続き43
そして、その一瞬の隙を突かれた。
「ワウッ! ワウッ! 」
俺の手を何か疾風のように十匹近いものが俺の袖とか食わえて連れ去った。
「くっ! 何だ? 」
しかも、凄い力だ。
引きずられながらそれを見た。
眷属の狼かなんかなのだろうか?
そこには目がキラキラの豆柴達がいた。
「くはっ! 」
俺が大きく息を吐いた。
ヤバイ。
何という可愛さなのだろう。
必死に俺の袖を引っ張ってる姿が愛らしすぎる。
「駄目だ! これは逆らえない! 可愛すぎるっ! 」
俺がぶるんぶるんと首を振った。
この愛らしい豆柴達を振り払うなんてできない。
「き、汚いっ! 」
三鈴さんが呻く。
流石にこの目がキラキラの可愛い豆柴達を三鈴さんを攻撃するのは難しいようだ。
それは仕方ない。
俺だって、目の前でハッハッと愛くるしい目でされたら、逆に抱きしめたくなってしまう。
「あーあーあー、馬鹿かね」
祖母がそれを見てため息をついた。
「待ってください。豆柴が可哀そうです」
お義父さんも身体を震わせながら、豆柴達を攻撃しようとした祖母を止めた。
「いやいや、逃げちゃいますよ」
「だって、可愛いんだもの! 」
お義父さんも苦しそうにそう呻いた。
なんてこった。
お義父さんと俺は似ている。
「ですよね! 」
俺が熱く語った。
「それだけじゃ無いのよっ! 」
豆野さんがそう叫ぶ。
豆野さんの作戦は二段重ねだったのだ。
別の豆柴達が三鈴さんの前に十頭くらい並んで通せんぼした。
黒い目がキラキラで、尾っぽを可愛く振り振りしていた。
「「「可愛いっ! 」」」
俺と三鈴さんとお義父さんが震えるように叫んだ。
「あーあーあーあーあー」
祖母が呆れ果てた顔をしていた。
「土御門家に似合いの婿ですね」
水尾さんがそう微笑んだ。