続き23
「と言う事で三鈴さんを呼んでください」
大御門大地さんがそう俺に頼み込んできた。
「いやいや、だから。無理だよ。家の格が違うんだし、今の段階で俺から頼めるもんでもないし。今回、あれほど警察とかに話が出来ると思わなかった」
「何を今更……。知ってる人は皆知ってますよ。昔は護国の為に寺社や神社が祈祷してたのは分かりますよね。寺が明治の廃仏毀釈で弱体化して、神社が国家神道に動いたせいで、陰陽道と修験道の流れを組む土御門家が唯一残ったわけですよ」
「へー、随分いろいろと知ってるんだ」
「そりゃあ、勿論。何故、三鈴があんたにこだわるかもね」
大御門大地さんの声が突然変わった。
「は? 」
俺が突然の話にびっくりした。
声色の変化もだが、何故、俺にこだわるかは俺も初耳だったからだ。
ただ、三鈴さんの事を突然に三鈴と呼び捨てにしたのも異様に感じたが。
「三鈴が命を懸けて御霊と戦っていて打ちのめされていた時に、お前が通りがかって助けたのさ」
「え? そんな事あったっけ? 」
突然の話で俺が驚いた。
ど、どう言う事だ?
いきなりの初めての話で動揺した。
あんな綺麗な子に会った事があったっけ?
「だから、お前が居れば必ず三鈴はここに来るはず」
大御門大地さんが異様な顔で笑った。
「ど、どういう事? 」
俺があまりの展開に動揺した。
「悲鳴を上げろ」
そう大御門大地さんが呟くと、俺の身体が弾かれたように近くのデスクに跳ね飛ばされた。
激しい音がして机は壊れた。
机の上に置いてあるモニターも砕けた。
「ちょっとっ! いきなり何を! 」
俺が叫んで大御門大地さんを見たら、そこにはどす黒い靄のようなものがあった。
黒い黒い憎悪のような靄が。
「お前はあの女を呼び出すための贄に過ぎん! 叫べっ! 」
その大御門大地さんだった靄が叫ぶと、俺の右手がおかしな方向に捻れて音を立てて折れた。
「ぐあっ! 」
俺が痛みで悲鳴を上げた。
「三鈴、お前の相手が死んで俺に同化されてしまうぞ……。早く来い……」
剝き出しの憎悪を隠さずに黒い靄は呟いた。