続き12
「まさに、ヒーローの言葉だ」
<おやっさん>の野崎君が拍手をした。
「いやいや、茶化す場所では無いぞっ! 」
山本さんが凄い顔で<おやっさん>の野崎君を怒鳴った。
小さい俺の顔からは悲壮な決意が見て取れた。
「もう一度、俺と混じり合うのはどうなんだろう? 」
「それは出来る。でも、それをすれば君も彼らのものになってしまう。そうなればこの国は終わりだ。いや、彼らは世界全体で新しい暗黒世界の構築に乗り出している。それをやらせるわけにはいかない」
そう小さな俺からは覚悟を決めた顔が見えた。
その顔は俺にも覚えがあった。
父母が事故で亡くなった時の顔だ。
誰も頼るものも無くなった。
だが、亡くなる前の母の言葉の「お前は生きて」と言う言葉で、ただその空しい約束を守る為に、その使命感だけで生きようと思った時の顔だ。
生きる事と死ぬ事と違うが、小さな俺は自分が死ぬ事でそれを止めようと言う使命感が感じられた。
まあ、元は同じ俺なのだけど。
「今、混じると駄目なんだな」
そう俺が念を押すように聞いた。
「ああ。だから死にに来たんだ」
「じゃあ、俺が何とか考える。だから、もう少し待ってくれ」
そう俺が話した。
「は? 」
小さい俺が唖然としたように呟いた。
「今はまだ駄目だけど、諦めるな。俺だろうっ? 」
俺がそうもう一度叫んだ。
「ははははははは、何だ。全く似てないと言われたのに……」
そう小さな俺が笑った。
「そ、そんな簡単に請け負って良いんですか? 」
そう<おやっさん>の野崎君が聞いて来た。
「大丈夫だ。昔から言うし。なるようになる! 」
バーンって感じで俺が断言した。
「ははははははははは」
そうしたら、山本さんが笑いだした。
ちょっと、驚いたように俺がそちらを見た。
「私が……私が、三鈴さんを守れなくて、どうしょうも無くて、貴方が代わりに戦うっておっしゃったときに言った言葉ですよ。それ。なるほど、全部性格も記憶も奪われたと思ったんですが、まだ根本で変わってない部分もあったんですね」
山本さんが少し涙をにじませながら笑った。




