続き28
「馬鹿な、あの振り塩が効かないなんて」
野崎君が衝撃を受けていた。
あのセクシーな塩振りで有名な塩振りおじさん……ヌスレット・ギョ◯チェ氏のコスプレの人も困惑しておしゃれに肩を竦めていた。
大御門大地さんだった黒い靄はどす黒く怒りを倍増しているようだ。
「いや、塩で何とかなるなら霊能者とかいらないんでは……」
俺が流石にそう答える。
「でも、塩って世界中で魔除けに使われているんですよ。しかも数千年前から。そんな塩があんなおしゃれに振りかけられているのに、それが効かないなんてあり得ないと思います」
野崎君がきっぱりと答えた。
「いや、単なるコスプレだよね」
「いやいや、中身は本物ですよ」
「何で、そんなコスプレしてんの? 普通に塩を撒けば良いじゃない」
「いや、そうやって差別化しないと生きれないんですよ。これは祝詞をあげた祈祷してある塩です。それも神社で作られた藻塩です。でも、それをコスプレしないで撒いても誰も凄いって思わないし、そんな奴に頼もうとしないんです」
有名な塩振りおじさん……ヌスレット・ギョ◯チェ氏のコスプレの人がそうきっぱりと答えた。
「素直に美少女の巫女さんを雇って塩を撒いてもらった方が人気が出ませんか? 」
俺がそう話すと、有名な塩振りおじさん……ヌスレット・ギョ◯チェ氏のコスプレの人はハッとした顔をしていた。
「く、腐り過ぎだ。我々を滅ぼし土地を奪い。殺しつくして封印までした連中がここまで腐っているとは……」
大御門大地さんだった黒い靄が身体を震わせた。
その瞬間、ホテルの机や備品が宙を舞って飛び交った。
「ポ、ポルターガイスト? 」
野崎君が驚くと同時に、有名な塩振りおじさん……ヌスレット・ギョ◯チェ氏のコスプレの人が物凄いスピードで揺れる部屋を飛び出て逃げてしまった。
「ちょ! 」
俺があまりの事に驚いた。
「駄目ですよ。ああいう大したことの無い人は嗅覚が優れています。元々、これは駄目だなって断られたのを無理に頼んだので、やばくなったらすぐに逃げるって約束だったんですよ。そう言う事が出来ないとこういう仕事は無理ですからね」
「いや、どう見てもやばい奴が待ってるのに、たいしたことが無いって分かっている奴をぶつける? 」
「男には駄目だと分かっていてもやらなきゃいけない時があるんです」
「それ、たいした事が無いって分かっててぶつけてる方が言うセリフじゃ無いよね」
俺が呆れ果ててため息をついた。
おかげで大御門大地さんだった黒い靄さんは暴走しだしてるし。




