第15部 <攫われる>
飛びながら、いらないと思われたのか別のグリフォンに何度か爪で捕まって千切られそうになるのを、俺が捕まっている爪を掴んで動きながら<おやっさん>の野崎君が逃げ続けていた。
急いで連れてくるように言われているのか、<おやっさん>の野崎君の排除だけに時間は取れないと見て、少しガツガツと<おやっさん>の野崎君を突くと諦めて仕方なしに飛ぶを繰り返していた。
「本気で私はいらないんですね」
<おやっさん>の野崎君がフーフー言いながら愚痴る。
「俺も連れてかれたら、どうなるんだろう? 」
「まさかと思うけど、吸収されたりすんですかね? <黄泉の王>とやらに」
俺の言葉にヤタガラスさんが嘴だけ影から出して器用に話す。
「それは困ったな」
「こっちも大困りですよ。貴方が本体なんですから。貴方が居なくなってしまう」
「いや、私は心配されてないんですね」
俺とヤタガラスさんの懸念に<おやっさん>の野崎君が悲しそうだ。
「悪いですけど、逃げなきゃ何とかなったし。そもそも何で連れ出したんですか? いろいろな意味で彼を連れ去られたら一番の大問題って分かってるじゃないですか」
「いや、囮として皆を助けれるかと……」
「重要度の順番を間違えてますよね。今はどう考えても加茂さんの安全が第一でしょうに。実際、戦力になるのは分かってたけど、わざわざ戦場に出さずに護衛をつけてあそこに置いて来たんですよ? 」
ヤタガラスさんの責め方がキツイ。
やはり、俺が向こうに行くのは良くないのか。
だが、自分としては、何故同一と呼ばれたか知りたい。
もう一人の小さい俺も気になる。
「結局、行かざるを得なかったのかもしれない」
そう俺が呟いたら、<おやっさん>の野崎君は喜んで、ヤタガラスさんはドン引きしていた。




