続き19
などとのんきな話をしていたら、真っ黒な闇の中から手が大量に出てこちらに向かって来る。
それが小さい俺を掴もうと襲って来た。
いや、それだけで無くて、俺にも薫子さんにも<おやっさん>の野崎君にも、あの目玉さんにも掴もうとしてくる。
「まずいな」
そう目玉さん達が言うと、小さい目玉さんが集まって薫子さんの西洋人形をえっさか全力で運んで逃げだした。
<おやっさん>の野崎君もいつものごとくヤバいと思ったのか、姿が消えた。
柚原さんもだ。
「ああっ! 」
小さい俺が抵抗したがすぐに捕まった。
その手を山本さんが呪符で破壊しようとするが出来ないようだ。
「何だ、これは? 」
山本さんがそう焦る。
「下がれっ! 」
祖母が印を結んで真言を唱えて、その手を焼き払おうとしていた。
皆が小さい俺を守ろろうとしていた。
なので、当たり前なのだが、大量の手は俺の方にも来た。
「あららら? 」
図体がでかいパワードスーツになっているせいか、逃げれない。
「ああああああっ! 俺の本体まで奪われるっ! 」
そう小さな俺が叫んだ。
「しまった! 」
山本さんが呻く。
いや、そりゃ、本体のがでかいんだから。
大量の手は俺を引きずるように破壊された窓際へと運んで行った。
「くっ! させんぞ! 」
祖母が小さい俺から俺の方に集まっている手に攻撃を移した。
その結果、小さい俺が留守になって身体も小さいので天空に運ばれて行く。
「あらら」
俺がそれを見て、ちょっと呆れた。
俺も奪われたら世界が終わるとか騒ぐから、それで俺に守る軸足を移したのだろうが、小さい俺は奪われてしまった。
そうして、結局、俺のパワードスーツも天空の真っ黒い空間の<黄泉の王>へ運ばれて行った。
「まずいっ! また、守れなかったのかっ! 」
山本さんが身を震わせて叫んだ。




