に祖母が叫んだ。
「ど、どうすれば一体……」
「除霊すれば良いでしょうが……」
三鈴さんの動揺に祖母が冷やかすぎる。
「汚いぞっ! 豆野っ! 豆柴タンを巻き込むなっ! 」
お義父さんが叫ぶが、豆柴タンなんて。
あああああああ、この家に婿に来て幸せだ。
「馬鹿ですか? 」
野崎君が横で突っ込んできた。
「蹴り飛ばされたのに、まだ成仏して無かったんだ」
俺が驚いて呟いた。
「蹴られて成仏って斬新ですね」
そう野崎君が笑った。




