続き35
「まあ、人の性格をどうだとか言うのは良くないよね」
俺がそう苦笑した。
「あら、随分とご立派な事を言うのね」
豆野さんがちらりとこちらを見た。
「いや、そうでも無いです。そう言う風にしたいと思ってるだけで」
「ふぅん。三鈴っちみたいな人と結婚したんだから打算的な人だと思った」
「いや、これも縁でしょう。どうせ、女性関係なんて微塵も無いような人生ですし」
「いや、それはあまり化粧とか服とか気にしてないみたいだからじゃないの? 結構、素地は良さそうだけど」
「いや、そんな事言われたのは初めてで、ありがとうございます」
俺が苦笑した。
「素朴な人なのね。普通は冥婚とか言われたら引くけど」
「いや、でも、生きてるのと変わらないですし、何より優しい人だと思いましたから。自分にとっては勿体ないくらいの人ですよ」
「ええ? 気持ち悪いとか思わないの? 」
「いや、全然」
「きゃい~ん」
いきなり豆野さんがぶりっこしたみたいに呟いた。
柴犬の甘える泣き声を真似たたみいだった。
「ああ、豆しばの鳴きがっ! 」
「ああああっ! うちは先祖代々一族郎党で三鈴さんで良いって夫婦に賛成してんだから、駄目だよっ! 」
野崎君と祖母が叫んだ。
「えええ? だって亡くなってるんだしぃぃぃ」
急に豆野さんがもじもじ始めた。
「何なのよ」
俺が野崎君たちに聞いた。
「つまり、ロックオンですよ」
野崎君が絞られながら答えた。
「ロックオンって……」
俺が豆野さんを見たら顔を真っ赤にして俺を見ている。
「いやいや、俺はすでに三鈴さんって冥婚の相手がいますけど」
「亡くなってる方だし、そもそも、まだ冥婚してませんよね」
「いやいや、もう冥婚予定で婚約してる訳なんですが」
「何て義理堅い」
豆野さんの目がウルウルしてる。
「いや、当たり前ですよ。冥婚とは言え婚約状態な訳ですから」
「相手が死んでいても気にしない。霊能者に対して偏見も持たない。ブチ切れとかメンヘラとか言われても引かないなんて」
豆野さんのもじもじが止まらない。
ど、どうしたら良いのだろうか。




