第16部 <記憶>
渦に飲まれた後にどれだけ意識を失っていたのか良く分からない。
目が覚めると洞窟の中に居た。
いつの間にか海からは上がっていたらしい。
木が海水を吸っているせいか微妙にべたべたして気持ちが悪い。
真っ暗な中でどうやら俺一人がこの洞窟にたどり着いたらしい。
すぐ目の前には海がある。
ここから這い出て来たにしては良く分からない。
よろよろと立ち上がって、まわりを見回した。
真っ暗だ。
その時にフラッシュバックみたいに何かが見える。
深い深い闇の中にいる俺。
その中で俺は足掻きづづけていた。
まるで、夢でも見ているようなフラッシュバックだ。
そして、閃光が走る。
何故か、それが戦いらしいと途中で気が付いた。
何故か、それが懐かしいと思った。
「どういう事なんだろう」
俺がふらふらしながら歩く。
随分と海水に浸っていたせいか、音がべちゃべちゃと微妙だ。
「闇が懐かしく感じる」
そう呟いた。
おかしいな。
同一人物とかいろいろ言われてるせいか、少し気にしすぎかもしれないけれど。
そうやって壁沿いに洞窟を触りながら闇の中を一人で歩いて行く。
元々恐怖は感じない方だったが、今度は違う。
恐怖より懐かしさを感じている。
「本当に、どういう事だ……」
そう、自分で呟いて身震いした。
またフラッシュバックが起こった。
俺が閃光の中で戦っている相手が見えた。
人間だ。
そして、それは知ってる人間だ。
一人の少女を庇って血みどろになっている人間だった。
「嘘だろ? 」
フラッシュバックの中で戦っている人間が見えて驚いた。
それは自分だった。




