続き37
そういう訳で、今回も土御門家のお陰であっさりと警察の捜査は終わった。
どちらかと言うと上の階にいたはずの俺がホテルの倒壊で何故か生きてて瓦礫の一番上にいたのが奇跡と言われた。
普通は崩れたがれきの下になってしまうはずだし、まあ、誰がそうした警察も分かってるんだろうが言わなかった。
幸いに死者はいなかったようで、そういう意味では良かったのだろうが。
今回の件で警察も懲りたみたいで、土御門家の家の前で俺は降ろされた。
土御門家の前に会った着物の女中頭の水尾さんが迎えてくれた。
「お疲れ様です」
何が起こったのか知ってるらしくて、そう水尾さんに苦笑された。
すでに夜明けを迎えて外は明るかった。
「主がお待ちです」
そう水尾さんに言われた。
「いや、どうしましょうか。頭だけ下げて、そろそろ仕事に行かないとまずいんですが」
俺が腕時計を見て朝の六時なのを確認して聞いた。
ここは結構会社から距離があるので早めに出ないとまずい。
「本当に腹が座ってらっしゃるのですね。普通はあんなことが続けてあればげっそりしてそれどころで無いでしょうに」
水尾さんが苦笑した。
こないだは杓子定規な感じで難しい人かと思ったらそうでも無いようだ。
「いや、仕事は仕事ですから。それに、三鈴さんにやっと会えたんで嬉しくて元気いっぱいですよ。あんな綺麗な人と冥婚とは言え結婚できるとは本当に嬉しいです」
俺が嬉しそうにそう答えた。
そしたら、土御門家の屋敷が揺れた。
「あれ? 」
「三鈴様が聞き耳立ててたんでしょうね」
水尾さんがクスクス笑った。
なるほど、言われた通り、足音がバタバタとした。
「そんなに恥ずかしがらなくても良いのに」
俺がちょっと困ったように呟いた。
「まあまあ、それだけ愛してらっしゃるんですよ」
そう水尾さんが言うと一際土御門家の屋敷が揺れた。
「あの? 」
「大丈夫です。耐震に関しては最高の技術で出来てますから」
俺が少し心配になって聞いたら水尾さんが笑って、そう答えた。




