続き10
「<おやっさん>、生きていたのか? 」
「いや、死んでますが」
「むう。間違いない。<おやっさん>だ」
俺がそう唸る。
だって、黒子の姿はすでに剥げ落ちて、ボロボロの木の人形の部分がむき出しになり、あちこちに歯形と爪痕がついてワカメを天女の衣のようにかぶっていた。
だが、このノリは間違いない。
「ふふふふふ、まさか。ドジョウ男に変わっているとは、流石は我がヒーローだ」
そう<おやっさん>の野崎君が笑った。
「あああ、やっぱりドジョウの姿に見えるのね」
俺が顔を覆って悲嘆にくれた。
やはりどじょうか?
ドジョウなのかと。
「ど、どうして、そんな姿に? 」
ヤタガラスさんがやっと言葉を絞り出した。
「いや、カリブュデスに食われて、ヒュドラの血と混ざったら、いつの間にかドジョウ男に」
そう俺が悲しい顔で呟いた。
「で、ウィンディーネに飛び掛かるとは……。なるほどここで一発ウィンディーネと合体して、起死回生の一発で美しいモンスターの姿に変わりたい。そういう事ですね」
「流石、<おやっさん>だ。俺の気持ちが分かるとはっ! 」
俺が<おやっさん>の分析に感動して答えた。
「ええ? 」
それを聞いたウィンディーネさんが見た事も無い汚物を見る様な表情で俺を見た。
「まさかのウィンディーネからの御褒美」
<おやっさん>の感心が止まらない。
「だが、捕まえられないんだ。混ざれないんだよ」
そうドジョウ男の俺が呟いた。
「ふふふふ、お任せください。私が黒子の前は何の人形だったか覚えてますか? 」
「はっ! ドジョウ掬いの人形だった! 」
俺が<おやっさん>の野崎君の一言で衝撃を受けた。
「ふふふふ、伏線回収と言う事です」
「「伏線だったのかっ! 」」
あまりの展開に俺とヤタガラスさんが同時に叫んだ。




