続き10
「ち、ちょっと……噂は聞いていたけど……どうして? 」
小さな俺が動揺していた。
「嘘だろ? 彼がヒーローだとすると俺のポジションは偽ヒーローなのか? 」
俺がそう呻く。
信じられない話だ。
ぐらりと眩暈がした。
「加茂君。とりあえず、蛇のでかいのが向こうに見えた。雑食王としては、いつも食べてる蛇を食べて終わらせるのは凄く悲しい。だが、そこは雑食魂の根幹にかかわる事だ。引く訳にはいかないんだ」
そう水島先輩が俺達の動揺した様子を全く無視して、俺に話しかけると静かに諦めたように首を振った。
「え、えーと」
俺が混乱しまくってる時に余計な事を言われたのでさらに動揺していた。
だが、それは小さな俺も同じだし、山本さんも固まっていた。
「じゃあ、行って来る」
そう水島先輩がひらりと窓から飛び降りて行った。
俺達は唖然とそれを見送った。
「どなた? 」
小さな俺が困ったように聞いた。
「ああ、会社の先輩」
「妖魔を食べる変な人間がいるって聞いたけど、あれなのか? 」
「本人はジビエのつもりなんだけど」
「そうなんだ」
そう俺と小さな俺がやり取りをした。
そんなやり取りのせいか皆の緊張感が取れた感じになった。
「で、聞きたいのだけど、君は誰? 」
俺が単刀直入にそう聞いた。
「俺は君だよ。昔の君。性格と記憶ごと食われたらから、それが除かれた後の君は俺を覚えていないだろうけどね」
少し悲しそうに小さな俺が笑った。
少し辛そうだ。
なんてこった。
こういうのがヒーローの憂いなのだろう。
「ぐはっ! 」
俺がその場に跪いた。
「どうしたの? 」
小さな俺が心配そうに聞いた。
「くぅっ、自分の苦しみも辛さも乗り越えて他人を思いやるとはっ! 」
「まさに、ヒーローになるべき男ですね! 」
俺の言葉に<おやっさん>の野崎君が断言したので余計にショックを受けた。
 




