続き4
と言う事で作業始まった。
爪を根元から切り始める。
華奢な市松人形と黒子では力が弱いせいか、時間がかかりそうだ。
根本の辺りをゴリゴリと切り始めた。
爪は爪でしか無いから、切っても痛みはないようで、グリフォンも気にしないで飛んでいた。
「何と言うか。考えていた戦いと違うな」
俺がぽそりと呟いた。
「まあ、全然格好良く無いのは認めますが、まずは脱出からですよ」
「というか、勢いで引っ張られて出て来たけど、俺、戦えるの? 」
「え? 」
「おれ、今のとこ電線とかそういう無機物しか引っ張れないよ? 」
「いや、そんな筈は無いんですけどね」
などと<おやっさん>の野崎君が呟いた。
「いやいや、何かおかしくない? 何だか異様に俺の事に詳しいみたいだけど」
「それは、あれですよ。土御門家の調査報告書も見てますから」
<おやっさん>の野崎君がそう話す。
「聞き耳で聞いていたって話はどこ行ったよ」
「だって、ああ言わないと、私が処分されちゃうじゃないですか」
そう<おやっさん>の野崎君が微笑んだ。
「正直、こんな状況で言うのもなんですけど。大神さんの眷属で自殺霊って聞いてますけど、微妙にいろいろと凄くないですか? 土御門家に忍び込んで報告書を見るとかCIAでも難しい話ですよ? 」
ヤタガラスさんが突っ込んだ。
「いやいや、能ある鷹は爪を隠すって奴ですよ」
「「いや、そんな人が彼女の気を引こうと自殺する真似とかしないと思う」」
俺とヤタガラスさんが同時に突っ込んだ。
おかしい。
そう言われてみれば、確かに腕が妙に立ちすぎる。
というか、まさか、こいつ敵なんじゃ無いだろうな。
そう初めて俺の心に疑念が起きた。




