続き36
「おい」
豆野さんの背後から声がかかる。
「五月蠅いわね。今、大事なところなのよ! 」
豆野さんがそう反論した。
「何やってんの? 」
声が震えていなさる。
「いや、素敵な人と巡り会えたの。邪魔しないでくれる? 」
豆野さんが振り返らずにそう返した。
「誰が素敵な人なの? 」
「五月蠅いわね。やっと私にとって相応しい人が現れたのっ! 」
豆野さんがそうまた振り返らずに答えた。
俺の後ろにいる大御門大地さんだった黒い靄は震えあがっていた。
そして、流石の野崎君はすでに逃げていた。
そう、そして、俺はその背後の人に釘付けだった。
腰までくる、さらりとした流れる髪。
少し子供っぽいけど、絶世の美少女と言うのがわかる美しさ。
微妙に唇の赤さがコントラストを感じさせて、鮮烈な美しさを見せつけていた。
俺は今、初めて三鈴さんを見ていた。
何という事でしょう。
美しすぎるだけにキレてると怖い。
でも、怖いけど美しい。
そして、嬉しい。
「三鈴さん」
俺が思わず声を掛けた。
それと同時に豆野さんと三鈴さんの能力がぶつかり合った。
激しい、炸裂音とひん曲がる窓。
破壊されていくビル。
最初の数撃で巻き添えにされたのか大御門大地さんだった黒い靄は消え去っていた。
「これが東西最強の霊能者のぶつかり合いか」
「いや、あんた。相変わらず、本当に冷静だよね」
祖母の霊が動揺しながら俺に突っ込んできた。
「いや、だってやっと三鈴さんに会えたのに」
俺の言葉を始まりとして床が崩れ落ちていく。
「ちっ! ここは一旦勝負は預けたからぁぁ! 」
壁を破壊しながら、豆野さんが空にかき消すように消えた。
そして、ホテルは解体作業にあったように崩れ落ちて行った。
俺は祖母と祖先の霊に守られているせいか奇跡的に崩れ落ちたビルのがれきの一番高いとこで、三鈴さんを見ていた。
「やっと、会えたね、三鈴さん」
俺が三鈴さんに跪いて微笑んだ。
「きゃっ! 恥ずかしい! 」
三鈴さんは顔を真っ赤にして走り去った。
「可愛い」
俺がぽっとして頬を赤くした。
「おい、あの子孫は大丈夫なのか? 」
「おかしくない? 」
「いや、そう言われましても」
俺の背後では鎧武者の御先祖やら神主姿の御先祖やらが祖母に突っ込みまくっていたが、俺は三鈴さんとやっと会えた嬉しさで一杯だった。