続き25
足が三本ある真っ黒な鳥のような宇宙人と祖父は言ってたのだが……。
「それは八咫烏だろうに! 」
大御門大地さんだった黒い靄がそう突っ込んできた。
「いや、何か雑誌でも読んだとも言ってたんだが」
「ムーじゃ無いのか? 」
大御門大地さんだった黒い靄が困惑気味でそう答える。
「ああ、そうだったかも」
そう言えば、ああいう雑誌を祖父は好きだったな。
「お前、自分の先祖とか自国の神話とかくらい把握しとけよ」
「いや、本当に門外漢だから、良く知んないんだが」
俺がそう這いつくばったまま答えた。
「それと、腕の骨が折れてる割には意外とパニックにならない男だな」
「いや、最近もそうだが、驚く事ばかり起こるんで、すっかりそう言うのに鈍感になっちゃったしな」
俺が動かすと痛いので、片手で下に落ちてた靴ベラを使ってタオルで固定した。
「冷静な奴だな」
大御門大地さんだった黒い靄が呆れた顔をした。
「まあ、昔からいろいろあるもんで」
俺がそう苦笑した。
その時だ。
ホテルのドアがバンと開いた。
しまった。
三鈴さんが来てしまったかと舌打ちを心の中でしたら、野崎君でした。
「大丈夫ですか? 加茂さんっ! 」
野崎君は本当に地縛霊で無くなったんだなと変な関心はしていたが。
「何だ、貴様はっ! 」
大御門大地さんだった黒い靄が虫けらでも見るような目で野崎君を見た。
「あんたが待ってる三鈴さんは罠だと分かった土御門家の宗主様と新しい妹の巫女さんが止めてて、多分来れないいんじゃ無いかな? 」
野崎君が微妙な答え方をした。
「かな? って……」
「行くな、行くで家族で大戦争になってますよ」
大御門大地さんだった黒い靄に野崎君が微笑んだ。
「ああ、そうなんだ……」
俺がそう呟いた。
そうなるよなぁと納得もした。
「そんな事よりもだ。あんた、恨みを抱いて相手に対していろいろするとか間違ってるよ」
びしって感じで野崎君が首の縄を揺らしながら、大御門大地さんだった黒い靄を指さした。
「え? 自殺したお前が言うの? 」
大御門大地さんだった黒い靄が凄く困惑していたけど、俺も同じ気持ちだった。




