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続き31

「お前らもこの日本と言う国の国民の劣化具合をどう思っているんだ」


 何故か大御門大地(おおみかどだいち)さんだった黒い靄が叫ぶ。


「仕方ないよね。かっての家族や先祖とかそう言うものへの考えがアメリカに負けた所で変わってしまった。いや、そもそもが明治維新で天皇陛下がするはずの儀式がバッサリと途絶えてしまった。かっての諏訪大社の諏訪氏出身の大祝おおほうりが上社の神体ないし現人神として崇敬されていたが、信玄に滅ぼされた時に絶え、そして明治維新とともにさらに絶えてしまったのと同じようにね。天皇陛下こそ、この日本の呪詛の頂点にしてご神体としていたものが途絶えた」


 お祖母ちゃんがそう呟いた。


 無くなっていくものへの悲しみもこもっていたかもしれない。


「貴様らは祈りが無ければ消えていくものなのに維持できなくなっている。それを簡単に肯定するとはな」


 大御門大地(おおみかどだいち)さんだった黒い靄がそう決めつける様に話す。


「それは祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらは(わ)す。おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じでしょうよ」


「ふははははは、滅びるのを肯定するのか」


「それはまだ分からない。どちらが滅びるかは神仏の加護と世の衰退が決めるでしょう」


 お祖母ちゃんがそう呟いた。


「何か難しいですね」


 野崎君が困ったように俺に聞いてきた。


「良寛さんの神髄みたいな言葉の滅ぶべくして滅ぶべし、逆にそれこそが助かる秘訣であるって事でしょ」


「滅んだら、滅びますが……」


「だから、時流を考えずに下手にあがくよりも、静かに覚悟して受け入れて嵐が去るのを待つ方が生きる道が開くって事だよ」


「開きますかね? 」


 野崎君が懐疑的に聞いてきた。


「武士が死中に活を求めるのと一緒でしょ。死を覚悟することが、逆に生への道を見つける事が出来る。冷静になれるからね」


「貴方は武人だったのですか? 」


「おい……」


 俺が呆れて突っ込んだ。


「こんなのが今の日本人なのか? 」


 俺と野崎君を指さして大御門大地(おおみかどだいち)さんだった黒い靄が怒鳴った。


 困ったもんである。



 

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