続き27
「あー、どんどんどす黒くなっているんだけど」
俺が大御門大地さんだった黒い靄を見て野崎君にそう告げた。
「ふふふふ、安心してください。私がここに来たのも大神さんからの指示なのですよ。大神さんも今回の件で迷惑をかけたと反省しておりますから……って何でそんな口を歪めた顔をしてんですか? 」
野崎君が余裕満々で答えてたが、俺を見て顔が歪む。
「いや、大神さんかぁ……」
「いやいや、あの人の凄さは見たじゃ無いですか。柳生十兵衛ですよ? 」
「物理的に斬ったら駄目だと思う」
「漫画じゃオッケーじゃ無いですか! 」
「現実は駄目でしょうよ」
「何て夢が無い人なんだ……」
野崎君が悲しい顔で首を左右に振った。
その時、部屋の入り口がコンコンとノックされた。
「ふふふふ、来ましたよ。大神さんが呼んだ第一の刺客です」
野崎君がにやりと笑った。
「え? 第一の刺客? 」
第二、第三の刺客もあるのだろうかと俺が考えたら頭が痛くなった。
「誰だ! 」
大御門大地さんだった黒い靄が叫んだ。
「Veda(失礼します)」
そう、外から声をかけられた。
「ト、トルコ語だと? 」
「ふふふ、驚きました。流石ですね。あの言葉が何なのか分かるとは……」
俺の驚きに野崎君が微笑んだ。
凄く嫌な予感がした。
筋肉質な身体に白いシャツを着た、丸眼鏡に近いお洒落なサングラスをかけたクルド系トルコ人のような男が現れた。
「ベタだな。本当にベタだな」
俺が呆れて呟いた。
大御門大地さんだった黒い靄は何なのか分からず、困惑していた。
「さあ、お願いしますよ」
野崎君の言葉でクルド系トルコ人みたいな人はあの必殺の格好をした。
そう、あのセクシーな塩振りで有名な塩振りおじさん……ヌスレット・ギョ◯チェ氏のコスプレのようだ。
あの肉に振る振り塩のようにセクシーに大御門大地さんだった黒い靄に塩を振りかけた。
勿論、何のダメージも与えれて無かった。
「肉のかたちと味は上から下まで、俺の一部なんだ・・・。肉の内側から俺の想いが溢れ出し、塩を振る時、肉の上に落ちていくのさ」
「言ったぁぁぁぁ! NBCニュースに取材された時の彼の名セリフですよ! 」
野崎君が興奮していた。
大御門大地さんだった黒い霞は何がなんだか分からずに呆然としていた。
「魔除けの塩をここまでセクシーに振る人なんていませんよ! 」
野崎君の目がキラキラしていた。
ああ、駄目だ。
俺は本当にそう思った。




