第13部 <反撃編> 始まり
と言う事でその日は帰りたかったのに、帰れなかった。
それで仕方なしに会社の三鈴さんの事務所で寝ていた。
窓側が破壊されているが、それは追儺の実働部隊の人達が土御門に関係が深い業者を呼んだ事で突貫工事で簡単にブルーシートで覆われている。
常務とかはヘッドバンキングし続けてたせいで首と腰を痛めて、全員夜間病院に行っていた。
水島先輩はさらに蛇の部分が混じったらしくて、目が微妙に蛇のような目玉になるようになって帰って来ていた。
普通なら、水島先輩だけで大騒ぎなのに、相手の黒幕の居場所がGPSで分かったので、それの問題がでかすぎてスルーされていたが。
<角錐>さんもそれで一度、鬼族の本拠に戻った。
結果として、さっきまで業者の一時的な処置のブルーシートの作業が終わって、皆も帰ったので凄く静かだ。
俺は静かに三鈴さんのテーブルの上に転がっていた。
何しろ、この身体は眠いわけではないし。
もっとも、寝れたとしても寝れなかっただろう。
三鈴さんはそのまま土御門家の方に向かって行ったせいで、こちらには戻ってこなかった。
正直、自分とは違う自分こそが三鈴さんの惚れた自分だと分かったので、会いにくかったから有難かった。
何だろうな、欠けた自分の部分が自分に思えないので複雑な感じがする。
「やはり、自分と違う人格に惚れられていたと言うのは気になりますか? 」
転がってたら、ズバリと俺が言われたくない事を言われた。
そこを見たら薫子さんだった。
「帰られたんじゃなかったんですか? 」
「いえ、加茂さんが気になったもので……。私も父にこう言う風にされましたが、実は微妙に生前の人格と違っていた為に、実はお父様に偽物なのでは無いかと言われた事があるんです」
そう薫子さんが少し悲し気に笑っているように見えた。
 




