続き40
「まだ、入り口で待っていたのかな? 」
その激しい揺れが収まった後、主の土御門さんがわざわざ表に出て来た。
「いやいや、申し訳ありません。その会社の時間もあるので、軽く挨拶して仕事に行かせて貰おうと思ってました」
俺が恐縮して頭を下げた。
「いやいや、申し訳ないが、私の娘の三鈴も悪いのだが、街の破壊とか凄すぎて。もう、今夜一気に冥婚をしてしまおうかと思ってるんだ」
主の土御門さんがそう答えた。
やはり、お義父さんと言うべきなのかもしれない。
どうも、この屋敷と権力を思い出すと心が引いてしまう。
「いや、でも私も地に足がついた生活を三鈴さんとはおくっていきたい。そう考えておりまして……」
「いや、君の会社の社長さんからも三鈴さんを電話で早く落ち着かせて欲しいと貰ってね。君は今日から一週間ほど婚姻の為にお休みを貰う事になったんだ」
「えええええ? 」
俺が無茶苦茶驚いた。
心の準備が出来てないにもほどがある。
「その方が良かろうの」
祖母が横で苦笑した。
「おお、これはこれは加茂の先生では無いですか」
「生前は随分世話になった」
「神上がりされたと聞いてましたが……」
「ああ、じゃが、ご先祖様方に即されてな。孫の守りと指導をする事になった」
「えええええ? 」
俺がお義父さんと祖母の話に驚いた。
「お前にも、いろいろと大事なお役目があるからの」
「いや、俺は普通に生きるつもりですが……」
「普通の人はうちの三鈴様と冥婚とか受け入れられませんよ。しかも、あんなに嬉しそうにとか」
「いや、実際に、三鈴さんは美しいし、何と言うか料理も上手だし、俺には勿体ないようなお嫁さんですから……」
俺が照れてそう呟いた。
「「「あ……」」」
お義父さんと祖母と水尾さんが思わず声を漏らした。
その後に轟音がするほど土御門の屋敷が揺れた。
一部の瓦屋根が接着剤で止めてあったせいか塊で落ちて割れて、屋敷が微妙に歪んでしまった。